SONY α1 II レビュー|「Ai」によるオートフォーカスの進化を得たフラッグシップ機
はじめに
2024年12月13日に新たに発売されたソニーのフラッグシップ機「α1 II」を、発売前にお借りすることができたので、早速筆者の持っている「α1」からどう進化したのかを徹底的に試してみました。初代「α1」が発売されたのが2021年3月19日で、約2年半を経て「α1 II」に進化しました。
初代「α1」が発売になった時の衝撃はなかなかのものでしたが、「α1 II」も要望の多かった「AIプロセッシングユニット」や「プリ撮影」機能などが搭載され、フラッグシップ機として万全のカメラに進化した感じです。今回は、進化のポイントの「AIプロセッシングユニット」によるオートフォーカスの進化や新機能などをメインに「α1 II」の魅力とその写りをご紹介します。
α1 IIの進化ポイント
「α1 II」は、「α1」と画像処理エンジンやセンサーは同じもので有効画素数5010万画素の高画素機のカメラです。「αII」と「α1」基本的性能の簡単な仕様の比較を一覧にしてみました。
センサーの変化はありませんが、AIプロセッシングユニットの搭載によるリアルタイム認識AFの進化が一番大きな進化ポイントになっています。
α1 II | α1 | |
発売日 | 2024年12月13日 | 2021年3月19日 |
センサーサイズ | フルサイズ | フルサイズ |
センサー | Exmor RS CMOSセンサー | Exmor RS CMOSセンサー |
有効画素数 | 静止画時 : 最大約5010万画素 動画時 : 最大約4200万画素 |
静止画時 : 最大約5010万画素 |
画像処理エンジン | BIONZ XR | BIONZ XR |
手ブレ補正 | 光学式5軸ボディ内手ブレ補正 (中央8.5段、周辺7.0段) |
光学式5軸ボディ内手ブレ補正5.5段 |
リアルタイム認識AF | オート/人物/ 動物/鳥/昆虫/車・列車/飛行機 | 人物/ 動物/鳥/ |
フォーカス検出方式 | ファストハイブリッドAF (位相差検出方式 / コントラスト検出方式) |
ファストハイブリッドAF (位相差検出方式 / コントラスト検出方式) |
測距点数 | 位相差検出方式:759点 コントラスト検出方式:425点 |
位相差検出方式:759点 コントラスト検出方式:425点 |
検出輝度範囲 | EV-4 – EV20 (ISO100相当、F2.0レンズ使用、AF-S時) |
V-3 – EV20 (ISO100相当、F2.0レンズ使用)/ |
ファインダー | 1.6 cm (0.64型)電子式ビューファインダー (Quad-XGA OLED) | 1.6 cm (0.64型)電子式ビューファインダー (Quad-XGA OLED) |
ファインダー総ドット数 | 9 437 184 ドット | 9 437 184 ドット/ |
最大ファインダー倍率 | 約0.90倍 | 約0.90倍 |
モニターサイズ | 8.0 cm (3.2型) TFT駆動 | 7.5 cm (3.0型) TFT駆動 |
モニタードット数 | 2 095 104 ドット | 1 440 000 ドット |
RAW出力形式 | ロスレス圧縮・非圧縮 | ロスレス圧縮・圧縮・非圧縮 |
記録メディア | SLOT1: SD (UHS-I/II対応)カード、CFexpress Type Aカード用マルチスロット SLOT2: SD (UHS-I/II対応)カード、CFexpress Type Aカード用マルチスロット |
SLOT1: SD (UHS-I/II対応)カード、CFexpress Type Aカード用マルチスロット SLOT2: SD (UHS-I/II対応)カード、CFexpress Type Aカード用マルチスロット |
連続撮影 | AUTO/電子シャッター: Hi+: 最高約30コマ/秒、 メカシャッター: Hi+: 最高約10コマ/秒 |
電子シャッター: Hi+: 最高約30コマ/秒、 メカシャッター : Hi+: 最高約10コマ/秒 |
バッテリー | NP-FZ100 | NP-FZ100 |
バッテリーチャージャー | BC-ZD1 | BC-QZ1 |
