ソニー FE 24mm F2.8 G レビュー|山本まりこ
はじめに
5月。お庭の梅の実がぷくぷくと膨らんでいる。
今年は桜も藤も、例年より早く咲いた。梅の実の成長も早い。
そんな急ぎ行く感じの今年の春。
そんな春の先月、ソニーから3本のレンズが同時発売になった。
FE 24mm F2.8 G、FE 40mm F2.5 G、FE 50mm F2.5 Gの小型軽量レンズトリオ3本だ。
この3本は、外形寸法が統一されている。そのため、ジンバルに装着した状態でもレンズ交換が容易で動画撮影にととても便利。
さらに、フィルター径が49mmで統一されている。動画撮影で必須のNDフィルターや他フィルターも3本共用出来るのも嬉しい。
という内容は、先日、FE 40mm F2.5 Gについてレビューしたときに既述した。
今日は、その中の一番広角のレンズFE 24mm F2.8 Gについてご紹介したい。
外形寸法(最大径×長さ)は、68mm×45mm。
重さは、162g。とても小さく、とても軽い。
卵1個Mサイズが約50g、Lサイズが約60gなので、Mサイズの卵3個分よりちょっと重く、Lサイズの卵3個分よりもちょっと軽い。
3本とも見た目は一緒。フードを装着した時に変わるくらいだ。
今回ご紹介するのは、一番左のFE 24mm F2.8 G。
3本の中では、最も広角なレンズ。
森へ
この新しいレンズとどこに行こう。
今日は一日中小雨の予定。
雨で潤う新緑が撮りたい。
森に行こう。
24mmという広めの画角を生かした写真を撮りたい。広めと言っても、24mmは超広角ではない。一般的な標準ズームレンズの広角側28mmよりもやや広い、適度な広角。16mmなどの広角は極端に空間が広く撮れるけれど、24mmだとパースが強調されずに適度な広さの空間が撮れる。だから、私は24mmで自然を撮るのは好きだ。心にすうっと入り込んでくるような空間が撮れる。
車を走らせ、近くの森へ。
長い階段を下りて緑生い茂る森に入っていく。すると、湖がある。ここは、震生湖と言う関東大震災のときに出来た湖。平日でも釣りをする人でいっぱい。
シャッターを切る。
ファインダーを覗いている時から思う。24mm、やっぱり気持ちがいい。
筆者は、いつも「エアリー」と言う通り抜ける風を意識した写真を撮っている。パースが効きすぎた写真は強い印象の写真になるので、このくらいの優しい風景写真を撮るのが好きだ。再生ボタンを押して写真を確認する。やっぱり心地いい。
今回使用しているカメラはα7C。カメラもレンズも軽くて小さいので、森を歩くのも軽快。フットワーク軽く動ける。片手で持って撮影しても、手ブレなし。
釣りをしている人はたくさんいるけれど、ヘラブナに夢中なので森はとても静か。シーンとしている。
アスペクト比を16:9にして撮影してみる。たまに、風景写真を16:9で撮影するのが好きだ。縦構図なら掛軸画のように、横構図なら屏風絵のようになる。16mmあたりの広角レンズで撮ると面白いけれど、24mmの適度な広さの画角の16:9の構図も美しいなと思う。
こちらは縦構図で16:9のアスペクト比で撮影。
彩度やコントラストやシャープネスを強めに強調して撮影した一枚。
湖の周りをぐるりと一周してみる。
ああなんて新緑が美しいのだろう。
と、心弾ませて歩いているも、途中ぐうううとお腹の音が森に響く。もしかしたら釣り人に聞こえてしまうかも知れない大きな音だったので、撮影も早々に、リュックに忍ばせてきたキッシュを食べることに。家を出る時にもしかしたらお腹が空くかもしれないと急遽タッパーに入れて持ってきたのが大正解。前日の真夜中に焼いた新玉ねぎのキッシュを森の中で広げる。卵とバターの香ばしい香りがふわり。フルサイズからAPS-Cサイズにクロップして、手前の葉っぱを前ボケにしながら撮影。なかなか柔らかいボケが加わる。F2.8という控えめな開放値ではあるけれど、テクニックを使えばボケも美しく写る。
