ソニー FE 50mm F2.5 G レビュー|山本まりこ
はじめに
雨がしとしと降っている。
いつの間にかお庭のアジサイとドクダミのお花が咲き出した。
あっと言う間に春が終わり、梅雨が始まる。
今回は、2021年4月に発売になったソニー FE 50mm F2.5 Gについて紹介したい。
外形寸法(最大径×長さ)は、68mm×45mm。
重さは、174g。とても小さく、とても軽い。
卵1個Lサイズが約60gなので、Lサイズの卵3個分よりちょっと軽い。
FE 50mm F2.5 Gは、4月、ソニーから小型軽量のレンズトリオが発売されたうちの一本。FE 24mm F2.8 G、FE 40mm F2.5 G、そして、FE 50mm F2.5 G。この3本は、外形寸法が統一されている。そのため、ジンバルに装着した状態でもレンズ交換が容易で動画撮影にととても便利。さらに、フィルター径が49mmで統一されている。動画撮影で必須のNDフィルターや他フィルターも3本共用出来るのも嬉しい。
という内容は、先日、FE 24mm F2.8 G、FE 40mm F2.5 Gについてレビューしたときに既述した。
今回は、その中の一番望遠になるレンズFE 50mm F2.5 Gについて紹介したい。
FE 24mm F2.8 G、FE 40mm F2.5 Gについて気になる方は、記事を見て欲しい。
海へ
朝起きたら、空が青い。
こんな日は海が見たい。
急いで支度をして電車に飛び乗る。真鶴へ。
少し霞がかった春の空の下に海が広がっている。
人間の視野角と近いと言われる焦点距離50mm。広い海は広く撮れる。
もちろん広角レンズで撮ればもっと広大に見えるだろう。でも、人間の視野角と似ている分、写る写真も心地いい。広過ぎず、狭過ぎず。
海辺を少し歩いてみる。
ごつごつと岩場が広がっていて、歩みを進める度に虫たちが大移動していくのが見える。
人間の視野角と近いと言われているので、焦点距離50mmが好きだと言う人が多い。筆者もその一人だ。いつも使うレンズとして持ち歩いているものは、50mmレンズの頻度が多い。一般的に、年齢と同じくらいの焦点距離のレンズが好きになるとも言われている。筆者はまだ少しその年齢よりも若いけれど、50mmの画角は一番心地いいと思う。被写体を誇張せず、飾らず、ある意味シンプルに写せる画角のレンズだと思っている。
それにしてもやはり軽い。小さい。
ごつごつした海辺を動くのも容易だ。
実は、筆者が普段愛用している50mmレンズは、Planar T* FE 50mm F1.4 ZAだ。とろけるボケと美しい描写が好きで使用頻度がものすごく高い。FE 50mm F2.5 Gと比べると、長さは倍以上、そして、重さは4倍以上だ。だから、このレンズの小ささ軽さをしみじみと実感する。
ちなみに今回撮影しているカメラはα7C。ボディの重さは594g、FE 50mm F2.5 Gは174gだから、合計768g。レンズフードなどを含めても、缶ビール2本より少し重いくらいの重量。
小さな花が咲いている。
ふと立ち止まってシャッターを切る。
お花の花びらにピントを合わせると、根元の部分はトロッとボケて写っている。
小さくて軽くてもGレンズ。さすがに美しい描写だ。
海水は透明。中を覗くと、いろいろな貝や虫がコソコソっと移動していった。
F値開放2.5で枯れた草木を撮影。
少し絞ってF7.1で撮影。海沿いの森を歩く。
片手で持ち上げてそのまま撮影できる。
スナップ撮影には本当に便利なレンズだ。
海辺には、よく見るといろいろな植物が花や実をつけている。
紫色のお花が見えたので近寄ってみると、ぷくぷくと実をつけたハマエンドウが風に揺れている。
α7Cの液晶に写るハマエンドウの豆の部分をタッチしながら撮影。風で揺れて被写体が動いてピントがずれても、タッチし直すとシュッとピントが合う。AFは小型軽量レンズトリオの他のレンズと同様とても快適。
白くてかわいらしいお花がひっそりと咲いていた。
