タムロン 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD|スナップ感覚で撮れる標準ズームな一本で富良野・美瑛を巡る
はじめに
風そよぐ残暑の北海道、日中は暑いですが、朝晩は肌寒くすっかり秋の気配も感じられる季節になりました。この時期の北海道は避暑地として観光客にとても人気です。
そんな観光シーンに最適な富士フイルムXマウント用レンズ「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」がタムロンから7月上旬に発売されました。元々ソニーEマウントで展開されていたこのレンズにXマウントが追加された形です。
今回は、まだ発売間もないこのレンズを使って初秋の富良野・美瑛をスナップ感覚で巡って来ました。撮影した写真を交えてご紹介します。
コンパクトなのに大口径
「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」は、広角から中望遠域まで撮影できる標準ズームレンズです。F2.8通しの標準ズームレンズでは考えられなかったズーム比4.1倍を誇り、APS-C対応では世界初となる高いズーム比が特徴の実用的なレンズです。
外観はコンパクトですが大口径なので、カメラを構えた時にレンズ下面を支える際、「手にしっかりフィット」し、吸い付くような「抜群の安定感」があります。また、タムロンが独自に開発した手ブレ補正機構も搭載されていて、動体撮影や低照度撮影時に手ブレを軽減し威力を発揮してくれます。
そして、大口径な割には非常に軽量な上、簡易防滴構造・防汚コートもされているので、野外フィールドでタフな使用が可能となっており、機動力も発揮できます。さらに、嬉しいのが「最短撮影距離がワイド端で僅か19cm」と、広角デフォルメ好きには堪らない近接撮影性能を有しています。
ズームレンズを使う際の注意点ですが、伸長・伸縮の際、内筒部から水滴や埃がレンズ内に進入したり、鏡筒内部のレンズが結露したりする恐れがあるので、内筒部が汚れた場合しっかりタオル等で拭いてあげましょう。
実際に最短撮影距離で撮影したカットがこちらです。ミヤマクワガタの大顎から頭部にかけての稜線がシャープに描画されており、ボケ味も滑らかで美しく、「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」のレンズ精度の良さをうかがうことができました。
高山帯で暮らすエゾシマリスは岩石に同化して、こちらの様子を窺っています。曇天な上、背景に被写体が同化するようなシチュエーションでも、「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」のAFは正確に被写体を捉えてくれました。
夜間撮影でも大活躍
自然写真家として野生動物の撮影を日々の日課としている私ですが、撮影は24時間、条件が揃えば何時でもフィールドに向かいます。
今回の取材中でも条件が揃ったので、「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」を装着してフィールドに向かいました。
夜景とヨタカを撮影するのに「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」を使用しました。F2.8通しの利点を最大限活用するため撮影レンズに起用しましたが、その考えは間違っていませんでした。
「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」は低照度の朝夕はもちろん、曇天から夜間に至るまで、コレ一本でリズム良く撮影できて、一日中楽しめてしまう魅力的なレンズです。
大迫力の広角域
広角で撮影された写真は大迫力でとても臨場感があり、デフォルメも効いて大好きな方も多いと思います。「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」はF2.8通しで美しいボケ味が魅力で、逆光にも強く非常に高性能なレンズです。
F2.8で撮影しようとしましたが、ポニーがボケ過ぎてしまいました。意図した表現にするため、F5.6で塩梅が良いボケ味を確認しながら、草を食べたくても届かない頑張るポニーを撮影しました。
「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」は絞り開放のボケ味を起点として、自分の意図した理想的なボケ感を幅広く表現出来るので、気付かないうちに時間を忘れて撮影に没頭させてくれます。
主題を何にするかで、こんなにも写真に物語性を付与することができる広角域の撮影はとても楽しく、その表現は無限大です。
鼻っ面にピントを合わせ撮影しましたが、表面の濡れた質感や毛の細部まで「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」はリアルに表現してくれました。
そしてこの後、レンズもリアルに舐め回されてしまいます。最短撮影距離19cmはレンズがペロペロ舐められるくらい近くまで寄れるレンズです。
美しい大地と青空と雲……ザ・北海道というロケーションにかみふらの和牛を置いてみました。太陽を真逆光に据えて撮影しましたが、牛の黒を完全に潰さず、背中の照り返しでディテールを際立たせています。
この様な条件の撮影でも「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」は逆光に負けることなくシャープに被写体を捉えてくれました。
かわいいヤギのポーズを「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」のボケ味が優しく演出してくれました。「白い被写体は白飛びしやすい」ので特に注意が必要です。
そして、広角撮影で、もう一つ気を付けて欲しいのが「背景の白飛び」です。白飛びしてしまうと、その部分のカラーは救済できないので、意図して白飛びさせる以外は、少しアンダーで撮影されると良いでしょう。
情景をそのまま切り取る標準域
眼で見たままを写真に表現できるのが標準ズームレンズの醍醐味。「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」の画角と感性を融合させ、感覚や直観で「見たまま」を表現していくスナップ感覚の撮影はとても楽しいひと時です。
沢山の種類の乳牛が放牧されている長閑な丘からの連なりを、背景も空もまるごと美瑛を入れて撮影しました。
標準ズームレンズ「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」は単焦点とは違い、自由に「自分が動くことなく瞬時に思い描いた情景を切り取ってくれる」ので、ノンストレスで撮影が満喫できます。
撮影中に差し込んだスポット光のお陰もあり、真っ赤な単冠のトサカの質感を「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」はリアルに表現してくれました。
まとめ
発売間もないタムロン「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」富士フイルムXマウント用標準ズームレンズを使用し、残暑の富良野・美瑛で撮影したカットをご紹介しましたが、如何だったでしょうか?大口径のF2.8通しレンズならではの、明暗気にすることなく24時間様々なシーンでアグレッシブにスナップ感覚でテンポ良く撮影できる、とても使い勝手が良いレンズだということがお分かり頂けたと思います。
皆さんも今回ご紹介した機材を活用して、初秋の涼しい富良野・美瑛方面でこれから始まる紅葉に照準を合わせ、美しい被写体に出会いを求めて訪れてみては如何でしょうか。
■撮影協力
・北海道上富良野町 kaneko coffee beans KCB Farmette
https://www.kcbfarmette.com/
・北海道美瑛町 美瑛放牧酪農場
https://biei-farm.co.jp/
・北海道中富良野町 Domaine Raison
https://domaine-raison.com/
・北海道上富良野町 松井牧場
■自然写真家:高橋忠照
1982年北海道札幌市生まれ・山形県育ち。上富良野町在住。陸上自衛隊勤務を経て、2019年自然写真家に転向。自衛隊時代に培ったスナイパー(狙撃手)の技能を生かし、自然の中に同化して野生動物を探し出す独自のスタイルでの撮影を得意とする。作品は小学館、チャイルド本社、フレーベル館等の児童書や雑誌、カレンダーなど掲載多数。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員・富士フイルムアカデミーX講師