ソニー FE 85mm F1.4 GM II | 至高の描写力と洗練された操作性

Amatou
ソニー FE 85mm F1.4 GM II | 至高の描写力と洗練された操作性

イントロダクション

ソニーが2024年9月20日に新たにリリースしたFE 85mm F1.4 GM IIは、ポートレート撮影のための最先端のレンズとして登場しました。ポートレート撮影における理想的な焦点距離の1つとして85mmが選ばれる理由は、被写体と背景の自然な分離感にあります。しかし、FE 85mm F1.4 GM IIはその枠を超え、より幅広い撮影シーンに対応する多用途レンズとして設計されています。本記事では、FE 85mm F1.4 GM IIの光学性能などの技術的特徴から、作例を用いながら様々なシチュエーションでの適用性について深く掘り下げていきます。

FE 85mm F1.4 GM IIの使用感と光学的卓越性

使用機材:Sony α7R V + FE 85mm F1.4 GM II
設定:ISO200 85mm f1.4 1/200秒

FE 85mm F1.4 GM IIは、従来機種よりも約178g軽量化され、総重量は約642gにまで抑えられています。この軽量化により、長時間の撮影でも疲労感を感じにくく、手持ち撮影での機動性が向上しました。しかし、その軽量化は堅牢性を犠牲にするものではなく、防塵・防滴設計により、屋外での撮影でも安心して使用できる信頼性を実現しています。さらに、最前面のレンズにはフッ素コーティングが施されており、指紋、ほこり、水滴、油、泥などの付着を防ぎ、万が一付着しても簡単に取り除くことができます。

FE 85mm F1.4 GM IIは、2枚のXA(extreme aspherical)レンズと2枚のED(特殊低分散)ガラスを採用した光学設計により、従来のレンズとは一線を画する描写力を実現しています。この組み合わせにより、全ての収差が大幅に補正されており、特に色収差や球面収差が見事に抑えられています。

XAレンズは、研磨が非常に難しい形状の非球面レンズの表面を、0.01ミクロン単位という高い精度で管理することで生まれたレンズであり、滑らかで自然なボケ味を提供します。これにより、ポートレート撮影時には被写体の立体感が強調され、背景の美しいぼかしが得られます。さらに、EDガラスは、紫外線や赤外線の影響を最小限に抑えることで、鮮やかで忠実な色再現を可能にしています。

これらのレンズ素材の選定が光学性能に与える影響は単に画質の向上にとどまりません。例えば、XAレンズは通常の非球面レンズよりも表面精度が高いため、光の乱反射を防ぎ、よりシャープなイメージングを実現します。この特性は、多くのディテールを求められるシーンで特に有効です。

参照元:https://www.sony.jp/ichigan/products/SEL85F14GM2/feature_1.html#L1_80

次にFE 85mm F1.4 GM IIのMTF(Modulation Transfer Function)曲線を見てみましょう。その光学性能の卓越性を具体的に示しています。中心部の解像度は極めて高く、画面周辺においてもコントラストが維持され、空間周波数が高いため細部まで忠実に再現します。この特性により、例えばポートレート写真でのモデルの肌の質感や髪の毛の一本一本、建築写真での直線的な構造物や、風景写真での木々や岩肌のテクスチャの表現が圧倒的にクリアになります。

使用機材:Sony α7R V + FE 85mm F1.4 GM II
設定:ISO160 85mm f1.4 1/2000秒

MTF曲線から読み取れるもう一つの重要なポイントは、FE 85mm F1.4 GM IIが持つ異なる周波数に対する耐性です。これは、あらゆる光条件下でシャープな画像を保ち、特に逆光や暗所での撮影において、その性能が顕著に現れます。したがって、このレンズは撮影者が求めるさまざまな状況においても安定して優れた表現を映し出します。

また、FE 85mm F1.4 GM IIに搭載された2基のXD(Extreme Dynamic)リニアモーターは、従来のレンズを超える迅速かつ静かなオートフォーカス性能を実現しています。AF速度が従来モデルに比べて最大約3倍に向上しており、ポートレートや動体撮影において決定的な瞬間を捉えることがより簡単になりました。

FE 85mm F1.4 GM IIの様々なシチュエーションにおける適用性

使用機材:Sony α7R V + FE 85mm F1.4 GM II
設定:ISO100 85mm f1.4 1/5000秒

被写体の特性を最大限に引き出し、シーンの魅力を余すことなく伝えるためには、使用するレンズの性能が大きな役割を果たします。FE 85mm F1.4 GM IIはその高い光学性能と操作性により、多様なシーンにおいてその真価を発揮します。

