ソニー FE 600mm F4 GM OSSレビュー|色あせることのない究極の単焦点超望遠レンズ

山田芳文
ソニー FE 600mm F4 GM OSSレビュー|色あせることのない究極の単焦点超望遠レンズ

はじめに

2019年7月、ソニー FE 600mm F4 GM OSSはミラーレス用の600mmの超望遠単焦点レンズとしては、世界ではじめて発売されました。

重さは約3,040gと、600mmで開放がF4の単焦点レンズとしては世界最軽量のレンズです。しかし、重量バランスをボディ側に寄せているため、体感としてはもっと軽く感じます。僕がはじめて600mmを使った時代は6キロの重さがあったことを思うと、隔世の感があります。

発売からすでに4年以上経ちますが、全く色あせることのない最先端のレンズという印象です。

超望遠ならではの圧縮効果を活かして撮る

僕は「野鳥撮影は観察の仕上げ」と思っていますので、野鳥の行動が読めるようになるまで十分に時間をかけて観察し、その後撮影にかかります。そして撮影は、鳥の出現場所の近くに短めのレンズを装着したカメラを隠して、遠隔操作で行うことが多く、超望遠レンズの使用頻度は、実はそれほど多くありません。

では、どのような時に超望遠レンズを使うかと言うと、ズバリ距離感を強力に圧縮したい時です。200mm~300mmクラスの望遠レンズでもできないほどの強力な圧縮効果、これが600mmの超望遠レンズのいちばんの特徴といえるのではないでしょうか。

以下2点、圧縮効果を活かして撮影した写真をご覧ください。

10月。渡り鳥の中継地にいた、たくさんのヒシクイ。
「たくさんいてますよ感」を伝えたかったので、あえて遠くから600mmで撮り、群れを圧縮した。
■撮影機材:ソニー α7R V + FE 600mm F4 GM OSS
■撮影環境:F8/1/500秒/ISO200
高いところから見下ろしてマナヅルの飛翔を撮影。
超望遠600mmを使うことで、距離感をうんと圧縮することができ、背景のマナヅルやナベヅルの群れを引き寄せることができた。
■撮影機材:ソニー α1 + FE 600mm F4 GM OSS
■撮影環境:F4/1/1600秒/ISO400

確かな解像力

蛍石レンズを贅沢に3枚使った光学系によって、解像力は凄まじく、ボディのポテンシャルを最大限に引き出してくれます。絞り開放から克明に描写されるので、開放から躊躇なく使うことができ、その結果、ISO感度をあまり上げずに撮影することができます。

オシドリのペアの後ろ姿を観察していると、雌が横を向いたので、その目にフォーカスを合わせて撮影。明るくないところだったが、FE 600mm F4 GM OSSは開放から使える描写力があるので、絞りを開放にして撮影。ISO感度を1250に抑えることができた。
■撮影機材:ソニー α7R IV + FE 600mm F4 GM OSS
■撮影環境:F4/1/200秒/ISO1250
シロカモメ。これぐらいの距離があると、空気の層の影響でシャープな像を結びにくくなるので昔だと撮影を躊躇していたが、FE 600mm F4 GM OSSであれば問題のない撮影距離で、結果はご覧の通り。
■撮影機材:ソニー α1 + FE 600mm F4 GM OSS
■撮影環境:F4/1/1250秒/ISO250
車をブラインド代わりにして、車中からヘラサギを撮影。
オーバー5,000万画素のボディと組み合わせることで相乗効果となり、これ以上ないと思われるような鮮明な写真を撮ることができた。
■撮影機材:ソニー α1 + FE 600mm F4 GM OSS
■撮影環境:F5.6/1/1000秒/ISO125

柔らかでなめらかなボケ

近年のレンズは、どのようなレンズでも解像力という点で極めて優秀で、解像力に問題を抱えるレンズはないように感じています。

しかしながら、ボケという点ではレンズによって大きく異なります。ボケが硬いと感じるレンズも中にはありますが、こちらのFE 600mm F4 GM OSSはボケも柔らかでなめらかです。シャープとボケという相反するものを両立しているのは、さすがにG Masterといったところです。

