ソニー FE 70-200mm F2.8 GM OSS II レビュー|人物、航空機、紅葉、風景、スナップ撮影で本レンズの魅力を探る!
はじめに
今回はソニー(SONY)から2021年11月26日に発売されたフルサイズEマウント用レンズ「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」のレビューをさせていただきます。まず思う所としましては、ソニーフルサイズミラーレス用交換レンズのGMシリーズも遂に2型が出始めた事への感慨深い気持ちです。この話をしだすと、おそらくこのレンズの話になる前に今回のレビューが終わってしまいそうなのでレンズレビューを始めさせて頂きます。写真を見て頂きたいのでスペック的な話は後回しにして、作例からはじめさせて頂きます。
ポートレート
まずはα1に装着してポートレート撮影に使用したのですが、このレンズ無茶苦茶軽いんです。持ち上げた瞬間にこれまでの、いわゆるナナニッパのレンズ(70-200mm F2.8)にしては軽すぎて戸惑ってしまいました。こんなに軽くて大丈夫なの?という懸念を抱きましたが、その疑念はファインダーを覗いたら一瞬で吹き飛び素晴らしい描写が目に飛び込んできました。
開放F2.8での撮影でもピント面の解像感はとても素晴らしかったです。そして何よりポートレート撮影で重要なボケ感は、前ボケ後ボケ共に素晴らしくズームレンズとは思えない程、なだらかに淡く溶けてくれます。撮影していて非常に嬉しくなりました(笑)
少し大人な雰囲気の難しい構図でも、レンズの表現力が高いのでイメージ通りの撮影がしやすくスムーズに撮影が進みます。
正面だけでなく寝転んだり少し引いたりして画面内における顔の面積が小さくなった時でも、瞳AFは常にモデルの瞳を捉え続けてくれました。この辺りの性能はカメラのボディ側の絶対的な性能が必要なのですが、その機能を最大限に活かす為にはレンズ側の性能が高い必要があります。本レンズのAF性能は素晴らしく、微妙で難しいモデルさんの動きに常に合わせて続けてくれました。このような前後左右微妙な動きに素早く対応する為にリニアモーターが4基搭載されているのだと感じ納得しました。
上述したのですが重要な事なので、もう一回言わせて頂きます。ボケ感がたまらなく良いです。そして撮影時の空気感までも伝えることが出来る表現力のあるレンズになりますので、本レンズはポートレート撮影の時に絶対に忘れず持って行きたいレンズになりました。
それにしてもこのレンズ本当に軽くて使いやすいです。この日は朝から夕方まで撮影しましたが全く疲れる事はありませんでした。1型と比較すると435gの減量に成功しており、重量は1045gとナナニッパとしては世界最軽量になります(オートフォーカス対応のフルサイズ70-200mm F2.8 望遠ズームにおいて)。
航空機
次は超小型軽量フルサイズのミラーレスカメラ α7Cに装着して、千里川土手で飛行機撮影をしてみました。猛スピードで迫りくる着陸機を捉えて放さないAFは本当に頼りになります。そして小型軽量なレンズと超軽量カメラの組み合わせは航空機撮影を手持ちで行う際に強い味方になってくれます。
ポートレート撮影時にも感じていたのですが、このレンズを通した色味は表現豊かで階調にも優れており原色から淡い色まで美しく表現することが可能です。夕暮れのなかで実際の空の色と機体に写り込む空の色の違いをしっかりと描写してくれるので、よりドラマチックな表現に仕上がります。
紅葉
再びα1に装着して紅葉も撮影しました。余談ではありますが今年の京都の紅葉は例年と比べて美しかったように思います。
発色の話で飛行機の作例では淡い色を見て頂きましたので今度は原色系の作例をご紹介します。赤、黄、緑のコントラストを捉えて鮮やかに表現してくれます。
前ボケを使った表現をしたい場合はピント位置をトラッキングAFで奥の紅葉に合わせてあげるとスムーズに撮影出来ます。本レンズは狙った被写体にピントを合わせる能力が高いのでとても撮影しやすかったです。
開放F2.8から素晴らしい解像感でした。ボケ感を活かしつつも、ピント面のモミジの葉脈がクッキリと写ります。
F9まで絞ると更に解像感と深みが増します。
▼焦点距離70mmで撮影
▼焦点距離100mmで撮影
▼焦点距離135mmで撮影
▼焦点距離200mmで撮影
ズーム域の各焦点距離と描写の違いです。どの焦点距離でも解像感が有り描写力も高く、ズーム全域で素晴らしい性能だと思います。
逆光下でもコントラストが失われず発色も良いです。
風景