静止画撮影可能枚数 (CIPA規格準拠) |
ファインダー使用時:約420枚 液晶モニター使用時:約520枚 |
ファインダー使用時:約430枚 液晶モニター使用時:約530枚 |
質量(g) (バッテリーとメモリカードを含む) |
743g | 737g |
ボディサイズ | 136.1(W)x96.9(H)x82.8(D) | 128.9(W)x96.9(H)x80.8(D) |
USB端子 | USB Type-C | USB Type-C |
ボディ形状は全体的な見た目の変化は感じにくいのですが、グリップまわりの形状が変更され従来機よりも指のフィット感は向上しています。
「α1」には無かった自在な調整ができる4軸マルチアングル液晶モニターが「α1 II」に搭載されました。チルトとバリアングルの両方の特長を合わせ持つ4軸マルチアングル機構は非常に使い勝手高い液晶モニターになっています。
特に「α1」ではタテ位置でのローアングル撮影は苦手でしたが、「α1 II」では4軸マルチアングルモニターのおかげで、ローアングルでも非常に楽な姿勢で撮影をする事が可能になりました。また、4軸マルチアングルモニターは液晶面を反転することができるので、カメラを使用しないときや移動時には液晶面を隠す事ができ液晶を保護する事もでき安心度が高まります。
カメラ上部では「α1」には無かった「静止画/動画/S&Q切り換えダイヤル」が独立したスイッチとして装備され、動画の撮影切り替えもスムーズに対応できるようになっています。
α1 IIには新たにドライブモードダイヤルを、メニューやカスタムボタンから切り換えられるモードマーク「*」が追加されました。このモードを選択しFnメニューやカスタムボタンにドライブモードを割り当てておけば、左手でレンズをホールドしながら右手でドライブモードの切り換えが可能になりました。ドライブモードを頻繁に変更するユーザーには便利な機能です。
もともと基本性能が非常に高かった「α1」だったので、「α1 II」で画期的な変更点が加えられた感じではありませんが、AIプロセッシングユニットによる被写体認識AFの搭載や、プリ撮影機能、4軸マルチアングルモニターの搭載により、正常進化をしたモデルと言えます。
Aiによる進化したオートフォーカス性能
「α1 II」は「α1」にはなかった「AIプロセッシングユニット」を搭載したことで人物の骨格や姿勢などの詳細に基づいた人物認識に加え、動物や昆虫、乗り物など、人物以外の被写体の高精度な認識にも対応しました。また「α1」に対して人物の瞳の認識性能が最大約30%向上しており、オートフォーカス性能が大幅に進化しました。
「AIプロセッシングユニット」搭載の機種では静止画と動画において、[人物]、[動物]、[鳥]、[昆虫]、[車/列車]、[飛行機]に対応していましたが、「α1 II」では新しい[オート]モードが追加され、カメラが自動で被写体を認識し便利性が高まりました。
「動物」・「鳥」の被写体認識には「認識部位」が追加されたことで、より高度なユーザーの好みに合わせた設定が可能になった点は「α1 II」のオートフォーカスの進化のポイントです。
実際に「α1 II」を持ち出し、オートフォーカスの動きがわかるファインダー情報を動画にしてみました。新たに追加された「オート」でも高度に被写体認識ができており、常時設定に非常に有効なモードであると感じました。
α1 IIのオートフォーカスの進化はAIプロセッシングユニットが大きなポイントになっていますが、使い勝手の部分では「フォーカスエリア」の設定の細分化やカスタマイズ可能なフォーカスエリアの追加も見逃せないポイントです。
「フォーカスエリア」の「スポット」では、「α1」には無かった「XL」・「XS」が追加されています。「XS」を選択することで、手前にある枝などを避けて被写体にフォーカスを合わせやすくなります。
またカスタマイズ可能なフォーカスエリアが追加され、被写体やシーンに応じて、サイズのみならず縦横のアスペクトを任意に変更できるようになっています。
撮り逃さない「プリ撮影」モード
