タムロン初のRFマウントレンズ 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD
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はじめに
今回紹介するレンズは、2024年12月12日に発表されたタムロン初のキヤノンRFマウント用のレンズ「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD(Model B060)」です。キヤノンの純正RFレンズのバリエーションは非常に抱負なラインナップですが、APS-C機用のRF-Sレンズになると純正レンズでは4本しかなく少し寂しいです。今回タムロンから発売になったAPS-C機用のRF-Sレンズの「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」は、純正レンズにはない大口径の開放F値F2.8の広角ズームレンズで、APS-C機専用なので小型軽量で扱いやすいレンズに仕上がっています。
早速、キヤノンのAPS-C機「EOS R7」にタムロン「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」を着けていろいろ撮影をしてみました。
タムロン 11-20mm F/2.8 Di III-A RXDの基本スペック
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今回の発売されたキヤノンRFマウントのタムロン「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD(Model B060)」は、すでに他のマウント(ソニーEマウント、フジXマウント)で発売されていたレンズで、これをベースにキヤノンRFマウント化されたモデルになります。
※ソニーEマウントが2021年6月、フジXマウントが2023年5月に発売されました。
「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」(キヤノンRFマウント用)のスペックを一覧にしてみました。
焦点距離 | 11-20mm |
画角(対角画角) | 101°44′- 68°7′ (キヤノンRFマウント用 APS-Cサイズ使用時) |
レンズ構成 | 10群12枚 |
開放絞り | 2.8 |
最小絞り | 16 |
フィルター径 | 67mm |
絞り羽根枚数 | 7枚 |
最近接距離 | 0.15m (WIDE) 0.24m (TELE) |
手ブレ補正 | 無 |
全長×最大径 | 84.2×73mm |
重量 | 340g |
発売 | 2024年12月 |
撮影できる画角に関してですが、ここでカメラのAPS-C機の規格の違いについて少しお話をしたいと思います。フルサイズ機のセンサーサイズは、みなさんもご存じの撮り「24mmx35mm」で35mmフィルムのサイズになっていますが、APS-Cサイズと呼ばれるものは規格として厳密に決められたものではないため、各カメラメーカー・機種により若干の違いがあったりします。
※各社APS-C機のセンサーサイズの一例
ソニー α6700:APS-Cサイズ (23.3 x 15.5mm)
フジ X-T5:APS-Cサイズ (23.5 x 15.7mm)
ニコン Z50:APS-Cサイズ(23.5 x 15.7mm)
キヤノン EOS R7:APS-Cサイズ(22.3 x 14.8mm)
キヤノンのAPS-C機のセンサーサイズは、他社のAPS-C機のセンサーサイズよりも少し小さい為、同じ焦点距離のレンズを使用しても35mm換算の焦点距離にすると撮影できる画角に若干の違いが発生します。
今回のレンズ、タムロン「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD(Model B060)」でソニーEマウント・フジXマウントモデルは「105°20′-71°35’」の対角画角を得られていますが、センサーサイズが少し小さいキヤノンAPS-C機用では「101°44′-68°7’」の対角画角になっています。
対角画角表示だと少しわかりにくいので35mm換算の焦点距離表示にすると、ソニーEマウント・フジXマウントモデルは、焦点距離「16.5mm~30mm相当」(35mm換算)、キヤノンRFマウントモデルでは、焦点距離「17.6mm~32mm相当」(35mm換算)になります。
RFマウント用の「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD(Model B060)」は、他マウントの「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD(Model B060)」とは一点異なる仕様があります。他マウントには無い「AF/MF切り替えスイッチ」がRFマウントには搭載され、素早くオートフォーカス・マニュアルフォーカスの切り替えがレンズ側で操作できるようになっています。
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レンズは焦点距離20mmの状態で一番コンパクトな状態になり、焦点距離11mmの状態で一番長くなりますが、それほど大きな繰り出しはありません。
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フィルター径は67mmで、タムロンの多くのレンズがフィルター径67mmに統一されているので、複数のレンズを同時に持ち歩いても携帯性が高いことに加え、PLフィルターをはじめとした各種フィルターも共用できるほか、レンズ交換時に径の異なるキャップを探す手間が省けるなど、ラインナップ全体で高い利便性を発揮するので今後のRFマウント対応に期待したいところです。
個人的にはRF-Sの純正レンズは、筺体がスリムなデザインになっていて正直「EOS R7」などに装着していると貧弱に見えてしまうのが気になっていました。今回のタムロンの「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD(Model B060)」は「EOS R7」に装着した際のバランスもよく、デザイン的にも非常によくマッチしています。
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タムロンのレンズをより快適に使いこなすためのポイントとして「TAMRON Lens Utility」というソフトがあります。パソコンまたはスマートフォンを使用して、コネクターポート(端子形状: USB Type-C)を搭載したタムロンレンズのカスタマイズやファームウェアのアップデートを行える専用ソフトウェアです。
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ソニーEマウントやフジXマウントで実績のある人気のAPS-C機用大口径広角ズームなので、キヤノンのAPS-C機ユーザーにとっても、新しいレンズの選択肢ができたことは非常にメリットが大きく、今後のラインナップ拡充が楽しみです。
タムロン 11-20mm F/2.8 Di III-A RXDで気になる建築物撮影
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■撮影環境:シャッター速度1/25 絞りF7.1 ISO1600 焦点距離11mm(35mm換算17.6mm相当)
広角系レンズは都市風景の建築物の撮影には欠かせないレンズです。APS-C機でも35mm換算で17.6mm相当の画角で撮影する事ができるので、非常に便利なレンズになります。開放F値が明るいレンズなので、いざとなれば絞りを開けてシャッター速度を稼ぐこともできるのは大きなメリットになります。全体的に歪曲収差もよく抑えられているので直線の多い建築物を撮影しても安心感があります。
