スナップで街めぐり。一瞬の情景を愉しもう。Vol.20|荻窪
はじめに
JR中央線の中では特に大規模な施設がある場所でもないのでなかなか降車することはないと思うが、駅の周辺は他の沿線よりも比較的昭和の感じがする建物が残っていてたまに撮りに行きたくなる街だ。駅近くの再開発もそろそろ始まる気配があるので、今だけかもしれない、そんな街をどう撮ってきたか紹介したいと思う。
駅前商店街の風船
青と黄色とくればあとは赤。接近した被写体と遠方の被写体を撮るときは、どんなカメラを使っていてもシャッターを押す瞬間はマニュアルフォーカスにしている。基本置きピンでないとこの構図で撮るのは難しい。どんなカメラでもワンプッシュでフォーカスを切り替えられるように設定しておきたい。
教会通りの元クリーニング店前
この商店街で一番好きな、淡い水色の元クリーニング屋さんの建物。新しいガラスの反射では面白い写真はなかなか撮ることができないが、このような古い窓枠のガラスの反射は絵になってくれる。それぞれのガラス一枚に一人ずつ働く人を入れてみた。
駅近くの交差点
ここ数年いろんな街で見かけるようになった、透明な赤い消火器ケース。これにレンズを近づけてみると真っ赤な世界が広がっている。商店街の中にあることが多いのだが、ここは幹線道路沿いや横断歩道にもあったので、このように面白い写真になってくれたと思う。ここもやっぱりオートフォーカスは切って手前の消火器にピントが行かないようにしている。
雨の日、傘もあってお気に入りの写真になってくれた。いろんな街にあると思うので赤い透かしを狙ってみよう。
駅前携帯電話屋さんの風船
この色の風船があるのは一度歩いたときに記憶していた。そんななかピンクのパーカーのフードをかぶった人の自転車がやってきたので、この場所に駆け足で戻ってこの構図に。頭までピンクだったので絵になった一枚。
教会通りの電線
ごちゃごちゃした電線が好きでよく撮るのだが、お祭りの飾りと相まって凄いことになっていた。曇り空だったのでおどろおどろしい雰囲気に後処理。
それにしても不思議な飾り、数日後気になってもう一度行ってみたらなくなっていて残念。ゴールデンウイークの時期に行くと来年もあるかもしれない。
教会通りのクリーニング店の扉
鮮やかなグリーンに赤い紐、この2色だったから撮った一枚。色相環において反対にある色同士、色相の差が大きいためインパクトがあり、ダイナミックな印象を与えるので、いろんな色の補色を覚えておくといいかもしれない。紐がほつれているところもお気に入り。
アサヒ通り1
すでに再開発が始まっていて、半分ぐらい取り壊し済みな場所。ここも上の写真と同じく赤に緑、それぞれ関係のない人がうまい具合に横並びになった瞬間を狙ってみた。赤いジャケットの男性が、壁に左手を触れているところがワンポイントに。人のちょっとした仕草がある写真が好きだ。
アサヒ通り2
先ほどの緑の服の女性が通りの先を抜けていくところ。電光掲示板がストレスという文字になった瞬間と、少し右に斜めになっているところが見てほしいところだ。変化する看板の文字や絵との組み合わせで一気に写真の価値が上がることがあるので少し気にしてみよう。
立体駐車場の屋根
透ける物になぜか惹かれる事が多い。特に青、緑系だと写真としても静かな落ち着いた写真になってくれるので、撮れるチャンスがあればじっくり狙ってみる。この場面では一点光が漏れるところを強調したかったのでオールドレンズをチョイス。透明感がなくなるのは少し残念なところもあるが、強い光の周りの優しいフレアが味わいを深くしてくれる。
アサヒ通り裏
そろそろ取り壊しが始まりそうな建物の裏手に。青いトタンと木の部分と下の緑の配置に気をつけた構図。窓の位置、エアコンの切れたホース、雑草、茶色い地面辺りでまとめている。
あとがき
この街もこのように撮れるのは今年いっぱいかもしれない。再開発が終わるとほとんどの街はスナップを撮るにはつまらなくなることが多い。荻窪もそうなってしまうと思うので今残っているものを沢山写真に残したいと思う。
35、50mmと広めのレンズがなかったのでこの様に撮ってみたが、道幅が狭い場所が多いのでなるべく広角なレンズがあると良さそうだ。
■写真家:富久浩二
日々の通勤風景を主に、いつも見ている変わりばえのない、しかし二度とやって来ない一瞬の情景を大切にし、ちょこっと人が入った物語りのある写真をテーマのもとに、人びとの優しく楽しい感情が伝わる事を目標に日々撮影している。子供の頃の目線、何と無く懐かしさを感じて貰える様に、ライブビューを使った低い目線、思い切って背伸びをした様な高さからの撮影が特徴的。