スナップで街めぐり。一瞬の情景を愉しもう。Vol.22 |遊び心で撮る紅葉
はじめに
今回は秋を感じるスナップと、遊び要素が多めの小物を使った写真を選んでみた。
スナップは雪でも降らない限り、特に季節を意識して撮る事はそうそうないので、レンズを向けた先に秋の色があれば構図の一つとして考えるくらいだ。
小物を使った写真は小川や水たまりなどで使う事が多く、基本現場で思い付き、持っているものや落ちている物を駆使して撮る事が多い。
そんな遊び心のある紅葉の撮り方などを紹介したいと思う。
東京都北区 飛鳥山公園
公園内に展示してある古い都電の車両の中。そのままだと季節を感じるのが難しかったので、ガラスの外側に水で濡らしたモミジとイチョウ、桜の葉っぱを貼り付けてみた。小さな赤、黄と季節の色が追加されてお気に入りの写真となった。
この場面で撮るきっかけになったのは、逆光でガラス全体が光っていたので葉の色が出せると思ったから。
車両の中と分かるように、ハンドルも構図の中の大事な位置に入れている。
埼玉県飯能市 能仁寺
この一枚は今まで見たことがない瞬間、その場にいても自分だけが見られる景色を意識した。
青い瓦に紅葉が乗っかっていたらいいなと最初は思っていたが、基本葉っぱは倒れてしまうのでこのように撮る事はできない。
ぎりぎりの所に葉っぱを置いてみたら面白くなるなと思ったが、自然の風を待っていられなかったので遠くから息を吹きかけてみた。
運よくいい形で撮る事ができた。挑戦し成功した写真はやはりお気に入りとなる事が多い。
埼玉県 所沢航空記念公園のベンチ
モミジよりも少しだけ早く赤く色づくトウカエデの葉、形も可愛くて好きな葉っぱだ。
茎の部分にテープを使ってベンチの淵に貼り付ける。
メインの被写体は平面で周辺のボケは大きくしたいので、中望遠~200mm辺りを使い開放にするのがセオリーだ。
斜めだと葉の形を生かすことができないので、基本正面から撮ることが多い。
東京都府中市 多摩川の土手
歩いている時にいい感じの葉っぱを見つけるとしばらく持ち歩く癖があり、特に広角をつけている時はこんな感じでレンズの近いところに葉っぱをかざして、隙間の中に歩いている人などを入れることがある。
空を見上げたところに人がいる、逆光、広角を使っているなど条件があるが、そんな場面に出会ったら足元に落ちている葉っぱでもなんとかなることが多いので狙ってみよう。絞ると意図がはっきりした写真になる事が多い。
埼玉県新座市 平林寺
お寺の中の緑の苔の地面にモミジがいい間隔で落ちていた。
ここでモミジの葉を星に見立てて流れ星ふうにすると面白い写真になるかなと想像が膨らむ。
イメージ通りになるように数枚葉っぱを移動させて、横に流れたときに被らないようにした。 ISO100固定、F10、シャッタースピード1/6に設定し、一枚メインになる葉っぱを起点に、レンズを右に振って十数枚撮った中に使える写真があった。これも挑戦して撮る写真の一枚。
埼玉県 所沢航空記念公園 トウカエデとベンチ
航空公園は広葉樹の大木が多くあり、特に色づく秋が楽しく撮影できる。
その中でもお気に入りなのが大きなトウカエデとベンチがあるこの場所だ。毎年赤と黄色に染まる落ち葉がある時期に撮りに行く。
低い位置からだと落ち葉の面積が少なくなってしまうので、一脚を使って高い位置から超広角で。
ピントが合った位置の落ち葉の質感を出したいので、ミニチュアモードで撮ってみた。
埼玉県 所沢航空記念公園 モミジの写り込み
点光源にモミジの模様が写りこむ撮り方。
これも条件が複数あってなかなか撮るのが難しいが、晴れの日に噴水のある公園だと確率がぐっと上がる。
機材は望遠135~200mm辺りの大口径のレンズ、フィルター。フィルター部分の真ん中にモミジの葉っぱをテープなどで固定して開放にし、手前にメインとなる被写体を入れる。点光源が複数あると、このようにすべてにモミジの模様が入ってくれる。
レンズを覆ってしまうので全体の色がモミジの赤い色に引っ張られてしまい、鮮やかな写真にするのは難しいが、ぎりぎり使える写真になってくれた。
埼玉県 所沢航空記念公園 買い物かごとラップを使用
撮り方は説明すると長くなってしまうので詳細は割愛するが、買い物かご(市販品)とラップを使っている。
荷物が多くなってしまうので近所でないとなかなか難しいが、毎年撮り方を変え試行錯誤しながら撮っている。
ラップを広げて水滴を作り、その上に三枚の葉っぱをおいた。さらに空中に三枚の葉っぱを糸で吊り下げてみた。
開放で撮りたくなってしまう場面だが、この時はF18まで絞ってみたところ想像以上の絵になってくれた。
埼玉県 所沢航空記念公園 回し流し撮り
トウカエデの落ち葉の中に少し空間を作って、その中にモミジの葉を一枚。
遅めのシャたースピードで回転をさせると周辺が大きく流れてこのように写ってくれる。
何十枚もシャッターを切って一枚成功があるかないかの写真。
あとがき
今回は近所の公園で、普段見慣れない変わった撮り方の写真を選んでみた。
風景であっても瞬間や動きを意識してみると、特別な写真になってくれることが多い。
あと、現地についてみないと思いつかないことが多いが、軽く小物を事前準備していくと、普段見慣れないような面白い紅葉の写真が撮れると思う。
■写真家:富久浩二
日々の通勤風景を主に、いつも見ている変わりばえのない、しかし二度とやって来ない一瞬の情景を大切にし、ちょこっと人が入った物語りのある写真をテーマのもとに、人びとの優しく楽しい感情が伝わる事を目標に日々撮影している。子供の頃の目線、何と無く懐かしさを感じて貰える様に、ライブビューを使った低い目線、思い切って背伸びをした様な高さからの撮影が特徴的。