ソニー FE 28-70mm F2 GMで撮る星景|北山輝泰

北山輝泰
ソニー FE 28-70mm F2 GMで撮る星景|北山輝泰

はじめに

星景写真家・写真講師の北山輝泰です。今回はソニーFEレンズのラインアップに新しく加わった「FE 28-70mm F2 GM」を使って星景写真や動画を撮影してまいりましたのでレポートしたいと思います。開放F値がF2.0と明るく一見星空撮影向きのレンズに見えますが、果たしてその実力はいかに。

FE 28-70mm F2 GMとは

FE 28-70mm F2 GMは2024年12月13日に発売されました。ソニーαレンズ史上初めての”F2.0通しズーム”ということもあり、私も非常に気になったレンズです。美しいぼけと高い解像性能が売りのレンズということで、被写体としてはポートレートやスポーツなど人物が中心になるかと思いますが、開放F値が明るいレンズが必要になるケースが多い星景では、F2.0通しは非常に魅力的です。

私が一番気になったのは、すでに所有している「FE 24-70mm F2.8 GM II」との差別化ができるかでした。F値では28-70mmの方が1段明るくなり、焦点距離はワイド端が4mm狭くなります。この差が実際の撮影現場においてどう影響してくるのかは気になる方も多いと思いますので、後ほどご紹介したいと思います。

まずサイズですが、最大径φ92.9mm、長さ139.8mm、質量約918gという具合で、手に持った第一印象は「でかくて重いな」でした。三脚にカメラを固定して撮影することが多い星景写真では、撮影中にレンズの重さなどを気にすることはないのですが、他の大口径レンズなどと一緒に長時間持ち歩く場合には少し重さが気になるかもしれません。フィルター径はφ86mmで、大口径レンズでよく採用されている82mm径よりもさらに一回り大きくなります。星景ではソフトフィルターを用いて撮影することが多いのですが、大きくても82mm径なので、ステップダウンリングが必要になります。実際にFE 24-70mm F2.8 GM IIと比較してみましたので参考にご覧ください。

左:FE 24-70mm F2.8 GM II 右:FE 28-70mm F2 GM

FE 28-70mm F2 GMの解像力

それでは撮影した写真をご覧いただきながら、このレンズの解像力をご紹介したいと思います。ちなみにこの記事内でご紹介する作例には、AIノイズリダクションなど画像のシャープネスに影響が出るような処理は行なっておりません(明るさやコントラストなどの最低限のRAWレタッチは行っております)。

星景写真で気になるのが星像の描写です。星景では星を綺麗な点像で撮影できることが理想なのですが、特に画像の四隅ではレンズの性能によってばらつきが出ます。FE 28-70mm F2 GMの周辺像を見てみると、目立ったコマ収差や周辺減光は見当たりませんが、わずかに像面湾曲の影響が見受けられます。ただ、拡大してよく見てみないと分からないというレベルなので気にするほどではないでしょう。他社製のF2.0レンズも使ったことがある感想としては、さすがGMレンズの描写力だなと思います。ワイド端(28mm)、テレ端(70mm)の両方の画像を用意しましたので、ご覧ください。

▼28mm

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 28-70mm F2 GM
■撮影環境:ISO6400 F2.0 4秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離28mm

▼70mm

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 28-70mm F2 GM
■撮影環境:ISO6400 F2.0 4秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離70mm

ちなみに、星景写真の撮り方で「手前の被写体にピントを合わせて背景の星をボカす」というテクニックがあります。主に、人物や花などと一緒に星を撮影する際に使う撮り方ですが、このような撮影では「背景の星が綺麗に丸ぼけしてくれること」というのが重要になります。綺麗にぼけるかはレンズの性能に依存しますが、FE 28-70mm F2 GMでは綺麗な丸ぼけの写真を撮ることができました。こういった作品も撮られる方はぜひ参考にしてください。

■撮影機材:ソニーα7 IV + FE 28-70mm F2 GM
■撮影環境:ISO6400 F2.8 4秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離70mm

FE 28-70mm F2 GMで撮る星景写真

このレンズの最たる特徴はF2.0という開放F値ですが、星景写真の撮影現場ではどのようなメリットがあるかを考えたいと思います。まず
F値が明るいと「シャッタースピードを速くできる」というメリットがあります。例えばISO6400 / F2.8 / 15秒という設定が適正露出となる撮影シーンがあった時に、F2.0のレンズであれば、シャッタースピードが8秒でも同じ明るさの写真を撮ることができます。シャッタースピードを速くできると「星の日周運動の影響をできるだけ受けずに点像で撮影できること」と「被写体の動きをできるだけ止めて撮影できること」といった2つのメリットがあります。前者は赤道儀を使えば解決できますが、後者はシャッタースピードを速くする以外は難しいでしょう。

一つの例として、回転する灯台の明かりと一緒に星を撮影するシーンをご紹介します。シャッタースピードを長くすると、灯台の明かりが一周ぐるっと回る過程がすべて記録されるため、1枚目の写真のように光が拡散しボワっとしたような写真になります。一方、シャッタースピードを短くすると、灯台の明かりが回る間の一部の過程だけを切り取ることができますので、2枚目の写真のように光の筋が伸びたような写真を撮影することができます。この時は金星が灯台のそばにあり、まるで金星を照らすサーチライトのような作品を撮ることができました。このようにシャッタースピードを速くしたい瞬間というのは星景写真の撮影シーンで多いため、F2.0という開放F値の恩恵は大いにあると言えるでしょう。

