これ一本で満足!10.7倍高倍率ズーム タムロン 28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD
はじめに
今回紹介するレンズは本日(2024年8月29日)発売開始となった、タムロンの「28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD (Model A074)」ソニーEマウント用です。10.7倍の高倍率ズームでありながら小型軽量を実現した魅力的なレンズです。タムロンにはすでに同じ28mmスタートの高倍率ズームで人気の「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A071)」がありますが、今回のモデルは望遠側の焦点距離が300mmになり、より高倍率ズームとなって登場しました。そんな新しいモデルを発売前にタムロンさんよりお借りすることができたので、この新しいレンズのスペックと魅力・写りをご紹介します。
基本スペック
今回の新製品、タムロン「28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD (Model A074)」は、広角28mmスタートの10.7倍ズームで望遠300mm焦点距離が特徴的な高倍率ズームです。これ一本で様々なシーンに対応できる焦点距離が魅力的なレンズですが、高倍率で小型・軽量を実現するにあたり開放F値は広角側28mmでF4、望遠側の300mmでF7.1となっており、少々暗くなってしまっています。おそらく多くのユーザーが気になるポイントになっているのではないでしょうか。
多少、開放F値が暗くなってしまっていますが「28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD (Model A074)」は「手ブレ補正VC」を搭載しているので、ある程度は手ブレ補正機能でカバーできると考えられます。特に、同じく焦点距離28mmスタートの高倍率ズームの「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A71)」には「手ブレ補正VC」を搭載していないので、この点において開放F値の暗くなった分を補えるポイントと言えます。また2024年6月に発売になった望遠側の焦点距離が同じ「50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD (Model A069)」モデルと比較されるユーザーもいると思いますが、用途的には性格も違っているので、実質的に購入時に比較対象になるのは「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A71)」モデルになると思います。
筆者はすでに「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A71)」を使用していますが、開放F値2.8スタートの高倍率ズームとして非常に使い勝手の良いレンズとして、バイクツーリングなどでは常用レンズとして愛用しています。しかし「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A71)」の不満なポイントとして、手ブレ補正が無い点や望遠側がもう少しあったらと感じる事が少々ありました。その不満ポイントを補ってきたのが、今回の「28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD (Model A074)」です。重量増も抑えられており、大きさも少し大きくなりましたが、10倍を超える高倍率ズームとしては非常にコンパクトなレンズになっています。
同社の「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A71)」とのスペックの違いを一覧にしてみました。
28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD(Model A74) | 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A71) | |
焦点距離 | 28-300mm | 28-200mm |
レンズ構成 | 13群20枚 | 14群18枚 |
開放絞り | 4-7.1 | 16-32 |
フィルター径 | 67mm | 67mm |
絞り羽根枚数 | 9枚 | 7枚 |
最近接距離 | 0.19m (WIDE) 0.99m (TELE) |
0.19m (WIDE) 0.8m (TELE) |
手ブレ補正 | 有 | 無 |
全長×最大径 | 126×77mm | 117×74mm |
重量 | 610g | 575g |
発売 | 2024年8月 | 2020年6月 |
フィルター径はタムロンの多くのレンズと同じ67mmで、タムロンの多くのレンズがフィルター径67mmに統一されているので、複数のレンズを同時に持ち歩いても携帯性が高いことに加え、PLフィルターをはじめとした各種フィルターも共用できるほか、レンズ交換時に径の異なるキャップを探す手間が省けるなど、ラインナップ全体で高い利便性を発揮します。とはいえこのレンズ「28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD (Model A074)」の性格を考えると、これ一本でほとんどの撮影をこなせるので、レンズ交換の頻度は少ないと思います。
「28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD (Model A074)」は、「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A71)」に比べると、機能をカスタマイズできる「フォーカスセットボタン」とレンズをカスタマイズする為のコネクターポート(端子形状:USB Type-C)が搭載されているので、「フォーカスセットボタン」にユーザーの使いやすい機能を割り当てる事ができるようになっています。
タムロンのレンズをより快適に使いこなすためのポイントとして、「TAMRON Lens Utility」というソフトがあります。
