ソニー FE 70-200mm F2.8 GM OSSで撮る動物写真|小川晃代
はじめに
普段様々な焦点距離のレンズを使用している私ですが、中でも一番使用頻度の高いレンズは70-200mmF2.8の望遠ズームレンズです。写真を始めて約20年、使用するメーカーこそ変われど常に愛用し続けている、私にとってなくてはならないレンズです。何故ならペット・動物撮影においてこの1本があればどんなシーンでも素敵な写真が撮れるから。ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが本当に様々なシーンで活躍する魔法のようなレンズなんです。今回は私がソニー FE 70-200mm F2.8 GM OSSで撮影した作品をご覧いただきながらその魅力をお伝えします。
FE 70-200mm F2.8 GM OSSの活用法
FE 70-200mm F2.8 GM OSSは見た目も大きく長いレンズです。その見た目から「重そう」と敬遠している方もいるのでは無いでしょうか?確かに広角系のレンズやキットズームレンズに比べると重く感じると思います。ペット撮影をする方だと出来るだけ軽量コンパクトに済ませたい気持ちもわかります。でもその重さというデメリットを補って余りあるメリットがあるレンズなのです。まず重さですが超望遠のように持っているのがつらい重さではなく、女性の私でも手持ちで普通に撮影できるほど。もともと三脚や一脚を使わないスタイルの私にとって手持ちで撮影できるFE 70-200mm F2.8 GM OSSは最高の1本です。はじめは重いと感じるかもしれませんがすぐになれてしまう程度の重さなのです。また200mmという焦点距離はちょっと遠くにいる被写体撮影に便利です。ペットはもちろん身近な野生動物や野良猫、最近は動物園撮影もコレ1本を使っています。
こちらは奈良の鹿。比較的人慣れしていて近づく事も出来るため、どんなレンズでも対応できますが、70-200mmだと近すぎず遠すぎずのベストの距離感で鹿の自然な様子を狙えられます。
2匹がとても仲が良くてほほえましかったので邪魔をしないように200mmで切り取ってみました。背景は梅の花でピンクのボケを入れ込みました。寒空の中、春の訪れを感じる作品になったかなと思います。
野良猫撮影や動物園撮影をする時、昔は70-200mmレンズと100-400mmレンズの2本を持って撮影に行っていました。ですがこの2本のレンズの付け替えや嵩張る荷物のわずらわしさから、最近は70-200mmレンズ1本で出かける事が多いです。動物園ではいかに人工物を入れずにフレーミングして野生のように見せるかが需要となります。こんな時このレンズが本領を発揮します。望遠レンズは広角レンズに比べ、画角が狭いです。つまり狭い範囲を大きく写すことが出来るレンズです。広角では写り込んでしまう余計な要素を望遠端の200mmで上手くフレーミングすれば余計な物を排除した野生感漂う写真に仕上がります。
また檻の中にいる動物を撮影する時は、手前の檻をぼかす事で檻を消してしまいます。開放値が大きいレンズだと手前の檻がボケきれずに残ってしまう事があるのですが、私が使っているレンズは開放値がF2.8。F2.8であれば檻がしっかりとボケて消えてくれるので、檻の有無を気にする事なく動物園撮影が楽しめるのも嬉しいです。(檻の太さや檻と被写体の距離の関係によって消えない事もあります)望遠レンズでありながらこのF2.8という開放値は本当に便利。同じ焦点距離でF4のレンズもありますが、上記の理由も含め動物園の動物~ペット撮影で使用するのであればこちらのF2.8を購入した方が良いと思います。
こちらは野良猫写真。野良猫は半野生動物なので近づき方にもコツがあります。最初からぐっと近寄るとビックリして逃げてしまうので、まずは200mmでこっそり狙って徐々に距離を詰めていきます。というように遠くにいる被写体を撮るために望遠レンズを使うというのは誰でもわかる事ですが、他にも愛犬撮影でもとっても役に立つこのレンズの特徴があるのです。
愛犬撮影でFE 70-200mm F2.8 GM OSSを使う
季節の花々とわんこを一緒に撮りたい。そんな時に欠かせないのが美しいぼけ味のこのレンズ。わんこやわんこの近くに配置した花はシャープにくっきり写り、背後に広がる花々はやわらかく優しいボケ味で包んでくれます。ぼけ味の他にさらに役立つ特徴は「圧縮効果」です。圧縮効果とは遠くにあるものが手前にギュッと引き寄せた(圧縮された)ように見える事。遠くの物が大きく引き寄せられるので遠近感が少なくなり密集したイメージの写真に仕上がります。わんこやにゃんこ撮影の場合、あえて被写体から離れて望遠レンズを使うのはこの圧縮効果を生かしたいからです。