さらにF値が明るければ「感度をそこまで上げずに撮影できる」というメリットもあります。ISO感度を下げればそれだけ画質が向上しますので、高感度ノイズを少しでも減らしたいと思った場合にはF値が明るいレンズを使いましょう。

■撮影機材:ソニーα7 IV + FE 28-70mm F2 GM
■撮影環境:ISO1600 F2.0 8秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離50mm
■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 28-70mm F2 GM
■撮影環境:ISO6400 F2.0 2秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離50mm

28-70mmという焦点距離

次は28-70mmという焦点距離について考えたいと思います。一般的に星景写真では、空高くにある星と低い位置の風景を撮影するために24mm以下の広角レンズを使って撮影することが多く、それ以上の焦点距離は画角が狭く使いづらいという印象をお持ちの方も多いかと思います。実際に私も大半の撮影で24mm以下の広角レンズを使っていますが、それ以上の焦点距離を使わないというわけではありません。

例えば「ある特定の星座をテーマにした星景写真を撮影する」といった時には、情報が散漫にならないよう標準域のレンズを使って撮影しています。また、星よりも特徴的な被写体(自然物、人工物問わず)をメインに撮影する時で、かつ被写体に近寄れない時にも同様です。さらに「手前の被写体を前ボケさせて奥の星との立体感を強調する」といった撮影を行うときには、焦点距離を長くしてぼけ感を強調した撮影を行います。広角レンズばかりの撮影ではどれも似たり寄ったりの写真になってしまうことも多いため、焦点距離を変えて撮影することは作品のバリエーションを増やす上でとても重要な要素になります。それぞれのテーマごとに作例を掲載しましたのでご覧ください。

■撮影機材:ソニー α7S III + FE 28-70mm F2 GM
■撮影環境:ISO1250 F2.0 4秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離28mm
■撮影機材:ソニー VLOGCAM ZV-E1 + FE 28-70mm F2 GM
■撮影環境:ISO3200 F2.0 8秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離36mm
(国立天文台野辺山の特別な許可をいただき夜間撮影しています)
■撮影機材:ソニー α7S III + FE 28-70mm F2 GM
■撮影環境:ISO2500 F2.0 4秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離61mm

ソフトフィルターを使った撮影

冒頭でもご紹介しましたが、FE 28-70mm F2 GMは86mm径となるため、82mm径のソフトフィルターを使いたい場合は86→82mmのステップダウンリングが必要になります。ステップダウンリングを使う場合の注意点は画像四隅のケラれや収差ですが、実際にステップダウンリングをつけて82mm径のソフトフィルターで撮影を行いましたので、参考としてご覧ください。

▼28mm

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 28-70mm F2 GM
■撮影環境:ISO3200 F2.0 8秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離28mm

▼32mm

■撮影機材:ソニーα7 IV + FE 28-70mm F2 GM
■撮影環境:ISO3200 F2.0 8秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離32mm

▼50mm

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 28-70mm F2 GM
■撮影環境:ISO3200 F2.0 8秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離50mm

▼70mm

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 28-70mm F2 GM
■撮影環境:ISO3200 F2.0 8秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離70mm

FE 28-70mm F2 GMで撮る星景動画

最後にFE 28-70mm F2 GMを使って撮る星景動画についてご紹介したいと思います。星空の動画といえばタイムラプス動画が一般的ですが、超高感度でも高感度ノイズが出にくい機種があれば、星空をリアルタイム撮影することが可能です。その際、少しでも感度の上昇を抑えるためにF値が明るいレンズを使用するのですが、F2.0という明るさであれば十分実用的な感度で撮影を行うことができます。星空の動画撮影についてはまた改めて詳しくご紹介したいと思いますので、今回は撮影した素材のキャプチャとまとめたショートムービーのみご覧いただければと思います。

まとめ

今回はFE 28-70mm F2 GMを使って撮る星景についてご紹介いたしました。F値が明るいレンズの魅力。さらにはこの焦点距離が作品のバリエーションを増やす上でとても重要だということが皆様に伝われば本望です。最後までご覧いただきありがとうございました。星景写真家の北山輝泰でした。

 

■写真家:北山輝泰
東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。天文台インストラクター、天体望遠鏡メーカー勤務を経て、2017年に写真家として独立。世界各地で月食や日食、オーロラなど様々な天文現象を撮影しながら、天文雑誌「星ナビ」ライターとしても活動。また、タイムラプスを中心として動画製作にも力を入れており、観光プロモーションビデオなどの制作も行っている。星空の魅力を多くの人に伝えたいという思いから、全国各地で星空写真の撮り方セミナーを主催している。セミナーでは、ただ星空の撮り方を教えるのではなく、星空そのものの楽しさを知ってもらうために、星座やギリシャ神話についての解説も積極的に行なっている。

 

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