Googleで画像検索してみると、オーニソガラムという植物だそう。和名は、オオアマナ。調べてみると、キリスト誕生の夜に光り輝いたといわれているベツレヘムの星に例えられているお花だそう。
オーニソガラムを、APS-Cサイズにクロップして撮影。クロップ機能はカメラボディ内の機能だけれども、カメラボディの機能を利用すれば、単焦点レンズだけれども幅広い撮影ができる。
可愛らしい小さなお花がたくさん咲いている植物。
背景がこれだけトロリとボケてくれたら、気持ちいい。
さらに海辺を歩く。
森を歩く
海も歩いたし、のんびりもした。写真もたくさん撮れた。
そろそろ真鶴駅に戻って美味しいものでも食べようかなと地図を眺めていると、真鶴の森の中を歩く遊歩道があると描いてある。でも、今日はワンピースで海を歩きたかったからワンピースと革靴というスタイルで来た。遊歩道を歩くのはまた今度にしてバスに乗って駅に行こうと時刻表を見ると、バスが到着するまでにあと30分以上ある。どうしようかなと地図を見ていると、遊歩道を少し歩いた先にもバスは停まるらしい。
うん、やっぱり歩きたい。森の中を歩きたい。
そこまで森を歩いて、バスに乗ろう。
と、ワンピースと革靴で森の中へ。
駐車場から少し入っただけで、人気がすっと消えて急に動物の気配がする。鳥の声がどんどん大きくなってくる。両サイドから茂るシダ植物がだんだんと体に迫ってくる。少し歩いてワンピースと革靴で歩くことを後悔しながらも、でも歩きたいという気持ちが大きくてぐんぐんと歩く。
リュックの中にはFE 24mm F2.8 Gも入れていたので、途中、広角に切り替えようかと思ったけれど、でもFE 50mm F2.5 Gを楽しもうとそのままで歩く。焦点距離50mmの画角で森を撮り続けた。
思った以上に深い森。
一人で歩いているのが楽しくて、すごく興奮した。
でも少し怖かった。
そして、50mmの画角は、やっぱり心地良かった。
真鶴の森。今度、動きやすい服装でしっかり歩いてみたいと思う。
最短距離撮影でボケ力を確かめる
さてここで、しっかりと、このレンズのボケ力を見てみたいと思う。
AF(オートフォーカス)で最短距離で撮影。
ちなみに、入っているのはお酒ではなく、お水。
AFでAPS-Cサイズにクロップして撮影。
東京のアトリエに戻り、花瓶に活けたドライフラワーを撮影。
まずは、AF(オートフォーカス)で最短撮影距離で撮影。
最短撮影距離は、AF時は0.35m、MF時は0.31m。
最大撮影倍率は、AF時は0.18倍、MF時は0.21倍。
簡単に書くと、MF時の方がAF時に比べて近くに寄れて大きく撮れるということ。
MFで撮影。AF時より、少しだけ近くに寄れて撮影出来るので、被写体が少しだけ大きく写っている。
AFでAPS-Cサイズにクロップして撮影。
MFでAPS-Cサイズにクロップして撮影。
ピントを合わせた被写体はすっきりとシャープに、背景ボケは滑らか。
さすがのGレンズの描写。
小型軽量レンズトリオFE 24mm F2.8 G、FE 40mm F2.5 Gについても同じドライフラワーで撮影している。
気になる方は、記事を見て欲しい。
FE 24mm F2.8 Gでのドライフラワーの撮影はコチラからご覧ください
FE 40mm F2.5 Gでのドライフラワーの撮影はコチラからご覧ください
お花畑へ
ある晴れた日、お花畑に向かった。
バラが満開。
小型軽量ながらのとろけるようなボケと描写力を見て欲しい。
カメラを始めたばかりの人が標準ズームレンズを購入し、その後に50mmの単焦点レンズを買うことが多い。出来るだけ明るくてボケるレンズが欲しくなるのでf値がf1.4やf1.8など選ぶことが多いと思う。その時に、50mmあたりの焦点距離の単焦点レンズはたくさんあるから何を買ったらいいのか迷うと思う。このレンズFE 50mm F2.5 Gは、徹底的に小型軽量化されたレンズだ。今の時代、とにかくフットワーク軽く、気軽に写真を撮りたい人も多いと思う。この小型軽量なレンズを、作品を撮るという購入の選択肢に入れるのも時代に合っているなと思う。
おわりに