次は霧ケ峰高原で風景撮影です。風景なのでカメラは高解像度のセンサーを持つα7R IVを使いました。この日は透き通るように晴れた日だったので、冠雪(かんせつ)した富士山までしっかりと望むことが出来ました。撮影時には雲の位置が良くなるまで少し待って、ベストと思う位置まで雲が来てからシャッターを切りました。
秋を写すにはやはり発色の良いレンズが必須です。本レンズは冠雪した雪の白から色とりどりの紅葉、そして抜けるような青空まで一枚の中で全ての色を美しく表現してくれます。
今まで風景撮影にナナニッパを使いたいけど重たいから開放F4レンズで我慢されていた方も多いと思いますが、この新しいGMレンズの軽さは、その問題を解決してくれます。
スナップ
最後は倉敷の美観地区で撮影したスナップです。倉敷の繊細な情景とスナップでのレスポンスを考えてボディはα1にしました。
ここまで全面に前ボケを持ってくる構図の場合では、本レンズのDMF機能が役立ちます。AF稼働中でもMFリングを廻すと瞬時にMFとして使用する事が出来る便利な機能です。AFからMFへの切り替わりが遅いと使いにくいのですが、このレンズのDMFは瞬時に切り替わりますので凄く使いやすくて気に入りました。
この写真もDMF機能を使用しての撮影です。緑の葉が写り込む窓を覗くと、向こう側にクラシカルな扉と装飾が優しい光の中にセンス良く配置されていました。こういうシチュエーションではピントの置き場所が難しいのですが、DMFでMFリングを廻しながら自分のイメージに近い所でシャッターを切る。こういった使い方がAFからボタン操作せずにそのまま使えるのは、スナップ撮影には必須な機能だと思います。
倉敷と言えば建築物も写欲をそそられるのですが、このレンズは持ち前の解像力で木造でも煉瓦でも質感をしっかり伝えてくれます。
スナップ撮影をしていて、こういった瞬間に出会った時にレスポンスが悪くて悔しい思いをすることが多くあります。しかし本レンズとカメラの組み合わせであれば狙った瞬間を素早く捉える事が出来ます。私がスナップ撮影を行う時の機材の組み合わせでは、これがベストに近いと感じました。
望遠スナップは切り取り構図が楽しいのですが、70-200mmというのはある意味スナップ向きの焦点距離なんですよね。美観地区の川面に映るリフレクションの揺らぎを気持ちよく撮影出来ました。
スイッチでの切替機能
スイッチパネル上部から一番上がAF/MF切替スイッチ、その下が上述させて頂き私が凄く気に入っている機能でもある、AF中にMFに瞬時に切り替える事が可能になるDMF機能のON/OFF切替スイッチがあります。また、その下にはフォーカスレンジの切替スイッチ、手ブレ補正(OSS)のON/OFF切替スイッチ、手ブレ補正の流し撮り対応等の手ブレ動作方向切替スイッチ(MODE)、絞り環のAモードとMモードをロック出来るIRIS LOCKスイッチがあります。写真には写っておりませんが絞り環のクリックON/OFF切替スイッチや、他機能に割付可能なフォーカスホールドスイッチが3か所もついており、あらゆるジャンルの撮影に最適な設定が可能となっていて便利です。
さいごに
今回も色々なジャンルの撮影をさせて頂きました。このレンズの印象ですが今後これより良いナナニッパが開発できるのか?と思う程、殆ど全てにおいて素晴らしかったというのが私の印象です。AFスピードと正確さに加え動体を捉え続ける能力、質感と空気感を伝える事の出来る解像感と描写力。原色から淡い色まで鮮やかで豊かな表現力、どれをとっても素晴らしくそれでいてとても軽いので一日中撮影していても疲れません。この総合力はソニー Eマウントユーザーの方には是非体験して頂きたいと思います。
最後にポートレート撮影時に御協力いただいたモデルさんの写真が有りますので是非ご覧ください。
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・ソニー FE 70-200mm F2.8 GM OSS II レビュー|この軽さは異次元!飛躍的に進化した望遠ズームレンズ
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・ソニー FE 70-200mm F2.8 GM OSS II レビュー|小川晃代
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■写真家:葛原よしひろ
ジャンルに捉われず何でも撮影するマルチプレイヤースタイルの写真家。カメラメーカー等の写真セミナー講師としても全国的に活動している。
大阪芸術大学写真学科卒/滋賀県高島市公認フォトアドバイザー
JPS(日本写真家協会)正会員