マクロレンズは撮影の幅を広げてくれる|ソニー FE 90mm F2.8 Macro G OSS
はじめに
今回紹介するのはソニーのフルサイズ用純正マクロレンズ「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」で、発売されたのは2015年6月。発売から少し経過したマクロレンズです。
ソニー純正のマクロレンズはAPS-Cサイズの「E 30mm F3.5 Macro」、フルサイズの「FE 50mm F2.8 Macro」、「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」の3本があり、今回紹介するのはGレンズで中望遠の90mmマクロの魅力とその写りを紹介します。
ソニー FE 90mm F2.8 Macro G OSSの基本スペックと魅力
「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」は、ソニー純正のGレンズのマクロレンズ。マクロレンズの魅力は、通常のレンズでは撮れない世界が撮影できるのが大きなポイントです。初めてマクロレンズを使うと、なんか写真が上手くなった気がするくらい面白いものがアップで撮れたりします。もちろん通常の中望遠のレンズとしても使え、ポートレート撮影などにも活用できます。
「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」の基本スペックは、100mm前後のマクロレンズでは一般的なスペックで、「レンズ内手ブレ補正」機構もあってマクロレンズを初めて使う方でも安心して使えるレンズです。
FE 90mm F2.8 Macro G OSS | |
焦点距離 | 90mm |
レンズ構成 | 11群15枚 |
開放絞り | 2.8 |
最小絞り | 22 |
フィルター径 | 62mm |
絞り羽根枚数 | 9枚 |
最短撮影距離 | 0.28m |
最大撮影倍率 | 1倍 |
手ブレ補正 | レンズ内手ブレ補正方式 |
全長×最大径 | 79×130.5mm |
重量 | 約602g |
マクロレンズというのは、一般的なレンズよりも被写体に寄ってピント合わせができるレンズのジャンルですが、マクロレンズの性能を表す項目の中に「撮影倍率」という言葉がよく出てきます。「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」の最大撮影倍率は「等倍」になります。ここで「等倍」の意味を少し説明したいと思います。
撮影倍率「等倍」とは、撮影する被写体とカメラのセンサー(撮像素子)に写る像の大きさが同じ倍率になる事を意味します。
例えば、直径2cmのコインを最大撮影倍率「等倍」のマクロレンズを使用して、最短撮影距離で撮影した場合に、センサー(撮像素子)でコインは2cmの大きさで写すことができます。
最大撮影倍率が「1/2倍」の場合であれば、同様に撮影してもセンサー(撮像素子)でコインは1cmの大きさにしか写りません。被写体を大きくアップで写したい場合には、等倍で撮影できるマクロレンズが本領を発揮します。
ちなみにソニーのフルサイズ純正のマクロレンズは、「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」の他に「FE 50mm F2.8 Macro」のマクロレンズもラインナップされており、「FE 50mm F2.8 Macro」も等倍撮影ができるマクロレンズになっています。どちらのレンズを使っても最短撮影距離で撮影した場合は、「等倍」なので同じ大きさで撮影する事が可能です。
ここで50mmと90mmの焦点距離が違いは何に影響してくるのか、少し疑問を感じる方も居るかもしれません。焦点距離の違いは、「最短撮影距離」に影響を及ぼします。「FE 50mm F2.8 Macro」の場合、最短撮影距離は「0.16m」と非常に短く、等倍で撮影するには被写体ギリギリまで寄らなければいけなくなります。「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」で等倍で撮影する場合は、「最短撮影距離」が「0.28m」なので「FE 50mm F2.8 Macro」より少し余裕ができます。
レンズの先端部分から被写体までの距離の事を「ワーキングディスタンス」と言いますが、マクロレンズを使う場合、ある程度「ワーキングディスタンス」を確保できた方が、撮影の際に自由度が増すのが大きなポイントです。そういった要素もあって、使いやすさから焦点距離100mm前後のマクロレンズが一般的に標準的なマクロレンズの焦点距離になっています。
マクロレンズは凄くアップで撮れる反面、通常の撮影とは違って注意すべきポイントも多くあります。接写する事により、ピント合わせが非常にシビアになります。
また、絞りをある程度絞っても、接写時はピントの合う範囲が狭いのでピント合わせる場所にも注意が必要になります。
下の写真は、古いフイルムのパトローネ缶(直径約3cm)をマクロ撮影で絞りを変えて違いが分かるようにほぼ最短距離で撮影してみました。絞りF2.8開放での撮影では、非常にピントの合う範囲が狭いので前後に大きなボケが発生します。
マクロレンズで等倍撮影するような場合、被写体や撮影角度によっては絞りを絞って撮影する方が懸命です。またピント合わせがシビアになる為、三脚などを使用してピント拡大をしながら撮影するのが良いでしょう。
ソニー FE 90mm F2.8 Macro G OSSで花の撮影
「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」で公園などをお散歩しながら、花や昆虫などいろいろ撮影したものをピックアップしてみました。撮影したデータを見てみると、等倍レベルで撮影したものはそんなにありませんでした。被写体や構図などを考えると、実際にはそこまで寄るような撮影は少ないかもしれません。
上の写真のような屋外で撮影する場合は、風などの影響で被写体が揺れて動いてしまう場合が多いので、カメラのオートフォーカスの設定は、コンティニュアンスモードで撮影をする方がピント合わせをしやすくなります。
被写体に寄って撮影した時の前後の大きなボケは、マクロレンズならでは大きな魅力です。
APS-C機で「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」を使用した場合は、焦点距離が135mm相当になります。また同倍率で撮影した場合、APS-C機で撮影した方がより大きくアップで撮影する事ができます。
ソニー FE 90mm F2.8 Macro G OSSでスナップ撮影
2月の後半に各地で開催されたひな祭りイベントの一つを「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」を使って撮影してみました。マクロレンズを使用してアップで撮ってみると、精巧に作られたひな人形の表情をよく見ることができます。また小さな人形などの世界観を演出するには、マクロレンズでの撮影がぴったりです。
吊るし雛などの飾りも、大きなボケをいかして立体感や奥行き感を演出できます。
「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」の前後のボケはクセもなく非常にニュートラルです。小物の撮影やお料理などのテーブルフォト撮影などの様々な被写体に柔軟に対応できるレンズです。
あえて不満な点を上げるとすれば、発売開始から年数経過している「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」のオートフォーカスのスピードは、最新のレンズに比べるとやや見劣りを感じるかもしれません。
まとめ
「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」は、室内でも屋外でも活躍できる等倍マクロレンズです。ピントのあった部分は非常にシャープで、さすがGレンズといったところです。そして前後のボケは、非常に柔らかくニュートラルなので、お花などを優しい柔らかい表現で撮影するのには最適なレンズです。
もちろんマクロレンズとしての使い方だけでなく、中望遠の90mm単焦点レンズとして撮影もできるので、お子様やポートレート撮影、ペットなどの撮影にも使える便利なレンズではないでしょうか。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師