スナップで街めぐり。一瞬の情景を愉しもう。Vol.14|街のコスモス
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はじめに
スナップだけを撮っていると思われているようだが実は花を撮るのも好きで、写真を始めたころは花や葉っぱを撮ることのほうが多かった。
その中でも一番撮っているのは秋のコスモス。ここ10年くらいは望遠の明るいレンズでボケを綺麗に見せる撮り方が定番となっているが、なかなか個性が出せず悩んでいる方も多いと思う。その中で私は現地でどんなことを考え、工夫しながら撮っているか、その方法を紹介したいと思う。
走りながら
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■撮影環境:1/40秒 f/22 焦点距離30mm ISO50
高原で走る車の助手席から撮ったふうに見えるが、これ実は30mmのレンズで思いっきり絞ってシャッタースピードを遅くし、カニ走りして手前のコスモスを流している。人が少ない近所の畑ならではの撮影方法。青空に綺麗な形の雲があるとこれをやりたくなる。28mm付近のレンズだと印象的なコスモスはなかなか撮りづらいと思うが、はまるとお気に入りの一枚が撮れると思う。
風の強い日
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■撮影環境:1/5秒 ISO50
花を望遠で撮るとき、風があると話にならないことが多いが、ここまで強く吹くとこう撮りたくなる。コツは左右に揺れている時、花が左側に振り切った時からシャッターを切ること(右でもよい)。中途半端な位置からシャッターを切ると花の原型がわからなくなる。あと、密集度を高めるためにカメラは高めの位置から撮影してみた。
雨の夜
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■撮影環境:1/400秒 f/2.8 焦点距離200mm ISO4000
秋の肌寒い夜の雨。普通の人は撮りに出かけるなんて思いもしないだろう。だが帰り道に雨でうなだれているコスモス一輪を見かけて、家に戻って望遠レンズをセットして撮ることに。実はこの場所は自宅隣の小道で、雨でも気合を入れずさらっと撮れる状況だったりする。
今回の場合は、そういえばこの状況でのコスモスって見たことないなって思うことから始まった。この撮影で一番気を付けたことは、街灯を黄色い月っぽく見せること。月に見える光は、少しでも左右にずれると口径食でレモンのような形になってしまうので、真ん中少し上に配置して下の反射をこのように段々となるよう調整。コスモスはその光に被らないように。
スナップの時も気を付けているが、レンズを振って調整しない。光軸は真っすぐなまま、カメラの位置を上下左右に微調整する。露出は暗い中でも花びらの色が出るぎりぎりの-0.7段。最後に花びらの先にピントを合わせてシャッターを切った。
自転車廃棄場
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■撮影環境:1/10001秒 ISO100
花が少ない夏の終わり間際に、いい被写体となるのがキバナコスモス。花畑で撮るのも良いが、このように捨てられているものとの組み合わせを見つけると撮らずにはいられない。前に柵があるので明るい望遠で狙ってみた。花に規則性がなく正解がなかなか見つからない場面だったが、手前に大きく車輪を入れることによって少し枠効果が出て、おさまりの良い写真となってくれた気がする。
猫じゃらしの中
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■撮影環境:1/5000秒 f/2.8 焦点距離200mm ISO100
この場所はコスモス畑から少し離れた雑草の中。日の出の一番良い時間はコスモス畑に集中してしまうところだが、少し落ち着いて周りを見渡すと、このようなめったに見られない光景に出くわすことがある。昼間だと絵にすることは非常に難しいが、逆光になると話は別。猫じゃらしをシルエットにして、コスモス一輪を引き立たせる。画面上部の淡い光はフードの先で太陽の光をぎりぎりのところで切って、こんなふうに写るよう調整している。なかなか見慣れないコスモス、こちらもお気に入りの一枚となった。
ゴミのネットの中
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■撮影環境:1/1250秒 ISO200
ゴミ捨て場のネットの中に一輪のコスモス。こんな場所だからこそ美しく感じられることが、写真を撮り続ける大事な要素なのだと思う。花の背中のように見える場所から撮って愛らしさを表現し、周辺光量をかなり落とすことによって一輪を際立たせてみた。
水滴のコスモス
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■撮影環境:1/80秒 f/16 焦点距離26mm ISO100
詳細な撮り方は長くなるので割愛するが、用意するのはラップと両面テープと100円ショップで売っている買い物かご。用意するのが面倒なので、コスモスの時期に空模様がよかった時だけやる撮影方法。教室では実演するので、もしよろしければご参加ください(笑)。
浮かび上がるコスモス
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■撮影環境:1/400秒 ISO100
夜や夕方の暗い時間に真上から密集しているコスモスを撮ってみた。広角だと周辺に歪みがでてきておさまりが悪くなるので50mmの明るいレンズで。マニュアルフォーカスレンズなので、カメラを上下にずらしながら構図を選ぶ。暗い時間に撮るのは花だけを浮かび上がらせたいからだ。
水溜まり
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■撮影環境:1/400秒 f/2.8 焦点距離20mm ISO100
コスモス撮影の一番の条件と言えば雨上がりの朝。キラキラした水滴も撮れるが、このように水溜まりにだけレンズを向けた撮り方もある。大きな水溜まりだと狙いがわかりづらいが、このように小さい水溜まりが沢山あると、ここにこの花入れてとか想像力が膨らんでいく。もっと追い込めたとは思うが、こんな感じで落ち着いた。
ぐるぐる
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■撮影環境:1/8秒 f/22 焦点距離17mm ISO50
真ん中の花を狙いつつ、ズーミングをしながらカメラを回して撮ってみた。基本撮っている間は連写。それでも成功は100枚の中に一枚あるかないかぐらい。挑戦して撮るコスモスもシーズン中に是非一枚!
密集度MAXで
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■撮影環境:1/400秒 f/16 焦点距離200mm ISO2000
満開な時にどう表現すればよいか考えてこのように撮ってみた。200mmでF16、ISOは2000に上がってしまうが気にしない。密集度MAXで撮れてこちらもお気に入りに。
あとがき
今回の撮影場所はすべて自宅から徒歩圏内。大きなコスモス畑で明るい望遠レンズを使って撮る至高の一枚を狙うのもありだと思うが、いろんな場所でいろんな撮り方もある。街に溶け込んだコスモスはまた違った表情を見せてくれるので、別枠として撮ってみることをお勧めしたい。
■写真家:富久浩二
日々の通勤風景を主に、いつも見ている変わりばえのない、しかし二度とやって来ない一瞬の情景を大切にし、ちょこっと人が入った物語りのある写真をテーマのもとに、人びとの優しく楽しい感情が伝わる事を目標に日々撮影している。子供の頃の目線、何と無く懐かしさを感じて貰える様に、ライブビューを使った低い目線、思い切って背伸びをした様な高さからの撮影が特徴的。