この圧縮効果をお花畑で使うと、花と花の隙間が埋まって密集感が出ます。せっかく行ったお花畑がスカスカで淋しかった。という時でも望遠レンズの圧縮効果を使えば花と花の隙間を埋めて密集したお花畑のように写すことが出来るのです。
ラベンダーの並木道で撮影した1枚。奥行きを出したかったので写真の中でラベンダーを対角線上に配置して撮っています。標準レンズではスカスカ感が目立ってしまいますが望遠レンズの圧縮効果で密集感が出ました。またF3.2で撮影しているので手前と奥のラベンダーがふんわりとボケて被写体を引き立てています。この美しいボケ味もこのレンズの魅力です。
例えばお花畑で観光客が多くても望遠レンズで上手くフレーミングし画面の中を被写体のわんこと密集したお花や青空で埋め尽くせます。そうすると実際には狭い範囲しか切りとっていないのにまるで広大なお花畑を独り占めしたかのような写真に仕上がります。
こちらの写真も圧縮効果が良くわかる作品。奥へと続く木々がぐっと手前に引き寄せられて存在感が出ています。縦位置にフレーミングする事で木の大きさやたくましさを表現してみました。そして紅葉が始まった木々の階調豊かな色の表現がしっかりでています。
このレンズの魅力とは
私はこのレンズはどんな場所でもキレイに美しく写してくれるレンズだと感じています。このレンズの持つ美しいボケ味が被写体を目立たせ、特に何にもない場所でもキレイな作品へと仕上げてくれるのです。
公園の一角で撮影。足元にはたんぽぽが咲いていたので、なるべく沢山のたんぽぽが入るようにフレーミング。カメラを低く構え、被写体より手前のタンポポを前ぼけにする事でより柔らかな印象に仕上げています。
動きシーンでも大活躍
そして極めつけは動いているシーンの撮影。上の写真は河津桜の並木道を走るわんこ。動きシーンの撮影は美しい描写力だけではなくAF精度が必要不可欠。不規則に走り回る被写体に瞬時にピントを合わせてくれる高度なAF精度が求められるのです。
走る姿を綺麗に撮るためにはワンコの目線よりも低く構えるのが良いので私の場合は寝そべって撮ることが多いです。カメラから遠ざかったり急に近づいてきたりするわんこをちょうど良いサイズにフレーミングするのにズームレンズは最適なのです。
わんこの動きに合わせてカメラを振り画面内にわんこを入れ続け良きタイミングで連写。高度なAF制度を持つFE 70-200mm F2.8 GM OSSだからこそ、決定的シーンを逃さずに瞬間の撮影が出来るのです。よく「わんこの動きシーンの撮影って難しくて撮れない」というお声を聞きます。ある程度撮る側の反射神経が求められますが、このレンズを使って練習をすれば誰でも撮れると私は確信しています。そして何よりもこのレンズで動きシーンを撮るのが本当に楽しいのです。
カメラやレンズが苦手とする黒い被写体もこの通り。激しい動きに加え、水しぶきがピント合わせの邪魔をしますが、そんな事もお構い無しでちゃんとピントが合います。そして細かい水しぶきの一つ一つもしっかりと綺麗に描写されていますね。
まとめ
身近な野生動物~ペット撮影まで幅広く活用出来るレンズ。私は個人的にもFE 70-200mm F2.8 GM OSSが大好きでこのレンズに絶対的な信頼を持っているのでひいき目な所があるのかもしれませんが、美しいボケ味と豊かな階調、そして高度なAF精度を持ちながらこれだけ幅広く活用できるレンズは他に無いのではと思います。普段の風景をもっとお洒落に美しく見せたい時や、生き生きと走り回る愛犬の一瞬を撮ってみたくなったら是非このレンズを使ってみてください。
■写真家:小川晃代
トリマー・ドッグトレーナー資格を保持しペットやのら猫等小さな生き物撮影を得意とするペトグラファー。2006年に動物に特化した制作会社とペット&キッズ専門の写真スタジオ「アニマルラグーン」を設立。現在はカレンダーやカタログ、写真絵本の撮影をはじめ、写真教室の講師やペットモデルコーディネーターとしても活躍。『ゆるねこ×ブッダの言葉』(インプレス)、『ちいさいののちゃん』(講談社ビーシー)、『ねこもふ。ごーじゃす』『手乗りねこ』(宝島社)、『ねこの撮り方まとめました!』(日本カメラ社)、『こいぬ』『こねこ』(ポプラ社)、『ねこきゅう』(東京書店)などの写真集ほか、ペットカレンダーも多く手がけている。