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■撮影環境:シャッター速度1/2000 絞りF8 ISO800 焦点距離19mm(35mm換算30.4mm相当)
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■撮影環境:シャッター速度1/20 絞りF8 ISO800 焦点距離11mm(35mm換算17.6mm相当)
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■撮影環境:シャッター速度1/30 絞りF9 ISO1600 焦点距離11mm(35mm換算17.6mm相当)
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■撮影環境:シャッター速度1/80 絞りF4 ISO1600 焦点距離16mm(35mm換算25.6mm相当)
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■撮影環境:シャッター速度1/12 絞りF11 ISO1600 焦点距離11mm(35mm換算17.6mm相当)
絞り羽根の枚数は7枚なので、絞った際にできる光芒線の数は14本となります
絞り開放撮影でもシャープな描写をしますが、少し絞っていけば周辺までシャープな描写をするので建築物などの撮影にピッタリなレンズです。レンズには光学手ブレ補正はありませんが、カメラ側の手ブレ補正を活用する事で、遅いシャッタースピードでもある程度ブレることなく撮影もできるので、撮影の自由度は十分に確保できていると思います。
タムロン 11-20mm F/2.8 Di III-A RXDで夜のスナップ撮影
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■撮影環境:シャッター速度1/13 絞りF2.8 ISO800 焦点距離20mm(35mm換算32mm相当)
夜の撮影では、開放F値F2.8の明るさが大きなメリットになります。ISO感度を大きく上げすぎなくても、気軽に手持ち撮影で夜のノイズの少ないスナップ撮影が楽しめます。ボディに手ブレ補正機能があれば、ISO800~1600程度の感度設定のままでも本当に手ブレの少ない夜のスナップ撮影が簡単に楽しめます。街中や人の多いイルミネーションスポットなどで三脚など使えない場所も多くなってきています。そんな時に大口径の明るいレンズは非常に頼りになるレンズです。
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■撮影環境:シャッター速度1/4 絞りF9 ISO1600 焦点距離12mm(35mm換算19.2mm相当)
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■撮影環境:シャッター速度1/5 絞りF2.8 ISO1600 焦点距離13mm(35mm換算20.8mm相当)
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■撮影環境:シャッター速度1/2 絞りF2.8 ISO800 焦点距離11mm(35mm換算17.6mm相当)
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■撮影環境:シャッター速度1/10 絞りF2.8 ISO1600 焦点距離11mm(35mm換算17.6mm相当)
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■撮影環境:シャッター速度1/13 絞りF2.8 ISO1600 焦点距離11mm(35mm換算17.6mm相当)
タムロン 11-20mm F/2.8 Di III-A RXDで旅行撮影
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■撮影環境:シャッター速度1/1600 絞りF11 ISO800 焦点距離11mm(35mm換算17.6mm相当)
バイクでのツーリングに、タムロン「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」を持って撮影してみました。バイクツーリングでは、普段は機材をあまり持って行きたくないので高倍率ズームレンズを持っていく事が多いのですが、今回は広角ズーム「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」にしてみました。
ツーリングの目的地は、房総半島にある「崖観音」とCM撮影などで有名なスポット「岡本桟橋」です。
岡本桟橋は全国でも数少ない木製の海桟橋で、1921年に漁業用として整備された歴史ある桟橋です。CMなどの撮影も多く行われている人気の場所で、今回は残念ながら雲があって富士山を見ることができませんでしたが、雲が無ければ桟橋の左前方に富士山の姿を見ることができます。たまたま撮影していた時には誰も人がいなくて素敵な場所を独り占めしながら撮影をしていましたが、帰る時には結構な人で賑わっていました。
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■撮影環境:シャッター速度1/1250 絞りF11 ISO800 焦点距離20mm(35mm換算32mm相当)
岡本桟橋から近いところにある崖にそびえたつ「崖観音」と呼ばれる大福寺にも寄ってみました。遠くから見ると本当に崖の上の方に建物がありびっくりするのですが、実際に行くと結構急な階段を上り、あらためてすごい場所にあるんだなと実感します。また登った場所から眺める景色も絶景です。
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■撮影環境:シャッター速度1/320 絞りF14 ISO400 焦点距離11mm(35mm換算17.6mm相当)
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■撮影環境:シャッター速度1/200 絞りF14 ISO400 焦点距離11mm(35mm換算17.6mm相当)
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■撮影環境:シャッター速度1/40 絞りF4 ISO400 焦点距離11mm(35mm換算17.6mm相当)
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■撮影環境:シャッター速度1/5000 絞りF9 ISO400 焦点距離11mm(35mm換算17.6mm相当)
焦点距離が11mmから20mmと画角の変化量は少ないレンズにはなりますが、建物などをめぐる旅行などには使い勝手のよいレンズだと思います。逆光での撮影でもゴースト・フレアもよく抑えられており、広い風景を撮影するのにも安心して使えます。
まとめ
タムロン初のRFマウントレンズ「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」(Model B060)は、すでに他マウントで発売されて実績のあるレンズなので安心して使うことができると思います。キヤノンのAPS-C機ユーザーにとっては、待ちに待った小型軽量の大口径広角ズームレンズです。APS-C機ユーザーの泣き所の広角側の撮影をカバーしてくれるこのレンズは、スナップ撮影や風景撮影など多くの撮影シーンに活躍の場を広げてくれるアイテムになります。
純正レンズ以外の選択肢が増えたことは、ユーザーにとって多くのメリットがあり今後のラインナップが楽しみですね。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師