湖畔や沼の風景写真の楽しみ方|齋藤朱門

齋藤朱門
湖畔や沼の風景写真の楽しみ方|齋藤朱門

はじめに

 今回は、筆者が普段撮っている風景写真の中から、湖畔や沼で撮影した写真とその撮影方法などについて紹介したいと思います。

 湖や沼は美しいリフレクションや朝靄が手軽に撮影することができる場所も多く、おすすめの風景撮影スポットです。特に初夏から秋にかけて、美しい新緑や色鮮やかな紅葉に染まった木々の湖面への映り込みを撮影するのは、風景写真の醍醐味の一つではないでしょうか。

湖や沼の風景写真

 過去に筆者が湖畔や沼で撮影した作例をいくつか紹介したいと思います。

 東山魁夷の絵画で有名な御射鹿池で撮影した一枚。水鏡・リフレクションと言えばこの撮影地を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

■撮影機材:ソニー α7R II + ソニー FE 24-70mm F2.8 GM
■撮影環境:マニュアル露出・68mm・F16・ISO100・1/3秒

 とても有名な撮影・観光スポットですが、いつ訪れても美しい水鏡が見られるのと駐車場も整備されていますので、初心者の方も安心して撮影できる場所だと思います。

■撮影機材:ソニー α7R IV + ツァイス Milvus 1.4/50 ZF.2
■撮影環境:マニュアル露出・50mm・F9・ISO100・1/6秒

 夏に裏磐梯にある曲沢沼で撮影した一枚。秋の紅葉や冬の霧氷が有名な沼ですが、夏も緑が青々として美しい情景を撮影することができます。

■撮影機材:ソニー α7S + サムヤン AF14mm F2.8
■撮影環境:マニュアル露出・14mm・F8・ISO100・1/13秒

 キャンプ場の中にある小さな池ですが、逆富士が撮れることで有名な場所ですね。数年前に訪れた際に撮影した一枚です。超広角レンズで低い位置から撮影するとこのようなシーンを撮影することができます。ここは湖面が凍る直前くらいの冬の時期が、比較的撮影しやすいと思います。

■撮影機材:ソニー α7R III + ソニー FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:マニュアル露出・69mm・F11・ISO100・1/15秒

 美しい桜の映り込みが撮影できる場所として大人気の長野県にある中綱湖での一枚。あまりの人の多さに驚きますが、一度は訪れてみたい場所の一つではないでしょうか。

■撮影機材:シグマ sd Quattro H + シグマ 70mm DG MACRO
■撮影環境:マニュアル露出・70mm・F9・ISO100・1/15秒

 紅葉の時期に訪れた、新潟県の竜ヶ窪での一枚。美しい湧き水に映り込む紅葉した木々が美しいですね。

■撮影機材:ソニー α7R III + シグマ 14-24mm F2.8 DG HSM
■撮影環境:マニュアル露出・14mm・F13・ISO100・1/6秒

 イタリア・ドロミテでの一枚。穏やかな水面に燃えるような朝焼けが映り込んでいました。

撮影場所と季節・時間帯

 湖畔や沼、池で風景撮影を行う場合、水鏡・リフレクションや朝靄を狙うことが多いのではないでしょうか。
 
 水鏡・リフレクションを撮影する場合、風がなく水面が止まっている時間帯が条件になるので、夜明け前~早朝が狙い目です。大きな湖よりは小さな沼、池の方が比較的リフレクションは撮りやすいと思います。

■撮影機材:ソニー α7R III + ソニー FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:マニュアル露出・46mm・F13・ISO100・8.0秒

 湖や沼での朝靄・朝霧は前日との気温差が大きいと発生しやすいですが、場所によっては発生時期が決まっていたりもしますので、訪れる予定の湖、沼の天気や作例の撮影時期を事前にチェックしておくと参考になるでしょう。

■撮影機材:ソニー α7R III + ソニー FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:マニュアル露出・95mm・F11・ISO100・6.0秒

 福島県の観音沼での朝靄と紅葉を撮影した一枚。秋の早朝のぐっと冷え込んだ日はこのような朝靄・朝霧が発生するので、幻想的な雰囲気の写真を撮ることができます。

 冬の時期は水面が凍ってしまうため、水鏡・リフレクションは撮影できませんが、冬ならではの風景を撮影することができます。

湖上の雪原

■撮影機材:ソニー α7R III + ソニー FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:マニュアル露出・81mm・F14・ISO100・1/800秒

 裏磐梯の桧原湖で撮影した一枚。冬の時期は雪や曇りが多いのですが、この日は風も強く目まぐるしく変わる天候だったため、吹雪の中、一瞬だけ太陽の光が湖上の雪原を照らしてくれました。
 