特にこのレンズは、優れた解像力と色再現性、美しいボケ表現を兼ね備えており、様々なシチュエーションで独自の描写力を備えています。高精度なオートフォーカス機能と大口径F1.4の明るさを持つことから、暗所や動きのあるシーンでも迅速かつ正確なピント合わせが可能であり、様々なシチュエーションに適用することができます。

また、背景のぼかしや被写体の立体感を強調する効果により、視覚的なインパクトを与えながらも、シーンの細部に至るまでシャープでクリアな描写が可能です。このことから、FE 85mm F1.4 GM IIは、ポートレート撮影をはじめ、建築、夜のスナップ写真など、さまざまな撮影ジャンルにおいて多様な表現をサポートする優れたレンズであるといえます。

いずれのシーンにおいても、レンズの性能に依存する部分が非常に大きくなります。特に背景の美しいボケ味や被写体のシャープな描写が求められるシチュエーションでは、レンズの描画能力が写真の完成度に直結することが多々あります。そこで、次の項目からは、このFE 85mm F1.4 GM IIがどのようなシーンでその描写性能を活かし、適用性を持つのかを、具体的なシチュエーションごとに見ていきたいと思います。

日中のポートレート撮影におけるFE 85mm F1.4 GM IIの効果

まずはクローズアップしたポートレート撮影での作例を見てみましょう。

使用機材:Sony α7R V + FE 85mm F1.4 GM II
設定:ISO200 85mm f1.4 1/200秒

夕暮れの街中でモデルさんを寄りで撮影したポートレート写真で、F1.4の開放で撮影しました。FE 85mm F1.4 GM IIの特性を活かしたこの写真は、背景の柔らかなボケとシャープな被写体の対比が非常に魅力的だと言えるでしょう。

まず注目すべきは、モデルさんの顔のディテールが非常に緻密に描写されている点です。肌の質感や髪の一本一本が非常に精細に表現されているのがわかると思います。

MTF曲線のデータの通り、F1.4開放時でも写真からは非常に高い描写力が確認できます。モデルさんの顔や髪の毛の描写において、歪みやぼやけは見られず、しっかりとシャープネスが保たれています。また、背景の光源やオブジェクトが滑らかなボケとして描かれており、自然な立体感を与えています。このため、主題に視線を集中させる効果が際立っています。

さらに、色収差がほとんど見られないこともこのレンズの大きな特長です。高いコントラストを保ちながら、モデルさんの顔の輪郭や髪のディテールがきわめて鮮明に描かれており、自然な肌の色が忠実に再現されています。この特性は、ポートレート撮影においてモデルさんの表情や質感をより豊かに表現するために重要です。

この作例ではFE 85mm F1.4 GM IIの光学性能の高さと、背景の処理能力が遺憾なく発揮されています。

使用機材:Sony α7R V + FE 85mm F1.4 GM II
設定:ISO200 85mm f1.4 1/200秒

続いてモデルさんを引き気味に撮影したポートレート写真の作例を見てみましょう。設定は先ほどと同じく開放F1.4で撮影し、FE 85mm F1.4 GM IIの特長である大口径の明るさと美しいボケを効果的に使うことを意識しました。

この作例の特徴は、モデルさんだけでなく、風景全体の美しさを活かしている点にあります。モデルさんの背後に広がる街並みが適度にぼけて、街の雰囲気や背景の情景が写真全体のコンテキストを強調しています。この効果により、単なるポートレート写真ではなく、ストーリー性のある写真が生まれています。

FE 85mm F1.4 GM IIの優れたボケ性能により、背景の複雑な情報を柔らかくぼかしつつ、モデルさんの存在感を際立たせています。背景には看板の光や街灯が見えますが、それらが滑らかにぼけることで、写真全体に柔らかい雰囲気をもたらし、モデルさんが目立つ形に仕上がっています。XAレンズの使用により、ボケのエッジがなめらかで、背景の光源が美しい円形で描かれているため、視線が自然に引き寄せられるのがわかります。

この作例では、FE 85mm F1.4 GM IIの色再現性の高さも際立っています。モデルさんの服の黒と背景の赤い提灯の光が鮮やかに描かれており、暗所でも十分なコントラストとディテールを保っています。また、色収差がほとんど見られないため、背景の色がくすむことなく、クリアで印象的な描写が実現されています。