「α1 II」には、シャッターボタンを押す前の瞬間をさかのぼって記録できる「プリ撮影」機能が新たに搭載されています。「プリ撮影」機能は、シャッターボタンを半押ししながら被写体を捉えた後に全押しすると最大1秒前までの連写画像を記録することができ、さかのぼる時間も0.03秒から最大1秒前まで細かく設定できる機能です。鳥などが飛び立つ瞬間に全押しが間に合わなくても、シャッターボタンを全押しする前にさかのぼって撮影することができます。また、RAWでもクロップされることなくAF/AE追随最高約30コマ/秒の連続撮影ができるので、高画質なまま多くの瞬間をさかのぼって記録できる魅力的な機能です。
他のメーカーにもこの「プリ撮影」機能は搭載されている機種がありますが、他メーカーとの大きな違いはRAWデータでも高画素のまま最高約30コマ/秒で記録できるというのが大きなポイントです。
決定的な瞬間を撮り逃さないという点においてはこの「プリ撮影」は非常に有効的な機能で、「α1」から大きく進化したポイントです。実際に使ってみると非常に有効な点を実感できましたが、常時使う機能ではないとも感じました。プリ撮影機能を常時使用してしまうと、あまりにも撮影枚数が多くなってしまい、膨大なデータの後処理に困ってしまいます。また「プリ撮影記録時間」も長ければ良いという感じではないので、自分のシャッタータイミングに合わせた設定時間の調整が必要と感じました。
「プリ撮影」を多用すると撮影枚数の問題以外にも、バッテリーの消耗問題も発生します。プリ撮影をしている間は、シャッターを切らなくても常に撮影データをバッファーに書き込んでいる状態が発生するのでその分バッテリーの消耗が進みます。結果プリ撮影を多用すると、従来の撮影よりもバッテリーが持たない状況が発生する場合があります。プリ撮影を積極的に使用し撮影する場合は、予備メディア・予備バッテリーを準備しておくと良いでしょう。
α1 IIで静止画撮影
「α1 II」でいろいろな被写体を撮影してみました。AIプロセッシングユニットによる被写体認識AFは動く被写体においては、非常に便利で快適に撮影することができました。
被写体認識で決まった被写体を撮影する時には、その項目になった設定をすれば良いのですが、例えば動物園で「鳥・動物・人物」などの撮影をするような場合は「オート」の項目が有効的でとっさの撮影にも柔軟に対応することが可能でした。
上の写真の3点は「α1 II」の高画素を活かしAPS-Cクロップ撮影をしたものです。フルサイズで有効画素数約5010万画素ということで、APS-Cクロップ撮影しても約2100万画素で記録できるので積極的にクロップ撮影も可能です。
最後の写真は、焦点距離600mmに2倍のテレコンを装着し焦点距離1200mmにして、さらにクロップ撮影で最終的には焦点距離1800mm相当撮影しています。高画素機でもある「α1 II」ではこんな対応をする事も可能なので撮影の幅が大いに広がります。この状態でもオートフォーカスは非常に高い精度で被写体を捉えています。
α1 IIで動画撮影
「α1 II」の動画性能に関して「α1」からの変更点は、「ダイナミックアクティブモード」の搭載。「ダイナミックアクティブモード」は、従来の「アクティブモード」モードよりも手ブレ補正効果を30%以上向上しています。またリアルタイム認識AFが動画撮影中のフォーカスもサポートし、「α1」より認識対象の被写体も拡大しました。「α1 II」のセンサーは「α1」と同じセンサーを使用している事から、変更点としてはオートフォーカス性能や被写体認識、手ブレ補正の部分のみになった事が想像できます。
「α1」からの大きなスペックアップありませんが、個人的にはボディ上部に「静止画/動画/S&Q」切り換えダイヤルが備わった事で、静止画・動画撮影の切り替えがしやすくなった点がポイントです。
まとめ
「α1 II」は発表後11月26日から予約を受け付けていましたが、予想を上回る注文があった人気ぶりです。「AiAF」や「プリ撮影」機能を待っていたユーザーが多かったのではないでしょうか。
今回先行して「α1 II」を使用させて頂きましたが、やはりオートフォーカスの進化においては非常に使い勝手が向上し被写体認識の精度もあがり撮影して安心感が増しました。その機能を待っていたユーザーにとっては、期待を裏切らない進化をした「α1 II」に仕上がっていると言えるでしょう。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師