ソニー FE 300mm F2.8 GM OSS レビュー|高い解像度と圧倒的な軽さを誇るサンニッパ

坂井田富三
ソニー FE 300mm F2.8 GM OSS レビュー|高い解像度と圧倒的な軽さを誇るサンニッパ

はじめに

今回紹介するレンズは2024年2月に発売された、ソニーのサンニッパ「FE 300mm F2.8 GM OSS」です。αシリーズのEマウントレンズが発売されてから10年以上経過し、多くのαユーザーが待ち焦がれてようやく発売されたサンニッパになります。

ソニーEマウントの大口径超望遠レンズは、2018年に発売された「FE 400mm F2.8 GM OSS」、2019年発売の「FE 600mm F4 GM OSS」がありますが、その発売からもずいぶんと年数が経過していました。

筆者はスポーツ撮影などで「FE 400mm F2.8 GM OSS」を使用していますが、やはりそれなりに大きいレンズになるので普段使いには向かず使用頻度も少なくなり、今回思い切って小型・軽量の「FE 300mm F2.8 GM OSS」を購入しました。今回はこの魅力満載の「FE 300mm F2.8 GM OSS」レンズの、使い勝手とその写りをご紹介します。

「FE 300mm F2.8 GM OSS」の基本スペックと魅力

ソニー「FE 300mm F2.8 GM OSS」は、大口径単焦点望遠レンズならではの大きなボケと圧倒的な描写性能、高速・高精度AF性能など、どれをとっても最高性能を魅せてくれるレンズと言えます。もちろんその高性能に見合った高価格なレンズなので、購入するにはなかなかの勇気がいります。しかし、購入し使ってみるとその価格に見合う操作性や写りを体感する事ができ満足度は非常に高いレンズになります。

写りの部分はもちろんの事ですが、筆者がこのレンズを購入するにあたって決めてなったポイントはレンズの重量にあります。カタログ値重量で、1470g(三脚座・フード別)というこのタイプのレンズの中ではとても軽量なレンズという点です。

筆者の手持ちのレンズの中でも、同じ望遠レンズで人気の高いズームレンズ「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」が1395g (三脚座・フード別)ということで比較的近い重量でした。ですので「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」を所有しているユーザーであれば、その重さを想像しやすいと思います。2kgをきる重量なので手持ちでの撮影も十分にこなせるレンズになっています。

実際にレンズ本体にフードや三脚座を装着した際の重量を計測してみました。最大でフードや三脚座を装着した状態での実測値は1745gほどになりますが、それでも2kgを切るレンズ重量は撮影の際の負担が軽減されますし、機動力も向上します。計測してみると大きなレンズフードが意外にも重量(約200g)があるのを改めて実感しましたが、撮影の際にはレンズを保護する意味でもフードは必須なので外せません。手持ち撮影しかしない場合などは、三脚座を外しておけば少しでも軽量化を図ることができます。

三脚座・フード無しのレンズ本体重量
三脚座無しで、レンズ+フード装着の際の重量
レンズ+フード+三脚座装着の際の重量

FE 300mm F2.8 GM OSSの基本スペック

焦点距離 300mm
レンズ構成 17群21枚
開放絞り 2.8
最小絞り 22
フィルター径 40.5mm
最近接距離 2m
手ブレ補正 レンズ内手ブレ補正方式
全長×最大径 265×124mm
重量 1470g(三脚座・フード別)
発売 2024年2月

レンズ構成は17群21枚(内1枚はフィルター)からなっており、スーパーED(特殊低分散)ガラス3枚とED(特殊低分散)ガラスを含む構成で、大口径望遠レンズで発生しがちな軸上色収差や、画面周辺の解像低下につながる倍率色収差を抑制し画面すみずみまで圧倒的な解像性能とコントラストを確保しています。

撮影をサポートするスイッチ

レンズ左側には撮影をサポートするスイッチ類が集約されており、上から「フォーカスモードスイッチ」、「フルタイムDMFスイッチ」、「フォーカスレンジリミッター」、「手ブレ補正スイッチ」、「手ブレ補正モードスイッチ」が並んでいます。

光学式手ブレ補正に関しては、流し撮りに対応した「MODE2」に加え、動体撮影時のフレーミングの安定を重視し、手ブレ補正のアルゴリズムを最適化した「MODE3」も搭載しています。スポーツなどの動きが不規則で激しい被写体の撮影時も、より被写体を追いやすくなるモードです。

また5軸ボディ内手ブレ補正機構搭載のαボディに装着すれば、5軸方向のブレ補正で撮影を強力にサポートしてくれます。さらに、対応するカメラとの組み合わせでは手ブレ補正の協調制御が可能。望遠レンズで発生しがちな大きなブレを抑制し、安定したフレーミングができます。ボディとの協調は、動画撮影用のアクティブモード時にも対応しています。