夜のポートレート撮影におけるFE 85mm F1.4 GM IIの効果

次は、夜のポートレート撮影での作例を見てみましょう。こちらもF1.4の開放で撮影しております。

使用機材:Sony α7R V + FE 85mm F1.4 GM II
設定:ISO800 85mm f1.4 1/1250秒

街の光が背景に広がる中で、モデルさんの存在感を際立たせる構図を意識しました。F1.4の開放値を使用し、背景の点光源が柔らかなボケとなり、モデルさんの表情が浮かび上がるように描写されています。FE 85mm F1.4 GM IIの大口径とその光学性能の高さが、暗所での撮影においても際立つ描写力を発揮している一枚です。

この作例の狙いは、都市の夜景という動的で雑然とした環境の中で、モデルさんの静かな表情を際立たせることです。FE 85mm F1.4 GM IIの高速で正確なオートフォーカス機能が、街中の動きのあるシーンでもモデルさんの目にピントを合わせることで、視線の引きつけを効果的にしています。特に暗所での撮影であっても、ピントの正確さが保たれるため、目の輝きや肌のテクスチャが明瞭に再現されています。

さらに、FE 85mm F1.4 GM IIの色再現性とコントラスト性能により、モデルさんの顔に当たる街灯や看板の光が自然な色調で表現されています。色収差がほとんど見られず、背景の光源もクリアで鮮やかに描写されるため、モデルさんが背景に埋もれず、しっかりと引き立っています。

使用機材:Sony α7R V + FE 85mm F1.4 GM II
設定:ISO100 85mm f1.4 1/8秒

こちらの作例は、夜空を彩る花火を背景に、浴衣姿のモデルさんの後ろ姿を捉えたものです。花火を見上げるように立ち、その背中越しに広がる夜空の花火が色彩豊かに輝いています。この作例の狙いは、静と動のコントラストを活かし、花火という動的で華やかな要素とモデルさんの静けさを対比的に描き出すことです。

ここでのFE 85mm F1.4 GM IIの効果は、繊細な光の階調表現にあります。花火の細かい光の粒子や色彩のグラデーションが、開放F1.4での撮影でも豊かに再現され、背景にある花火の迫力を損なうことなく、幻想的な雰囲気を生み出しています。特に、モデルさんの背後にある花火が美しいボケとして描かれており、その輝きが幻想的な空間を演出し、写真全体に動きと深みを与えています。

さらに、FE 85mm F1.4 GM IIの軽量な設計は、手持ちで長時間の花火撮影を行う際にも、撮影者に疲労を感じさせない機動力を提供します。このため、瞬間的なシャッターチャンスを逃すことなく、モデルさんと背景の花火の調和を捉えることができました。また、花火の光を背景にモデルさんのシルエットを際立たせるため、レンズの高い解像力が欠かせない要素となっています。これにより、浴衣の質感やシルエットが際立ち、作品に情緒を加えています。

建築撮影におけるFE 85mm F1.4 GM IIの効果

使用機材:Sony α7R V + FE 85mm F1.4 GM II
設定:ISO100 85mm f8.0 1/500秒

続いて建築写真におけるFE85mm F1.4 GM IIの作例も見てみましょう

こちらは、現代的な建築物の外壁を捉えた作例で、規則的なパターンと陰影が印象的に表現されています。F8.0という絞り値で撮影されており、FE 85mm F1.4 GM IIの光学性能を最大限に活かした細部までシャープな描写が特徴です。

この作例の狙いは、建築物の構造的な美しさを強調し、素材とデザインの独自性を浮き彫りにすることです。

MTF曲線を見ると、F8.0でのFE 85mm F1.4 GM IIの性能は極めて高い数値を示しています。これは、被写体のエッジ部分のシャープさやコントラストが、レンズの中心から周辺までほとんど変わらないことを意味します。その結果、建築物の幾何学的なラインやパターンが歪むことなく、正確かつ均一に再現されています。高いMTF曲線の値が示すこのレンズの性能が、建築物の細かなディテールから全体の形状までをリアルに描き出すことを可能にしています。

使用機材:Sony α7R V + FE 85mm F1.4 GM II
設定:ISO100 85mm f8.0 1/400秒

こちらは異なる建築物が交差する地点を捉えた作例で、角度や素材の違いが生み出す視覚的なダイナミズムを感じさせます。この写真もF8.0の絞りで撮影しており、FE 85mm F1.4 GM IIの高い解像力が建物の微細なディテールを忠実に描写されています。

