ソニー FE 50mm F1.8 レビュー|お手頃価格の純正単焦点標準レンズ
はじめに
2016年に発売されたSONY FE 50mm F1.8(SEL50F18F)。焦点距離50mmのフルサイズ対応単焦点レンズです。焦点距離50mmで開放絞り値がF1.8のレンズは、いわゆる「撒き餌」レンズと呼ばれる事が多く、各メーカーから比較的低価格帯で発売されています。標準のズームレンズキットを使っている方には、初めて単焦点レンズを入手しやすい価格の50mm単焦点レンズは、大きなボケを生かした撮影もできる魅力あるアイテムです。今回はそんな「FE 50mm F1.8」の魅力とその写りをご紹介します。
FE 50mm F1.8の基本スペックと魅力
ソニーのフルサイズ対応50mmクラスの単焦点レンズは、今回紹介する「FE 50mm F1.8」の他に「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」、「FE 50mm F1.2 GM」、「E 50mm F2.5 G」、「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」と豊富なラインナップです。GマスターやGレンズ、そしてツァイスレンズとバラエティに富んだラインナップの中で、無印の「FE 50mm F1.8」の最大の魅力はなんといっても購入しやすい価格と軽量コンパクトな筺体と言ったところではないでしょうか。
今回は筆者の手元にある、同じF値である「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」とちょっと比較してみました。「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」は、2013年に発売されたソニーフルサイズEマウントカメラシステム最初の単焦点レンズの一つで、今なお人気のあるレンズです。
FE 50mm F1.8 | Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA | |
焦点距離 | 50mm | 55mm |
レンズ構成 | 5群6枚 | 5群7枚 |
開放絞り | 1.8 | 1.8 |
最小絞り | 22 | 22 |
フィルター径 | 49mm | 49mm |
絞り羽根枚数 | 7枚 | 9枚 |
最短撮影距離 | 0.45m | 0.5m |
最大撮影倍率 | 0.14倍 | 0.14倍 |
手ブレ補正 | – | – |
最大径x長さ | 68.6×59.5mm | 64.4×70.5mm |
質量 | 約186g | 約281g |
無印レンズとツァイスレンズとそもそも性格が異なるレンズですが、50mmクラスの同じF値の単焦点レンズとして、その違いについては気になるところです。焦点距離が5mmの違いで画角にして4度程度違いはあるものの、実際に並行して使ってみても使い勝手の差はそれほど感じません。
ただ写りに関しては、ツァイスレンズ「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」の描写力が勝っています。しかしコスト面から考えると、「FE 50mm F1.8」は実売価格で「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」の1/3ほどの価格で購入する事ができるコストパフォーマンスの高いレンズです。
プラスチックを多用した筺体なので高級感はありませんが、レンズの重さが186gと非常に軽いのが大きな魅力です。
標準のズームレンズでは味わえない、開放絞り値F1.8のボケを手軽に扱える魅力ある単焦点レンズですので、初めて単焦点レンズを購入する方におすすめのレンズです。
FE 50mm F1.8で猫撮影
筆者が「FE 50mm F1.8」で良く撮影する被写体は猫です。猫の撮影は基本室内撮影なので、明るい単焦点レンズがメインになります。最新のレンズに比べるとオートフォーカスの速度はやや遅く感じますが、通常のスナップ撮影では問題ないレベルです。
筆者は50mmという焦点距離が、室内での猫撮影に非常にマッチしていると感じています。部屋の大きさにもよりますが、猫といい感じの距離感を取ることでき撮影がスムーズにいきます。最短撮影距離が0.45mmなのでもう少し寄れればと感じる事も少しありますが、あまり近づき過ぎても猫が嫌がったりするので丁度いいのかもしれません。
少し残念なポイントとしては、レンズに手ブレ補正機能が搭載されていない点です。コスト面を考えると仕方がない点かもしれませんね。それでも、αシリーズボディの多くは手ブレ補正機能があるので大きな問題ではないでしょう。
絞り開放では正直言って解像度は高くないレンズなので、逆にその特性を生かして猫の毛並みの柔らかさを表現するのに使用しています。
また、APS-Cサイズのカメラ「α6400」で「FE 50mm F1.8」を使って撮影すると、焦点距離は75mm相当になるので、猫との同じ距離感を保ちながら少しアップで撮影することができます。ボディが小型なα6000シリーズのサイズにも「FE 50mm F1.8」はマッチし、より軽量な組み合わせで快適に撮影する事ができます。
APS-Cサイズのカメラでの組み合わせでは中望遠レンズ的な感じになるので、屋外でのペット撮影やお子様などのポートレート撮影で威力を発揮できる組み合わせでもありますね。
FE 50mm F1.8で街中・水族館スナップ撮影
次に「FE 50mm F1.8」を持って街中スナップ撮影と水族館で撮影をしてみました。「FE 50mm F1.8」は小型軽量なので、普段使いのバッグにカメラを忍ばせて散策しながらの撮影です。気軽な街中スナップでは、やはり軽いというのは非常にありがたいですね。
「FE 50mm F1.8」はレンズ自体の仰々しさが無く気軽に扱えるレンズ。単焦点レンズならではの割り切った撮影ができ、撮影する際の思考がシンプルになり楽しめます。ズームレンズしか使った事のないユーザーにはぜひ試してもらいたいレンズです。
下の写真はカメラ側の「歪曲収差補正」をオフにした状態で撮影したものです。少し歪曲収差は出ていますが、そのレベルは昨今の小型ズームレンズに比べれば非常に良好なレベルです。
少し暗い場所でも、F1.8の絞り開放で撮影すればISO感度を大きく上げなくても安心して撮影する事ができます。また大きなボケを使った奥行き感を演出する撮影や、背景ボケを生かした被写体を印象的に撮影することができます。
街中スナップ撮影の後に、水族館で撮影をしてみました。暗い水族館の中ではある程度ISO感度を上げて撮影をしましたが、絞り開放F1.8のおかげでISO感度も実用的な範囲で対応できました。
ドルフィンパフォーマンスでは、高速で動く被写体なのでオートフォーカスの精度に関して少しもたつきましたが、被写体が向かってくるようなシーンでなければ問題なく撮影することはできました。
まとめ
軽い、明るい、気軽に使える標準単焦点レンズ「FE 50mm F1.8」は、小さなバッグに入れて普段から常に持ち歩きたい1本です。発売から年数が経ち手ブレ補正機能もないレンズですが、コストパフォーマンスが抜群に良く、キットズームレンズしか持っていないユーザーや、初めての単焦点レンズ、ペットやお子様などをよく撮影する方におすすめできるレンズです。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師