 裏磐梯のような雪深い地域の湖では、湖面が完全に凍結した上に深い雪が積もるため、大きな湖は壮大な雪原と変貌します。

アイスバブル

■撮影機材:ソニー α7R II + Laowa 10-18mm
■撮影環境:マニュアル露出・15mm・F11・ISO100・1/125秒

 北海道の糠平湖にて撮影した一枚。水中で発生したガスの作る泡が凍った湖中に閉じ込められた、アイスバブルと呼ばれる自然現象を撮ったものです。
 
 通常は凍結した湖上には雪が積もってしまうので、湖全面でこのようなアイスバブルを見られることは珍しいそうです。超広角レンズを湖面すれすれに置いて撮影することで、アイスバブルをよりダイナミックに見せています。

川の水鏡

 湖や沼、池以外でも流れが非常にゆっくりであれば、川で水鏡・リフレクションを撮影することもできます。

■撮影機材:ソニー α7R IV + ソニー FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:マニュアル露出・66mm・F11・ISO100・1/13秒

 こちらはアメリカのヨセミテ国立公園で撮影した一枚。早朝、穏やかな川に薄っすらと川霧が立ち込めていました。

撮影テクニックと機材

 湖や沼での撮影の場合も、基本的に通常の風景撮影と同様にカメラ・レンズ・三脚があれば撮影できます。早朝の薄暗い時間帯はどうしても三脚が必須となりますので、長時間露光を行う場合はタイマーレリーズがあるとより便利でしょう。
 
 レンズは撮りたいシーンに合わせてチョイスすることになりますが、広大な湖の場合は超広角で撮ってみるのも面白いと思います。基本的には標準域の焦点距離がカバーできていると、リフレクションなどは比較的撮影しやすいと思います。
 
 またフィルターは、筆者の場合は次のようにCPLフィルターとNDフィルターの2種類を用途によって使い分けています。

CPLフィルター

湖、沼で水鏡・リフレクションを撮影する際は、CPLフィルターで水面の反射を調整すると良いです。鏡面のように完全に反射させることもできますが、反射を抑えてあえて水中を少し見せたり と、表現を変えることができるのでおすすめです。

NDフィルター

NDフィルターは日中に水面を止めて撮るような表現をしたい場合に、数分間の長時間露光をするために使用しています。

■撮影機材:ソニー α7R III + ソニー FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:マニュアル露出・59mm・F14・ISO100・121秒

 茨城県の霞ヶ浦で撮影した一枚。夕暮れ時の空が水面にも映り込んで色づいていました。約2分の長秒撮影を行うために、ND 1000等の段数が大きいNDフィルターを使って撮影しています。

さいごに

 今回は筆者なりの湖や沼の風景写真の撮影方法をお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。 湖や沼は他の撮影場所と比べて比較的アクセスがしやすい場所にあるため、誰でも割と手軽に 撮影を行える機会が多いように思います。
 
 湖や沼で風景撮影をする機会があれば、是非この記事の内容も参考にしていただけると嬉しいです。

 

齋藤朱門さんの撮影テクニック連載記事はこちら

・丘や山での撮影テクニック|齋藤朱門
https://shasha.kitamura.jp/article/483573391.html

・星景写真の撮影テクニックと機材|齋藤朱門
https://shasha.kitamura.jp/article/483154709.html

・滝・渓流での撮影テクニック|齋藤朱門
https://shasha.kitamura.jp/article/482531059.html

・海での風景撮影テクニック|齋藤朱門
https://shasha.kitamura.jp/article/484586478.html

・冬の風景撮影とテクニック|齋藤朱門
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・望遠ズームレンズで切り取る風景撮影の楽しみ方|齋藤朱門
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・標準レンズで切り取る風景撮影の楽しみ方|齋藤朱門
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・広角レンズで切り取る風景撮影の楽しみ方|齋藤朱門
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・霧と雲海の風景写真の楽しみ方|齋藤朱門
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・森の中の風景写真の楽しみ方|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/sony/489506808-20220705/

 

■写真家:齋藤朱門
宮城県出身。都内在住。2013年カリフォルニアにて、あるランドスケープフォトグラファーとの出会いをきっかけにカメラを手に取り活動を始める。海外での活動中に目にした作品の臨場感の素晴らしさに刺激を受け、自らがその場にいるかのような臨場感を出す撮影手法や現像技術の重要性を感じ、独学で風景写真を学ぶ。カメラ誌や書籍での執筆、Web等を通じて自身で学んだ撮影方法やRAW現像テクニックを公開中。

 

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