ソニー Sonnar T* E 24mm F1.8 ZAレビュー|歴史的なレンズには納得の魅力が備わっていた!
はじめに
ソニーの「Sonnar T* E 24mm F1.8 ZA」は、2011年12月に発売された初期の製品です。APS-Cセンサー用の広角単焦点レンズで、ソニーEマウントで初めてツァイスの名を冠した、歴史的に有名なレンズでもあります。今回は、本レンズをZV-E10に装着してスチールとムービーを撮影しました。
ドラマティックなボケ味
10年以上前のレンズとはいえ、さすがの神レンズ。ZV-E10との相性の良さもあるのでしょうが、ワンシャッター目からAFの速さとドラマティックなボケを味わえました。
本レンズは、35mm判換算では人間の目の見え方に近い36mmの焦点距離になるので、距離感が取りやすくスナップに最適です。開放F値は1.8で、開放時の描写は、派手にボケるという表現がピッタリ。イチゴですらドラマティックに見えます。
アウトフォーカス部の線をすべて滑らかにボカしたい方には、このボケは騒がしく感じるかもしれませんが、筆者にはこの派手なボケ具合が刺さりました。好みです。カメラの液晶で再生したときもですが、大きなモニターで見ると、また一層ドラマティックさが増してドキドキとさせられました。
逆光時にも素速く合うAF性能
絞りの浅いF1.8の開放撮影時でもAFの性能は高く、逆光でコントラストの低い被写体に対しても、スーッとピントが合いました。このボケ味を堪能したいので絞り開放、逆光での撮影が多くなりましたが、AFの迷いがほとんど見られないのには感心しました。
また、最短撮影距離が0.16mと短いので、もっと寄りたい!もっと大きくボカしたい!を叶えてくれるレンズでもあります。撮影時にはレンズフードを装着していましたが、ぶつかりそうなくらいまで近付けることは、接写好きな筆者として大きなメリットでした。
レンズ構成は、非球面レンズ2枚と特殊低分散ガラス1枚で構成された7群8枚で、絞り羽根枚数は7枚、円形絞りを採用しています。逆光撮影時には綺麗な玉ボケも出現しました。この玉ボケは、絞りを少しでも絞ると硬めになるので、ふんわり感を出すには開放での撮影がお勧めです。玉ボケを気にしないシーンでしたら、周辺の描写性能を上げるために少し絞って撮影すると、自然なシャープさが得られました。
ショート・ムービー
今回の動画は、沖縄の鍾乳洞「CAVE OKINAWA」で撮影しています。さまざまな形状の鍾乳石を見て歩けるこの鍾乳洞は、珍しくて縁起が良いと言われている紅白の鍾乳石が有名です。
シューティンググリップ「GP-VPT2BT」を使用して、手持ちでラフに撮影。暗いしコントラストの低い被写体ばかりのなか、本レンズはかなり頑張ってくれました。特に近接の描写が美しくて、鍾乳洞内のいろいろな被写体に、ぐっと寄りたくなってしまいました。
フォーカスブリージングは、カメラを静止している状況では感じられますが、パンしているときなど画面に動きがある状態ではそれほど違和感を感じず、自然な画角変化に留まっています。総じて言うと、ないとは言えないけど気持ちが悪いほどではないので、撮り方で抑制できる範囲です。
短い撮影最短距離と主張しすぎないデザインはテーブルフォトにもGOOD
撮影最短距離の短さと静かで素速いAFのお陰で、テーブルフォトは本当に撮りやすかったです。F1.8の大口径レンズにしては、主張しすぎないデザインとアルミニウム合金製の高級感ある外装も、レストランでテーブルの上にカメラを掲げやすくする一因ですね。側面の「ZEISS」のロゴも、ちょっぴり誇らしかったりします。
レンズの最大径は63mm、長さは65.5mm、重さは約225gと、最近のレンズと比べれば特出して小さい、軽いとは思えませんが、なんと言っても2011年発売のレンズですから。未だに愛用する方が多いレンズというのも、描写性能だけじゃないメリットもあることを考えると納得できます。どんどんカメラが小型・軽量化していく昨今、小さくて軽いレンズは正義です。
色乗りは深みのあるこってり系
ボケ味の派手さも好みなのですが、色乗りがこってりとしているので、スナップ撮影がより楽しくなりました。カラッとした冬の沖縄の風景も、このレンズを通すと湿度が上がるような気がします。
奥行き感を生む丁寧な線の描写
ピント面はもちろんなのですが、アウトフォーカスに向かっていく中間の太さの線の描写が、とても繊細で丁寧だと感じました。そのお陰で、構図内に奥行きがぐっと出るのが、撮影中でもわかるほどでした。
最新のレンズももちろんいいのですが、懐かしい年代のレンズをふと使ってみると、自分でも驚くほど惚れ込んでしまうレンズに出会えたりするのが、また写真の楽しいところでもありますね。
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。 (社)日本写真家協会(JPS)会員。