フォーカスポイントから遠く離れた背景はもちろん、ホオアカのすぐ左後ろにあるボケも柔らかだ。
ボケがなめらかなので、画面左端の3本の直線的なラインを見比べると、どれがカメラから近くて、どれがカメラから遠いのかがよくわかる。
■撮影機材:ソニー α7R V + FE 600mm F4 GM OSS
■撮影環境:F5.6/1/500秒/ISO200
フォーカスポイントのミヤコドリの目から遠くに離れて行くにつれて、前ボケも後ボケも柔らかに大きくなっていっているのがわかる。
■撮影機材:ソニー α7R IV + FE 600mm F4 GM OSS
■撮影環境:F4/1/1250秒/ISO500
ムクドリの水浴びシーン。
太陽の位置に難がある時間にやってきたので、ライティングで立体感を出せず。こんな時は前ボケを活用して、立体的に見せる。ボケが柔らかなレンズだから、躊躇なくカメラ位置を低くすることができた。
■撮影機材:ソニー α1 + FE 600mm F4 GM OSS
■撮影環境:F4/1/2000秒/ISO500

高速で高精度なAF駆動

XDリニアモーターを2つ搭載しているので、AFは高速・高精度で、瞬間を逃さずにとらえ続けることができます。また、駆動は静かなので動画撮影時に有り難く、低振動はシャッタースピードを遅くした流し撮りにも有効です。

飛躍的に進化しているボディ側のスピード性能にも余裕をもってついていくことができるので、最新のスピード系のαとのマッチングも良好です。

カルガモの着水直前のシーン。
FE 600mm F4 GM OSSのAF駆動は、α1の超高速の演算処理にもついていけるので、次の行動が読めてさえいれば、欲しかったカットを撮るのは困難ではない。
■撮影機材:ソニー α1 + FE 600mm F4 GM OSS
■撮影環境:F4/1/2500秒/ISO320
コハクチョウ。シャッタースピードを1/50秒にして、翼の先端をブラして動感を表現。
三脚とレリーズの使用で、カメラの外からの振動をゼロに近づけ、電子シャッターにすることで、カメラ内の振動もゼロに近づけた。レンズのAF駆動も低振動なので、成功確率は格段に上がる。
■撮影機材:ソニー α1 + FE 600mm F4 GM OSS
■撮影環境:F8/1/50秒/ISO640
ナベヅルの飛翔シーン。
高速連写機と組み合わせることで、瞬間を高精度に撮り続けることができ、高確率でイメージ通りの写真が撮れる。
■撮影機材:ソニー α1 + FE 600mm F4 GM OSS
■撮影環境:F5.6/1/1600秒/ISO500

まとめ

開放から使える確かな描写性能は、F4という明るさを最大限に活かすことができ、柔らかでなめらかなボケは、さすがにG Masterといった感じです。

発売からそれなりの時間が経ちますが、最先端のレンズとして、この先も十分に使っていくことができます。
プライスはさておき、それ以外は全て文句のつけようのない、究極の単焦点超望遠レンズと言えるのではないでしょうか。

毛の一本一本まで克明に写し出す描写力、柔らかなボケ、このレンズの特徴がよく出た1枚となった。
■撮影機材:ソニー α7R IV + FE 600mm F4 GM OSS
■撮影環境:F4/1/250秒/ISO800

 

 

■写真家:山田芳文
「100種類の鳥よりも1種類を100回」をモットーに野鳥を撮り続ける。ライフワークは鳥がいる風景写真。主な著書は『写真は「構図」でよくなる!すぐに上達する厳選のテクニック23』(エムディエヌコーポレーション)、『やまがら ちょこちょこ』(文一総合出版)、『SONY α6600 基本&応用撮影ガイド』(技術評論社)など。 最新刊は『SONY α7 IV 完全活用マニュアル』(技術評論社)。

 

 

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