今回、小型軽量のレンズトリオFE 24mm F2.8 G、FE 40mm F2.5 G、の中の一番望遠レンズFE 50mm F2.5 Gについて紹介した。小型で軽量、Gレンズの美しい描写のレンズだ。
先述したが、標準ズームレンズの次のレンズとして単焦点レンズを考えている場合にこのレンズを選ぶのもいいだろう。
FE 50mm F2.5 G は、一緒に発売された小型軽量レンズトリオのFE 40mm F2.5 Gと焦点距離が近い分、描写もとても似ている。
いろいろ撮る中で、どうしてこんなに近い焦点距離で描写も似ているレンズをトリオのうちの2本として発売するのだろうという疑問を持った。そこで、ソニーの開発の方に質問してみると、40mmはスナップ撮影、50mmはポートレート撮影を中心に活用することを想定しているとの回答をいただいた。焦点距離50mmのポートレート撮影は楽しい。もっと望遠のレンズで撮影する人も多いけれど、筆者は50mmのポートレート撮影が好きだ。50mmで撮る被写体との間合いがちょうどいいのだ。遠すぎず、近すぎず。会話のコンタクトと心のコンタクトをとるのに筆者には丁度良い距離なのだ。動画撮影も視野に考えた場合、ポートレートの動画撮影もこの小型軽量レンズで撮ることが出来たら、それは便利だろう。そう考えると、この3本で小型軽量レンズトリオと言う意味合いが強く感じられる。
小型軽量レンズトリオの3本についてレビューを書いているので、質問を多く受ける。
一番多い質問が「トリオの中で1本買うならばどのレンズがおススメですか」というもの。
いろいろな考えがあると思うけれど、素直な気持ちで書くならば、筆者が1本選ぶとするとFE 40mm F2.5 Gだろう。
何故かと言えば、筆者は焦点距離50mmレンズはお気に入りのプラナーのレンズを持っているし、広角もGMレンズを持っているという理由がある。
だから、自分の守備範囲にないFE 40mm F2.5 Gを選び、引きも寄りも撮って楽しみたい。3本の中で一番寄って撮影できることもあり、動画も静止画も、FE 40mm F2.5の1本でいろいろなシチュエーションを撮影できるだろうと想像できる。
二番目に多い質問が「トリオの中で2本選ぶならどのレンズですか」というもの。
非常に迷うけれど、筆者だったらFE 24mm F2.8 G、FE 40mm F2.5 Gの2本を選ぶ。
広めと寄りを撮影してバリエーションを増やした展開を作りたい。もし動画撮影を視野にいれているとしたらなおさら。
今回紹介したFE 50mm F2.5 Gは最後に選ぶ1本となってしまったが、でもそれは人それぞれ。
例えば、50mmの単焦点レンズを持っていなければ、真っ先に選ぶレンズになるだろう。
動画も静止画もフットワーク軽く撮りたいのであれば、小型軽量レンズトリオを3本揃えるのがベストだろう。
といろいろな想像が膨らむが、兎にも角にも、小型軽量レンズトリオの発売により、動画を含めた撮影が以前に比べてより気軽にできることになったのは確かだろう。
時代が進めば持つ機材も変わる、と筆者は思う。
もちろん変わらないことを楽しむのもいいだろう。
でも、時代が生んでくれた最新の機材を楽しみながら、今の時代を楽しみながら撮影をしていくのは進む未来の中にいるようで楽しい。
変わる時代を否定するのではなく、変化を楽しみ、時には一緒に進み、自分も進化していけたら尚更楽しいだろうと思う。
小型軽量レンズトリオ、気になる方はぜひ試してほしい。
もうすぐ梅雨。
梅雨が明けたら夏が来る。
■写真家:山本まりこ
写真家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つ「airy(エアリー)」をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。
小型軽量レンズトリオの24mm、40mmの記事も是非ご覧ください
■「ソニー FE 24mm F2.8 Gレビュー|山本まりこ」の記事はコチラから
■「ソニー FE 40mm F2.5 Gレビュー|山本まりこ」の記事はコチラから