タムロン 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD|富士フイルムXマウントに新しい便利ズームの選択肢!
はじめに
ここ一年の間で急速にユーザー数が増えている気がする富士フイルム。2018年に発売されたFUJIFILM X-T3以降は動画にも力をいれており、写真派だけでなく動画派にも人気を博しています。そんな中、最近純正以外のメーカーから相次いで富士フイルムXマウント用のレンズが発売されています。
その中のひとつが、今回紹介するTAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD(Model B070)です。いわゆる「便利ズーム」というものですが、果たしてこのレンズの性能はいかなるものか。実際に撮影した感想をお伝えします。
既存の便利ズームレンズと悩みを整理
既存ラインナップで富士フイルム用の便利ズームは純正で2本。ここにタムロンが加わったことになります。実は私自身、現在の撮影スタイルに合った便利ズームがなくて困っていました。
FUJIFILM XF16-55mmF2.8 R L WRは大変素晴らしく、写真用レンズとしては申し分ないです。ただ、動画にはイマイチで、手ぶれ補正がなく、AF音が大きい。ピントの合焦の仕方も一気にピピッ!と合う感じです。動画の場合はマイクにAF音が入らないように静音かつスムーズで自然な合焦が求められるため、Youtuberの私にとって動画用途に向いていないのは残念な点でした。
FUJIFILM XF18-55mmF2.8-4 W LM WR OISは長らく富士フイルム用の便利ズームとして君臨してきたレンズです。写真用としての画質もそこそこ良く、動画撮影においては申し分ない性能なんです。小型軽量なのでジンバルにも載せやすいし、持ち運びもしやすい。まさに便利ズームの代表だったわけですが、F2.8通しではないため、室内の撮影ではやや厳しい場面がありました。
そこで登場したTAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD(Model B070)。ちょっと試してみたところ、F2.8通しかつAFも静音でスムーズ。動画用途には申し分ない印象です。富士フイルムを使用しているYoutuberとしては、まさにこれが欲しかった!な便利ズームでしたが、果たして写真性能はどうでしょう。
そう、私は星も撮影するのです。さすがに星はおまけでそこそこだったら十分かなと思っていたのですが、できることなら1本で済ませたいですよね。ここからは実際に撮影した画像をお見せしながら解説しましょう。
▼X-S10に装着
▼X-H2Sに装着
星空画像による性能評価
何でもかんでも星空を撮影して検証するのはよくないかもしれませんが、レンズが持っている特徴がわかるのが、星空という被写体でもあります。まずは広角側でF2.8とF4での比較をしてみました。撮影カメラはFUJIFILM X-S10です。
まずは17mm側。天の川中心部を撮影してみました。続いて中心部を100%で拡大。
周辺像はさほど変わりませんが、F2.8だと少し星がぽっちゃりめに写り、少しだけ色収差を感じます。しかし、F4に絞るとかなりシャープになり色収差も改善することがわかります。星だからこういった少しの変化も気になりますが、昼間の撮影であれば全く気にならないでしょう。
そして周辺光量は大変豊富で、このままでも補正が必要ないと感じたほどでした。周辺像は最端が少し流れるかなくらいで、星景写真用としてはまずまず、といった描写でしょう。また、70mm側ではF2.8、F4どちらでもシャープな像を結び、色収差も少なく、星だけを写す天体写真の使用もいけそうな感じです。
17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDはおそらくこんなレンズ
星を撮影してわかったことは、ポートレートやスナップなどで、少し柔らかい描写が欲しければ広角側の開放で。そうでない場合は、広角側のときはF4くらいに絞るか、少しズームして使うと良いだろうということです。ここまで傾向が掴めれば写欲がわきます!いろいろと撮影してみました!
この感じが撮りたかった……!!最短撮影距離は広角端0.19m、望遠端0.39mで、広角側ではフードがぶつかるくらいまで、かなり被写体に近づけます。広角マクロとしての使い方もできるので被写体との距離の選択肢が広く、これ1本でなんでも撮れちゃいそうな気分になります。
70mm側でも撮ってみました。フジ純正のXF16-55mmF2.8 R LM WRを普段使いで使用すると、望遠側がもうちょっと欲しいなと思うことがありましたが、このレンズだと35mm換算で105mm相当までズームできます。ちょうど物足りなかった、かゆいところに手が届く!そんな印象を持ちました。フィルムシミュレーション・クラシックネガの緑が好きです。
基本はISO感度AUTOで撮影しており、明るめに撮影したい場合はそこへ露出補正をプラスにしています。アジサイをクラシッククロームで撮影すると、良い意味でなんとも言えない重い色になりました。
レンズの手軽さのせいか普段は撮影しないものをどんどん撮っていきました。楽しい。
池袋サンシャイン60展望台より。見たこともないような濃い「反薄明光線」が見えました。
とっさにズーム。当然ですが、こうやって焦点距離を変えてもF値が変わりません。設定もそのまんまです。こうした一瞬の動きで余計なことを考えずに済むのは、これぞまさに便利ズーム。
動画の撮影には現時点でこれがベストチョイス!
TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDのAF精度や静音性は、動画撮影に最適であったことも追記しておきましょう。この動画作例はそのまんまの雰囲気が伝わるようにあえてそのままで出します。
どんどん変わっていく構図に対して不自然な動きを見せずに変わっていくAF。近距離撮影から遠距離撮影に切り替わってもスムーズなので、思わず長回しで使いたくなるレンズです。この動画ではジンバルを使いましたが、TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDは手ぶれ補正もかなり優秀で、手持ち撮影でも三脚が必要ないと感じるほどでした。
最後に
いかがでしたでしょうか。普段は星や風景ばかり撮影しているので、今回の撮影はとても新鮮でした。富士フイルムユーザーなら写真・動画を問わず1本は持っておきたい定番レンズだと思います。このレンズの楽しさが皆さんにも伝われば嬉しいです。
■写真家:成澤広幸
1980年5月31日生まれ。北海道留萌市出身。星空写真家・タイムラプスクリエイター。全国各地で星空撮影セミナーを多数開催。カメラ雑誌・webマガジンなどで執筆を担当。写真スタジオ、天体望遠鏡メーカーでの勤務の後、2020年4月に独立。動画撮影・編集技術を磨くべくYouTuberとしても活動している。
・著書「成澤広幸の星空撮影塾」「成澤広幸の星空撮影地105選」「プロが教えるタイムラプス撮影の教科書」「成澤広幸の星空撮影塾 決定版」「星空写真撮影ハンドブック」
・月刊「天文ガイド」にて「星空撮影QUCIKガイド」を連載中
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)正会員