この作例の狙いは、建築物の構造とその周囲の空間との相互関係を強調することにあります。異なる質感と色調の建物が、視線を引き寄せる要素として作用し、街の中の独特な風景を作り出しています。F8.0という絞り値は、十分な被写界深度を確保しながら、全体に均一なシャープネスをもたらし、異なる建物の交差する線や影のディテールを正確に表現しています。

また、FE 85mm F1.4 GM IIの色再現性の高さにより、建物の色調の違いが微妙に表現され、写真全体に調和と緊張感をもたらしています。レンズの収差補正機能が歪みを最小限に抑え、建物の直線が自然に描かれているため、視覚的な歪みがなく、建築物の構造的な強度をより強調しています。

夜のストリートスナップにおけるFE 85mm F1.4 GM IIの効果

使用機材:Sony α7R V + FE 85mm F1.4 GM II
設定:ISO1000 85mm f1.4 1/200秒

FE 85mm F1.4 GM IIは夜のストリートスナップでもその真価を発揮します。開放F1.4で撮影することで、FE 85mm F1.4 GM IIの大口径設計がもたらす豊かなボケと高い描写力を生かすことを意識しました。夜の雰囲気をそのままに、街の喧騒と静けさを同時に表現することがこの作品の狙いです。

まず、写真全体にわたる暗部と明部のコントラストが非常に鮮明で、街灯や提灯の明かりが程よく強調されています。FE 85mm F1.4 GM IIの優れたコーティング技術によって、光源周りのフレアやゴーストが抑えられ、クリアで引き締まった描写が可能になっています。街の奥行き感をしっかりと表現しながらも、夜の独特な光の反射が自然に捉えられているため、シーンにリアリティを与えています。

この作例の魅力は、狭い路地裏のようなシチュエーションでの動的な瞬間を、あえて静かに捉えた点にあります。レンズのF1.4の明るい絞りを利用することで、光量が少ない環境でも、シャッタースピードを確保しながら手持ちで撮影できるという利点があります。これにより、人物の動きや周囲の動的な要素をブレずに描写し、ストリートスナップに求められる瞬間を切り取る力が最大限に発揮されています。

さらに、FE 85mm F1.4 GM IIの浅い被写界深度が、画面前景の赤い提灯や店先の光を印象的にぼかし、背景にいる人物たちを自然な形で際立たせています。ボケの質が滑らかで、背景と前景の要素が混ざり合うことなく、独立した存在感を持っています。このことで、写真にリズムと深みを持たせる効果が生まれています。

まとめ

使用機材:Sony α7R V + FE 85mm F1.4 GM II
設定:ISO100 85mm f1.4 1/15秒

FE 85mm F1.4 GM IIは、光学性能、設計の洗練さ、そして多用途性の観点から、非常に優れたレンズといえます。F1.4の明るい開放値による美しいボケ表現と、最新のレンズテクノロジーが生み出す高い解像力により、ポートレートから建築写真まで、幅広いシチュエーションでその力を発揮します。F8.0においても、MTF曲線が示す高い数値に裏付けられた、卓越した描写性能が建築写真などにおける微細なディテールの再現を可能にし、写真全体の深みと精緻さを高めています。

さらに、FE 85mm F1.4 GM IIは、夜間や低光量下でも高い描写力を維持し、色収差やフレアを効果的に抑える設計が施されています。これにより、どのような光の条件下でも、クリアで鮮明な画像を得ることができます。結果として、静物でも動的なシーンでも、その瞬間の美しさや意図を忠実に切り取ることができます。

総合的に見て、FE 85mm F1.4 GM IIは、その光学性能の高さと表現力を両立させたレンズであり、幅広い層のフォトグラファーにとって卓越した選択肢と言えるでしょう。その多用途性と信頼性により、さまざまな撮影条件下でも期待を裏切らず、撮影者を最大限にサポートするレンズです。

 

 

■写真家:Amatou
1995年千葉県生まれ。非現実的な都市景観の表現をコンセプトとしたファインアートフォトグラフィーをメインに撮影している。その独特な世界観が評価され、International Photography Awards、Sony World Photography Awardsをはじめ、国際的写真コンテストで数多くの上位入賞を果たす。

 

 

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