撮影を終えて、バクリ。新玉ねぎの甘さとお腹が満たされることに感動していると、ぼとりと何か上から落ちてくる。見ると、毛虫だった。黒に鮮やかな黄色の点々。ひえええと思いながらも、何の毛虫か気になってgoogleで画像検索してみる。すると、「毛虫」と出てきた。結局何の幼虫かは分からなかった。という小さなハプニングはあったが、森は気持ち良く、24mmで自然を撮るのは快適だった。このレンズの小ささ軽さは、フットワーク軽く撮りたい人にはたまらない長所と言えるだろう。この小ささ軽さに、肝心の写りはどうなのだろうと不安に思う人もいるかもしれない。でもさすがのGレンズ、この小ささ軽さにして写りはしっかりと美しい。
AFとMFの最短距離撮影の振り幅の差を楽しむ
ここで、このレンズ24mm F2.8 Gのボケ力を検証してみたい。
最短撮影距離で撮影して、背景がどのくらいボケるのかを試してみようと思う。
アトリエに飾ったドライフラワーを、まずはAF(オートフォーカス)で最短撮影距離にて撮影する。
24mm F2.8 Gの最短撮影距離は、AF(オートフォーカス)時で0.24m、MF(マニュアルフォーカス)時で0.18m。最大撮影倍率はそれぞれ、0.13倍(AF時)と0.19倍(MF時)。簡単に書くと、MF時の方がAF時よりも被写体に近くに寄れて大きく撮れるということ。
では、MFで最短撮影距離にて撮影。
被写体の大きさの写り方が全く違う。
AF時に比べてMF時は、かなり大きく写っている。これは大きな差がある。背景の写り方も変わる。MF時の方が背景の写り方が柔らかい。MF時に最短撮影距離にて撮影した方が近くに寄れている分、背景がやわらかくボケて写っている。
次は、カメラの中の機能を使い、フルサイズからAPS-Cサイズにクロップして撮影してみた。
まずは、AFで最短撮影距離で撮影。
次は、MFで最短撮影距離で撮影。
びっくりするくらい被写体を大きく撮ることが出来る。
AF時の最短撮影距離と、MF時にクロップして最短撮影距離で撮影した写真は、もう1本の単焦点レンズで撮っていると思えないくらいの振り幅がある。
ちなみに、前回レビューしたFE 40mm F2.5 Gについても、同じ被写体で撮影している。気になる方は、こちらの記事もチェックして欲しい。
お花畑へ
そろそろバラの季節だなあと調べると、近くで咲いていることが分かった。
今日は青空。車を走らせてお花畑へ。
赤、ピンク、オレンジ、黄色とカラフルなバラが満開。
24mmの広めの画角を生かしながら、青空の下のバラをたくさん撮影した。
F値は開放。遠い背景は適度に優しくボケる。
F値は開放。遠い被写体にピントを合わせると手前のバラが適度に優しい前ボケに。
APS-Cサイズにクロップして撮影。
青空を大きく入れながら。
青空に隆々しく立つ木。青空と新緑も滑らかに美しい描写。
背景も手前も適度に優しくボケる。
シャッタースピードを1/8にして葉の揺れを描くように撮影。
手持ち撮影でも、α7Cと24mm F2.8 Gの組み合わせはとても軽いので、奥の木は全くブレずに撮ることが出来る。手持ち撮影で、気軽にシャッタースピードを長めに撮影出来るのは嬉しい。夕景や夜景でもそれは活躍するだろう。
風にスカートがふわり。
24mmという少し広めの画角は、レンズを下に向けてもある程度被写体が映り込む。足元の景色を撮るのも楽しい。
F値を開放で撮影。
F11で撮影。
MFでAPS-Cサイズにクロップして撮影。
この撮影が一番ボケを軟らかく写すことが出来る。
バラが、空が、太陽が美しくて、風が気持ち良くて、撮るのが楽しくてたくさんシャッターを切った。たまにバラにぐぐっと寄ったり、空を見上げたり。トロトロするような背景ボケや前ボケが写るわけではないが、24mmの広さが生きた画角は、余白が生かせて気持ちのいい構図を作ることが出来る。α7Cの液晶パネルをタッチしながらピントを合わせていてAFの速さに惚れ惚れする。
50mmあたりの単焦点レンズと合わせて持っていると、より作品の幅を生かせるなあと思っていると、そうだ、このレンズは小型軽量レンズトリオ3本のうちの1本だったと思い出す。やっぱりそうだ、他の2本、FE 40mm F2.5 G、FE 50mm F2.5 Gと併せて使うと、より作品性が高まるのだろう。もしこのレンズの購入を検討する場合はやはり、FE 40mm F2.5 G、FE 50mm F2.5 Gと併せて考えるのがいい。
夜を撮る
ふと東京の夜を撮りたくなってカメラを構えた。