※手ブレ補正のボディ・レンズ協調制御に対応しているカメラおよびレンズはこちらのページを参照

「FE 300mm F2.8 GM OSS」で動物撮影

■使用機材:SONY α7R V + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:シャッター速度1/500 絞りF2.8 ISO800

「FE 300mm F2.8 GM OSS」を持ち出し動物園で撮影してみました。動物園で「FE 300mm F2.8 GM OSS」を使用していると若干目立ちますが、それでもレンズが軽量なおかげで、広い動物園内を歩き回る際の負担が軽減され撮影を快適にこなすことができました。

被写体認識AFの「動物」と「鳥」をフル活用し絞り開放で撮影してみましたが、オートフォーカスのレスポンスおよび精度に関しては最高のレベルと言って問題ないと思います。

動物園での撮影では網目のフェンス越しやガラス越しでの撮影が多くなるので、被写体の間にある障害物の影響を少しでも減らすために、絞り開けて撮影したり撮影する角度を調整したりして影響を少なくするように撮影に心がけています。しかし、フェンスとの距離感の問題やガラスなどの汚れによる影響は完全に除去することはできません。それでも大口径単焦点レンズの恩恵はかなり大きく、フェンス越しでの網目などの影響をかなり軽減することができます。

■使用機材:SONY α7R V + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:シャッター速度1/2000 絞りF2.8 ISO1600
■使用機材:SONY α7R V + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:シャッター速度1/640 絞りF2.8 ISO800
■使用機材:SONY α7R V + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:シャッター速度1/3200 絞りF2.8 ISO1600
■使用機材:SONY α7R V + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:シャッター速度1/1600 絞りF2.8 ISO800
■使用機材:SONY α7R V + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:シャッター速度1/4000 絞りF2.8 ISO800
※APS-Cクロップ撮影

少し距離が足りないと感じる時にはAPS-Cクロップ撮影をすれば焦点距離450mm相当で撮影する事も可能で、より望遠が必要な撮影シーンにも幅広く対応が可能です。特に高画素機を使用すればクロップしても十分な画素数を残すことができます。

上の写真は網目のトンネル内を歩いているワオキツネザルをAPS-Cクロップ(焦点距離450mm相当)で撮影しました。絞り開放(F2.8)での効果も相まってワオキツネザルの手前にあるネットの影響をかなり除去することができており、ネットの外を歩いているかのようにも錯覚してしまうほどです。

「FE 300mm F2.8 GM OSS」でお祭撮影

■使用機材:SONY α7R V + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:シャッター速度1/1250 絞りF2.8 ISO800

次に「FE 300mm F2.8 GM OSS」でお祭りの風景を撮影してみました。お祭りの撮影では普段は自由度の高いズームレンズを使用することが多いのですが、今回は「FE 300mm F2.8 GM OSS」で圧縮効果と大きなボケを狙った撮影をしてみました。人が多い中で大きなレンズを使って撮影するにはかなり注意が必要です。周囲に十分に配慮しながら撮影を心がけます。

絞り開放で被写体の前後を大きくボカすことで、より被写体が印象的に浮かび上がってきます。また、ピントが合った部分は非常に解像度も高く、前後のボケの効果と相まって被写体に引き込まれるような錯覚さえ感じます。

人の多いお祭りでは撮影の際にどうしても背景がごちゃごちゃなりやすい傾向にありますが、「FE 300mm F2.8 GM OSS」を使って絞りを開けて撮影する事により、ごちゃごちゃ感をボケによって緩和させて、より被写体を引き立てる事が可能になります。

■使用機材:SONY α7R V + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:シャッター速度1/1600 絞りF2.8 ISO800
■使用機材:SONY α7R V + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:シャッター速度1/2500 絞りF2.8 ISO400
■使用機材:SONY α7R V + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:シャッター速度1/500 絞りF2.8 ISO800
■使用機材:SONY α7R V + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:シャッター速度1/5000 絞りF2.8 ISO800
■使用機材:SONY α7R V + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:シャッター速度1/2500 絞りF2.8 ISO800

上の写真のように奥にピントを合わせて手前を大きくボカし、そして望遠レンズの大きな圧縮効果の相乗効果によるお祭りの密度感を演出したりする撮影方法も、大口径単焦点望遠レンズならではの撮影方法になります。

「FE 300mm F2.8 GM OSS」で花撮影

■使用機材:SONY α7R V + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:シャッター速度1/8000 絞りF2.8 ISO400

