風景写真の引き出しを増やす!|その11:紅葉撮影のポイント
はじめに
鮮やかな紅葉は春の桜と並ぶ2大被写体の一つと言っても過言ではないでしょう。私自身も来る紅葉シーズンを今から楽しみにしています。標高の高いところや一部地域ではすでに紅葉が始まっていますが、ほとんどの地域ではこれからが秋本番。そこで今回は私が普段から紅葉撮影で意識しているポイントをお伝えしてまいります。
紅葉撮影のポイント
光線状態を意識する(日差しのある時)
秋の太陽は昼間でも高度が低く、光線に角度がつくため撮影しやすいと言えます。ただし谷間などでは全体に光が回らず陰影が強くなりすぎてしまう事があり注意が必要です。
昼間12時頃に撮影したものですが適度に陰影が付き斜面に奥行きが出ています。
こちらも上と同様、昼間に撮影したものですが秋は太陽が低く、谷まで光が届きませんでした。このままでは日なたと日陰の輝度差が大きく写真としてまとまらないとも言えます。日陰のみ、または日なたのみを狙う。もしくはカメラ内で明暗調整をしたり、画像処理で明部と暗部を整えたりする必要があります。
ただし輝度差が大きいことが悪いわけではありません。このようにスポット光効果が得られ主役に視線誘導が出来る場合はその明暗を生かしましょう。印象的な作品に仕上がります。
紅葉の鮮やかさを引き出すにはサイド光から逆光で撮影するのがおすすめ。順光で撮影すると陰影や立体感に欠け、冴えのない色表現となってしまいます。また紅葉の色づきはその年の気候によって良し悪しが変わります。燃えるような鮮やかな色の時もあれば、赤くなりきらずに枯れたような色になる時もあります。とは言えそれも自然の姿。どんな状況でも紅葉の色をしっかりと引き出すには光の向きが重要になってくるという訳です。
▼サイド光
▼順光
上の2枚は同じような時間にカメラ位置を変えて、同じ場所を光線の向きが変わるよう撮影したものです。上がサイド光、下が順光です。サイド光で撮影した写真の方が岩のゴツゴツ感や紅葉の色が鮮やかに描かれていることがわかるでしょう。一方、順光の写真は全体に平べったい印象で鮮やかさにも欠けます。
▼逆光
▼順光
こちらもカメラ位置を変えて同じ場所を同じ時間に、光線の向きが変わるよう反対側から撮影したものです。上が逆光、下が順光。逆光は紅葉の色に鮮やかさがあり透明感も感じられます。それに対して順光の写真は紅葉の色に冴えがありません。
曇りや雨を生かす
2-1.でも解説しました通り、秋は日中でも太陽が低く谷間の奥まで光が回りきらないことが多いと言えます。そのような場所での撮影では、日差しのない日に訪れることで陰影が付かず明暗バランスの良い写真を撮ることができます。また雨の日もおすすめ。濡れて鮮やかさを増した紅葉の美しさに見とれること間違いなし!面倒がらずに出かけてみましょう。
陽射しのせいで輝度差が大きく奥側の紅葉がつぶれ気味になっています。
こちらは日差しの無い時に撮影したもの。明暗バランスが取れ奥側の紅葉の色がしっかりと描かれています。
雨はなんでもない風景を一変させます。濡れた紅葉は艶々と鮮やかさを増します。
朝夕の光を生かす
朝夕の低い光を生かして陰影を描いてみましょう。また赤みや黄色みを帯びた色温度の低い光が、紅葉の色味を引き立ててくれる効果もあります。
低い光による長い影が道に良いリズム感を生み出してくれました。
こちらも早朝の低い光。石垣の立体感や重厚感が引き立ちます。ただし、光と影の分布が悪く、黒い部分が多くなりすぎると写真が重い印象になってしまう事も。どの部分を切り取るか?が重要です。色温度の低い黄色味を帯びた光が紅葉の色を鮮やかに描きます。
PLフィルターで紅葉の色を鮮やかに描く
紅葉に直射光が当たると光が白っぽく反射してしまい、鮮やかさを欠いた写りになってしまいます。そこでPLフィルターの出番。その反射を取り除けば紅葉本来の鮮やかな色を描くことが出来ます。ファインダーをのぞきながら、PLフィルターについている回転枠を紅葉が最も色鮮やかになる部分に調整して使用しましょう。少し反射を残して質感を表現するのもアリです。自信の無いときは反射除去効果を変えて複数枚撮っておくのも良いでしょう。
▼PLフィルター使用
青空が濃く雲もクッキリ、かつ紅葉の色も鮮やかです。
▼PLフィルター不使用
上に比べるとメリハリに欠け、色にも冴えがありません。
▼PLフィルター使用
▼PLフィルター不使用
ただし、いつでもPLフィルターを最大に効かせればよいわけではありません。雨に濡れた木々や葉の質感が欲しい時には、少し効果を弱めてテカリを出した方が良い場合もあります。PLを最大に効かせた上に比べて、若干弱めた下の方が濡れた木の輪郭が感じられます。
露出のポイント
紅葉に限らず適正露出を基準に露出補正を暗めにすると色が濃くなりしっとりとした雰囲気に。明るめにすると色は薄くなりますが明るく爽やかな雰囲気になります。明るさが変わるだけで随分と紅葉の印象が変わりますので、露出補正には特に気を配る必要があります。撮影後にRAW現像などで明るさ調整も可能ですが、できるだけ現場で自分のイメージに合う明るさになるよう心がけて撮影するのが上達への近道と言えるでしょう。私の場合、普段から露出補正に加えてカメラに搭載の露出ブラケット機能を活用して複数枚撮っています。
暗めの撮影で濡れた紅葉がしっとりと描かれ重厚感のある画となりました。
こちらは葉先につく水滴が可愛らしい印象になるよう明るめに撮影しました。
ホワイトバランスを調整して紅葉の色味を調整
晴天時、日陰になっている部分で撮影すると紅葉が青ざめて写ることがあります。その場合WB「くもり」や「日陰」を選ぶことで青みを取り除き、鮮やかな色合いで描くことが出来ますので覚えておきましょう。また紅葉の色付きが悪いと感じた時にも同様の調整が有効です。
WB太陽光で撮影。写真では曇っているように見えますが天気は快晴。撮影している場所が山影に入り日差しが届かない状況で撮影しています。このような「晴天時の日陰」では青みを帯びた写りになってしまう事が多く、紅葉の色が寒々しい印象になってしまいます。
そこでWBを日陰に設定したのがこちら。青みが取れて紅葉らしい発色となり肉眼での印象に近づきました。
色づきのピーク以外にもチャンスあり
週末しか撮影に出られない場合、色づきのピークに訪れるのは案外難しいもの。しかし見ごろ前半や落葉が始まっているからこそ撮れる写真もあります。もしピークを外してしまった場合でも頭を切り替えて撮影しましょう。
見ごろにはやや早いものの、赤に緑が混ざる様子をハイキー調で柔らかな色調に表現しました。
渓流では落葉時期もシャッターチャンス。スローシャッターで渦を巻く落葉の軌跡を描きました。
雨と霧が晩秋の趣きを演出します。はかなげな風景も画になりますね。
まとめ
来る本格的な秋に向けて、今回は紅葉撮影のポイントをお伝えしてきましたがいかがでしたでしょうか?たくさん撮ることが上達への秘訣。今年の秋も是非時間を見つけてお出かけくださいね。最後までお読みいただきありがとうございました。
■写真家:高橋良典
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員・ソニープロイメージングサポート会員・αアカデミー講師