日曜日になりたての深夜12時半。オフィスの電気はほぼ消えていて視覚的にはもっとずっと真っ暗だったが、5秒という長めのシャッタースピードで全体の露出を上げて撮影。明るい夜が撮れた。
F値開放。MFでピントを合わせずにボカして撮影。
少し絞ってf5.6で、ボカして撮影。
玉ボケは、絞り羽根7枚の7角形。
次はISO感度を8000に上げて手持ちで撮影。手持ちでも撮影できるシャッタースピードにして撮影。レンズが軽いので、夜景の手持ちも手ブレせずに出来る。空が真っ暗になった真夜中、手持ちで夜を撮ることが出来るのは嬉しい。
ISO感度が高い分粒子が荒いので大きく引き伸ばしてプリントしたい時はやはり三脚などが必用で感度を下げた撮影が必須。だけれども、例えばInstagramなど小さい液晶画面への投稿を目的とした撮影と考えるのならば十分だろう。いろいろな目的に合わせて撮影スタイルを自分流に整えていくのも今の時代の考え方とも言えるだろう。
おわりに
今回は、小型軽量レンズトリオFE 24mm F2.8 G、FE 40mm F2.5 G、FE 50mm F2.5 Gのうちの一番広角レンズFE 24mm F2.8 Gについてご紹介した。24mmという適度な広さの画角のレンズ、1本持っているととても便利だなと言う印象を受けた。F2.8という控えめな開放値ではあるけれど、標準ズームよりも広めな景色が撮れ、被写体にもかなり寄って撮影することが出来る。APS-Cサイズにクロップして撮影すれば、柔らかいボケを写すことも出来る。そして何より、小さくて軽い。標準ズームレンズより少し広い画角の写真を撮りたいという人は、このレンズを1本持っていたら確実に作品の幅が増えるだろう。
SONYには、FE 24mm F1.4 GMという圧倒的な開放値を持ったレンズがあるが、そこまでを求めなくても少し広めのレンズを持っていたいという人にはおススメだ。特に、動画を撮りたいと思っている人におススメしたい。筆者は、広角レンズFE 16-35mm F2.8 GMを持っているので、今まではそのレンズで静止画と動画を撮影していた。このレンズを使ってみて、少し広めの画角で動画撮影したいときには圧倒的にこのレンズが便利だと思った。例えば、熊野古道の山の中に行ったときに、このレンズを持っていれば、フットワーク軽く歩きながら静止画も動画も撮れるだろうと想像してみる。石畳が続く山道を土すれすれに撮影しながら登ったり、熊野灘が広がる広い景色を撮影したり、時にはシダ植物などにググっと寄って撮影したり。さらに、小型軽量レンズトリオのFE 40mm F2.5 G、FE 50mm F2.5 Gを持っていれば、レンズ交換も楽々と撮影がテンポよく進むだろう。そんな映像が実際に思い浮かんでしまう。未来の映像が浮かぶ。それは、何かを買うときに、それは現実になる一番近い衝動だろうなと思う。ううう。筆者、これはもう既に欲しくなっていますね。
ちなみに、動画も撮影した。手持ち、しかも右手で片手持ちしながら動画撮影をすることが出来た。大きな三脚もジンバルも使わなくても、ある程度手ブレせずに広い画角の美しい動画を撮ることができた。これは嬉しい。嬉し過ぎる。このレンズを持っていたら、自分の作品の可能性が広がるなとも思った。
徹底的に動画撮影に特化して作られた小型軽量レンズトリオの一番広角なFE 24mm F2.8 G。
圧倒的に小さくて軽くて、だけれどもさすがGレンズとして描写も美しいというレンズ。
さあ。
小型軽量レンズトリオFE 24mm F2.8 G、FE 40mm F2.5 G、FE 50mm F2.5 Gのうちの、24mmと40mmについてレビューした。
残るは、FE 50mm F2.5 G。
次回も楽しみにしていていただけたら嬉しい。
■写真家:山本まりこ
写真家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つ「airy(エアリー)」をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。
小型軽量レンズトリオの40mm、50mmの記事も是非ご覧ください
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