パソコンまたはスマートフォンを使用して、コネクターポート(端子形状: USB Type-C)を搭載したタムロンレンズのカスタマイズやファームウェアのアップデートを行える専用ソフトウェアです。レンズを使いやすいように設定することで、撮影がもっと楽しく、もっとクリエイティブになります。
「TAMRON Lens Utility」で設定できる各種機能は、カメラボディ機能割り当て、AF/MF切り替え・フォーカスリミッター・フォーカスプリセット・A-B フォーカス・フォーカス/絞り リング機能切り替え・フォーカスストッパー・アストロFC-Lなど様々な設定が可能です。
タムロン「28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD」の実力
「28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD」の実力が気になるところですが、早速使用してみた所感をお伝えしたいと思います。
気になるポイントしては、「手ブレ補正VC」効果・逆光耐性・ボケ・オートフォーカス精度などになると思いますが、10倍を超える高倍率ズームとしては十分に優秀なレンズであると感じました。「手ブレ補正VC」の効果は、少し暗いと感じる開放F値を十分にカバーする事ができ、低速シャッターでもしっかりとブレを抑えた撮影をする事が可能で安心して撮影ができました。
強い逆光での撮影もしてみましたが、タムロンのゴースト・フレアの発生を抑えるBBAR-G2 (Broad-Band Anti-Reflection Generation 2)コーティングの採用をしていることで、下の様な写真で直接太陽が入ってくるようなシーンでも、ゴースト・フレアがよく抑えられています。
ボケに関しては、少々うるさい感じのボケになります。画面中心部から離れるとやや強い口径食が発生したり、玉ボケ内部に年輪ボケが見られたりする場合があります。この年輪ボケに関しては、ガラスモールド非球面レンズを使用している事による影響になりますが、ちょっと気になるポイントではあります。
シーン別のオートフォーカスの動作性を確認してみました。α7R Vの様々な被写体認識のオートフォーカスを試してみましたが、瞳AFや被写体認識もスムーズに反応し、オートフォーカス性能は非常に良好な結果でした。
いろいろ撮影していた中で少し不満を感じたポイントを挙げるとすれば、ズーミングのトルクが気になりました。28mmから100mm辺りまではスムーズなトルクでズーミングできるのですが、レンズの鏡筒の繰り出しの影響からか100mm辺りから300mmに回すにあたり急に重さがかかり、ワイド側から望遠側に一気にズーミングする際には、少々ズーミング操作に違和感を感じました。
また、開放F値の値も焦点距離170mm辺りでF値7.1になってしまうので、やはり少々開放F値の暗さが気になってしまう場合があり、シーンによってはISO感度を上げる事での対応になってくる様な事が多くなります。しかし全体的には、非常にユーティリティーの高いレンズである事は間違いないレンズです。
タムロン「28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD」でツーリング撮影
高倍率ズームレンズのメリットは、沢山の機材を持たなくても様々なシーンの撮影がこなせるのが魅力のポイント。タムロン「28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD」レンズ一本だけを持ってバイクツーリングに持ち出して撮影をしてみました。バイクツーリングの際には、できるだけ機材を少なくしたいので、普段は「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD」を持ち出していましたが、今回は望遠300mmまでの焦点距離でより撮影のバリエーションを楽しむ事ができました。
タムロン「28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD」でお祭り撮影
高倍率ズームは旅行などに魅力的なレンズですが、イベント関連でも非常に便利なレンズです。特に運動会やお祭りなど、望遠側の焦点距離が300mmあるタムロン「28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD」は、レンズ交換の必要がなくあらゆるシーンに対応できる機動力のある万能レンズと言えます。今回は夏のお祭りの撮影にタムロン「28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD」を持っていき、撮影をしてみました。
広角側28mmで全体のお祭りの雰囲気を撮影しながら、望遠の300mmで圧縮効果を狙ってお祭りの密度感を上げてみたりと、様々な撮影の仕方がこのレンズ一本で楽しむ事ができます。タムロン「28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD」は簡易防滴構造になっており、防滴用シーリングが外部からの水滴侵入を防止するようになっていますが、今回の様な水が飛ぶかうようなシーンでは、少し離れたところから望遠を使うことにより安全に、安心して撮影に集中する事もできるメリットもあります。
人混みの多いイベントなどで大きな荷物(交換レンズ)など持ち歩いての撮影は困難です。またレンズ交換作業も大変難しくなってくる場合もあります。そんな時、レンズ一本で28mmから300mmの焦点距離をカバーできるタムロン「28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD」は、機動力やレスポンスの優れたメリットの高いレンズとして、撮影をスムーズにしてくれる事は間違いありません。
まとめ
旅行やイベントなどに最適な10.7倍の高倍率ズーム。本当にこれ一本で様々なシーンに対応できる便利なレンズです。タムロン「28-300mm F4-7.1 Di III VC VXD」は、手ブレ補正機能も搭載され低速シャッターで手ブレをしっかりと防ぎ、オートフォーカス性能はリニアモーターフォーカス機構VXDの効果もあり、高倍率ズームでもスピーディーなピント合わせが可能になっているコストパフォーマンスの高いレンズとなっています。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師