普段はこの手のレンズで花の撮影をする事はほとんど無いのですが、ちょうど彼岸花が満開の時期だったので「FE 300mm F2.8 GM OSS」を持ち出して撮影をしてみました。

「FE 300mm F2.8 GM OSS」は最短撮影距離が2mで最大撮影倍率も0.16倍と低いので、花などをアップで撮影するにはあまり向かないレンズにはなりますが、彼岸花は比較的大きな花なので撮影はそれほど難しくはありませんでした。基本的には大きなボケを活用して、背景に玉ボケを配置するような構図がメインの撮り方になりますが、奥行きがある花なのでピントを合わせる位置には少し注意しながら撮影する必要があります。

■使用機材:SONY α7R V + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:シャッター速度1/1250 絞りF2.8 ISO200
■使用機材:SONY α7R V + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:シャッター速度1/125 絞りF2.8 ISO400
■使用機材:SONY α7R V + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:シャッター速度1/640 絞りF18 ISO400

上の写真は木漏れ日がちょうど彼岸花にあたっている状態で撮影したもの。木陰の中で日の光がスポット的に当たった部分に露出を合せ、背景をぐっと落としこむように撮影しています。絞りを思い切って絞り、彼岸花全体にピントが合うようにしています。

「FE 300mm F2.8 GM OSS」と2Xテレコン「SEL20TC」で鳥撮影

■使用機材:SONY α1 + FE 300mm F2.8 GM OSS + 2X テレコン「SEL20TC」
■撮影環境:シャッター速度1/2500 絞りF5.6 ISO800

最後に野鳥の撮影をしてみました。野鳥を撮影するには焦点距離300mmでは少し心もとないので、2Xテレコンバーター「SEL20TC」を装着して焦点距離600mmで撮影をしてみました。「FE 300mm F2.8 GM OSS」は開放F値が明るいレンズのため、2倍のテレコンを装着してもF値は開放でF5.6。600mmの焦点距離を考えれば十分に明るさを確保できるので、撮影する被写体・スタイルに合わせて、1.4倍のテレコンや2倍のテレコンを組み合わせることによって撮影できる範囲が大きく拡大します。

テレコンを使うとオートフォーカスの速度低下や解像度の低下などを不安に思う方もいらっしゃると思いますが、筆者が撮影して感じることで言えばその点については十分なクオリティを確保していると判断しています。もちろんテレコンを装着したサンニッパとロクヨンを比べてしまえばその点における差がでるのは当たり前です。しかしコスト面や機動力などを考えれば、サンニッパ+テレコンの活用は非常にパフォーマンスの高い組み合わせです。

■使用機材:SONY α1 + FE 300mm F2.8 GM OSS + 2X テレコン「SEL20TC」
■撮影環境:シャッター速度1/2500 絞りF5.6 ISO800
■使用機材:SONY α1 + FE 300mm F2.8 GM OSS + 2X テレコン「SEL20TC」
■撮影環境:シャッター速度1/1250 絞りF5.6 ISO800
■使用機材:SONY α1 + FE 300mm F2.8 GM OSS + 2X テレコン「SEL20TC」
■撮影環境:シャッター速度1/2500 絞りF5.6 ISO800
※APS-Cクロップ撮影
■使用機材:SONY α1 + FE 300mm F2.8 GM OSS + 2X テレコン「SEL20TC」
■撮影環境:シャッター速度1/16000 絞りF5.6 ISO800
※APS-Cクロップ撮影

上の2枚の写真は、テレコン装着した上で高画素機のクロップ撮影を組み合わせ、焦点距離900mm相当で撮影したものになります。飛んでいるカモメや激しい逆光の厳しい条件でもオートフォーカスの精度や描写力は十分に評価できるものと言えます。

まとめ

実際に「FE 300mm F2.8 GM OSS」を購入して感じたことは、小型軽量という点でのメリットをもっとも実感しました。正直「FE 400mm F2.8 GM OSS」の出番が無くなるくらいと感じています。高画素機とテレコンを上手く組み合わせていけば使い勝手も非常に良く、手持ちでの撮影も軽量なレンズのおかげで負担が少なくフレーミングもしやすく安定感は抜群です。

「FE 400mm F2.8 GM OSS」が発売された頃、ヨンニッパがこんなに軽く使いやすいとビックリしていましたが、それ以上に日常的に使いやすいサンニッパ「FE 300mm F2.8 GM OSS」はあの時以上の驚きを感じました。

昔のサンニッパに比べて価格もずいぶんと高くなりましたが、価格上昇に見合った使い勝手の向上、オートフォーカス性能の進化、描写力の向上と、どれをとっても満足度の高いレンズです。

 

 

■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師

 

 

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