ソニー FE 70-200mm F2.8 GM OSS II レビュー|小川晃代
はじめに
数あるレンズの中でも使用頻度の高い70-200mmレンズ。ソニーにはFE 70-200mm F2.8 GM OSSがラインナップされており、このレンズのⅡ型が昨年発売されました。どこが進化したのか、どう使いやすくなったのかを見ていきたいと思います。
AF精度の向上で不規則な動きも確実にキャッチ
まず何よりも伝えたいのがAF精度の向上です。アクティブシーンの撮影で私はこのレンズ一択なので、AF精度の向上はとても嬉しいポイントです。
カメラに向かってわんこが走ってくるシーンの撮影では、動く被写体にしっかりピントを合わせ続けるAF追従精度が試されます。足の速いわんこにもしっかりとピントを合わせ続けてくれたおかげで、飛び上がった瞬間も逃さず撮ることができました。
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■撮影環境:ISO100 SS1/1250 F2.8 焦点距離92mm(35mm判換算138mm相当)
しっかり追従してくれるので躍動感のある瞬間を切りとる事ができます。
カメラに向かって走ってくるわんこは難なく撮る事ができましたが、不規則に動くわんこはどうでしょうか。フリスビーキャッチやボール遊びなどは被写体が不規則に動くので先ほどよりも難易度がぐんと上がります。縦横無尽に走り回る被写体を画面内に捉え続けるのはなかなか難しいもので、どうしても画面から外れてしまう事があります。
決定的な瞬間を撮影するためには、画面内に被写体を捉え続ける撮影者の腕も必要ですが、画面内に再び現れた被写体を捉えた後に、どれだけ素早くピントを合わせられるかがとても重要なのです。
今回はプラーやフリスビーを追いかけて遊ぶシーンを撮ってみました。おもちゃの動きに合わせて右へ左へと変則的に動くわんこを追います。時折被写体が画面から外れる事がありますが、再び画面内に被写体を捉えたあと、瞬時にピントを合わせてくれました。
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■撮影環境:ISO100 SS1/1250 F2.8 焦点距離79mm(35mm判換算118mm相当)
転がるフリスビーを追いかけているシーン
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■撮影環境:ISO100 SS1/1250 F2.8 焦点距離170mm(35mm判換算255mm相当)
こんな感じで不規則に動くのでこの後画面から外れてしまいました。
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■撮影環境:ISO100 SS1/1250 F2.8 焦点距離200mm(35mm判換算300mm相当)
でもまた画面に被写体を戻し、高速AFの力でこんなシーンもバッチリ。
続いては夕方に撮影した1枚。
薄暗くピント合わせが難しい環境の上に、足の速い子の撮影だったのでどうなるのか少し心配でしたが、そんな私を嘲笑うかのようにしっかりピントを合わせ続けてくれました。
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■撮影環境:ISO320 SS1/1000 F3.2 焦点距離180mm(35mm判換算270mm相当)
夕日をバックに走る
軽量化しても美しい描写力
もちろん描写力は抜群。逆光撮影でしたが被写体はシャープに、背景は美しいボケ味で描写し、発色も実に美しいです。
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■撮影環境:ISO64 SS1/1000 F2.8 焦点距離108mm(35mm判換算162mm相当)
オレンジのグラデーションが美しい
何も無い平凡な道で撮った写真も、美しい解像感とうっとりするようなボケ味で素晴らしい写真に仕上がりました。
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■撮影環境:ISO400 SS1/800 F2.8 焦点距離200mm(35mm判換算300mm相当)
木々の間から差し込む木漏れ日が美しい玉ボケに
何より驚いたのは軽さです。旧型に比べ435gも軽量化されたので普段から持ち歩きがしやすいレンズになりました。持った瞬間に実感できる驚きの軽さは、ペット撮影をする人にとってとてもありがたい事です。
最短撮影距離が縮まりシャッターチャンスも増えた
そして最短撮影距離が縮まったのもうれしいポイントです。旧型の最短撮影距離は96cm。今までは被写体との距離を最低1m弱とらなくてはならなかったので、不便な点もありました。例えば、まだしつけが入っていない子を撮る時にはなるべくその子の傍にいながらの撮影が望ましいので、1m弱離れるのは現実的に無理なのです。そのため今までは諦めざるを得ない事もありました。
また、室内撮影でも被写体と1mの距離をとるのは、広いお部屋でないと難しかったため、狭い部屋での撮影には不向きでした。しかしⅡ型の最短撮影距離は40~82cm。今まで不可能だった環境でも使えるようになった事で使用する頻度も上がりそうです。
実際にお部屋で撮った写真がこちら。最短撮影距離が短いと被写体とそこまで距離をとらなくて良いので、お部屋の中でも楽々撮影が出来ました。トコトコとこちらに向かってきた子猫。カメラに近づいてきてもまだまだシャッターが切れます。今までよりもシャッターチャンスが多くなったのでこれは便利!
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■撮影環境:ISO640 SS1/400 F2.8 焦点距離143mm
こちらにトコトコと歩いてくる所
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■撮影環境:ISO640 SS1/400 F2.8 焦点距離85mm
カメラのすぐ目の前まで来ましたがまだピントが合います!
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■撮影環境:ISO640 SS1/400 F2.8 焦点距離110mm
最短撮影距離ギリギリまで近づいた所をアップで撮影
まとめ
AF精度の向上、軽量化、最短撮影距離の短縮、この3つが進化したのはペット撮影においてもとても大きな利点です。FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIは屋外撮影だけでなく、今までは不可能だった少し狭い室内での撮影にも使えるので、今まで以上に活躍してくれる頼もしいレンズとなりました。70-200mmを持っていない方はもちろん、旧型を使っている方にもお勧めできる1本です。
その他のソニー FE 70-200mm F2.8 GM OSS II の記事はこちら
・ソニー FE 70-200mm F2.8 GM OSS II レビュー|この軽さは異次元!飛躍的に進化した望遠ズームレンズ
https://www.kitamura.jp/shasha/article/484841184/
・ソニー FE 70-200mm F2.8 GM OSS II レビュー|人物、航空機、紅葉、風景、スナップ撮影で本レンズの魅力を探る!
https://www.kitamura.jp/shasha/article/484608135/
・ソニー FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIが登場|大幅な軽量化と最大4倍のAFスピードを実現!
https://www.kitamura.jp/shasha/article/484056077/
■写真家:小川晃代
トリマー・ドッグトレーナー資格を保持しペットやのら猫等小さな生き物撮影を得意とするペトグラファー。2006年に動物に特化した制作会社とペット&キッズ専門の写真スタジオ「アニマルラグーン」を設立。現在はカレンダーやカタログ、写真絵本の撮影をはじめ、写真教室の講師やペットモデルコーディネーターとしても活躍。『ゆるねこ×ブッダの言葉』(インプレス)、『ちいさいののちゃん』(講談社ビーシー)、『ねこもふ。ごーじゃす』『手乗りねこ』(宝島社)、『ねこの撮り方まとめました!』(日本カメラ社)、『こいぬ』『こねこ』(ポプラ社)、『ねこきゅう』(東京書店)などの写真集ほか、ペットカレンダーも多く手がけている。