タムロン 35-150mm F/2-2.8 Di III VXD ニコンZマウントレビュー|ポートレートだけじゃない、様々な撮影シーンで活躍する明るい高性能ズーム
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はじめに
タムロン 35-150mm F/2-2.8 Di III VXD (Model A058) は、ワイド端35mmでF2スタートという明るさが魅力のズームレンズだ。本レンズは2021年10月にまずソニーEマウント用が発売され、約2年後の2023年9月にはニコンZマウント用も発売されている。
準広角35mmから望遠の150mmまでカバーする大口径ズームレンズということで、とくにポートレート撮影に最適なレンズではあるが、せっかくの高性能レンズなので筆者の得意分野である飛行機写真や自然写真の撮影にも投入してみた。実写では十分活躍してくれる手応えを感じたので、その使用感をここにレポートする。
高級感ある仕上げ
本レンズはタムロンのミラーレス用レンズの中でもワンランク上の高級感があり、その外観からも写りの良さを期待させてくれる。ズームリングやフォーカスリングも滑らかで操作性は良好。ただし150-500mm F/5-6.7 Di IIII VC VXD (Model A057)など他のタムロンのニコンZマウント用レンズは、ズームリングがレンズ先端側でフォーカスリングがカメラ側に配置されているのに対し、本35-150mmは前後逆の配置となっているので、これらのレンズと併用する場合は若干の戸惑いはある。
操作性
大口径を謳うだけあってフィルター径は82mmの鏡筒は太く、ニコンZ用レンズの質量は1190gとズッシリと重いが、ニコンZ 9やZ 8といった重めのハイエンドカメラとの組み合わせでは重量バランスは悪くない。ズームリングとフォーカスリングの間にスイッチボックスとフォーカスセットボタンといった操作系が集中し、ファインダーを覗いた状態でも手探りで操作できる。手ブレ補正機構VCは搭載しないが、明るさを活かして速めのシャッター速度を使うことでカメラブレを低減できる。
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優れた光学性能
光学系は15群21枚で、うちGM(ガラスモールド非球面)レンズを3枚、LD(Low Dispersion:異常低分散)レンズを4枚組み込むことで、シャープでクリアな描写と柔らかなボケ味を両立させている。AF駆動はリニアモーターフォーカス機構VXDで、ハイレベルなAF速度と精度を実現している。
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■撮影環境:F16 1/125秒 ISO200 WB晴天
沼のほとりのヤマドリゼンマイ群落の中に咲くコバイケイソウを見つけた。本レンズは35mmから150mmまでカバーするので、一つの被写体で引きと寄りの両方を楽しめる。このショットでは風景的に撮影するためワイド端35mmでF16まで絞り込み被写界深度を稼いだ。
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■撮影環境:F2.8 1/2000秒 ISO100 WB晴天
上の写真と同じコバイケイソウを、今度はテレ端150mmの絞り開放F2.8で撮影した。大口径レンズらしい滑らかなボケ味ながら、ピントの芯はカリッとした描写に好感が持てる。カメラポジションを大きく動かせない木道上での撮影だが、作画に変化を付けられた。
飛行機撮影の実写
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■撮影環境:F8 1/2000秒 ISO200 WB晴天
伊丹空港に着陸するJALのボーイング787。飛行機撮影では望遠系がメインレンズとなるが、機体まで接近できる撮影条件下や風景的に撮影するときなど、広角~標準レンズの出番も少なくない。本レンズはズーム全域において極めてシャープでヌケが良く、周辺光量落ちも目立たないため、空バックになりやすい飛行機写真には最適だ。
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■撮影環境:F2.4 1/500秒 ISO800 WB晴天
茜色に染まる夕焼け空を背景に着陸するエアバスA380をシルエットで作画した。日没後ですでに露出は厳しかったが、ブレないよう1/500秒で切ってもISO800と、それほどISO感度を上げずに済んだのは本レンズの明るさのおかげだ。
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■撮影環境:F11 90秒 ISO64 WB2940K
東京ゲートブリッジと、羽田空港への着陸機を長秒時露光して撮影した。絞り開放からシャープなレンズだが、絞り込むとさらに鮮鋭感が増す。絞ったときの光条の出方も美しい。
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■撮影環境:F2.8 1/350秒 ISO12800 WB晴天
雨の夕暮れ時、新千歳空港に着陸するボーイング737。撮影者も機材もずぶ濡れになりながらの撮影だが、その甲斐あって翼からベイパーを曳くショットが撮れた。高性能レンズを持つことは、難しい撮影でもトライしようと思える心理的なメリットも大きい。
野鳥撮影・風景撮影の実写
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■撮影環境:F8 1/500秒 ISO200 WB晴天
飛行機撮影以上に超望遠レンズを必須とする野鳥撮影において35-150mmの出番はあまり多くないが、オオハクチョウなど比較的近くから撮影できる大型の野鳥を撮るときは本レンズが活躍する。適度な焦点距離と適度なボケを生かして、オオハクチョウをポートレート的に撮影できた。焦点域によっては多少の糸巻き収差が出るので作画時の工夫が求められる。
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■撮影環境:F4 1/500秒 ISO200 WB晴天
夜明けとともにねぐらを飛び立つマガンの群れ。飛び立ちの時間は毎朝異なり、日の出後のときもあれば日の出前のときもある。日の出後であれば露出は稼げるが、本作例のように日の出前なら露出は厳しいため明るいレンズが重宝する。
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■撮影環境:F11 1/45秒 ISO100 WB晴天
厳冬期の夜明け。カルデラ湖の外輪山に積もった雪面を、朝日の光がピンク色に染め上げる。画面内に太陽を取り入れた逆光の作画ながら、ゴーストやフレアは最小限に抑えられており、コントラストも保たれ雪面の繊細な描写が得られた。
まとめ
35-150mmと扱いやすい焦点域のズームレンズながら、ワイド端35mmでF2という驚異的な明るさを持つ本レンズ。暗い条件下ではそのレンズの明るさが発揮され、明るい条件下では上質な描写やボケ味が楽しめる。ポートレート撮影のみならず、飛行機撮影や自然撮影など、幅広いジャンルで活躍してくれる一本だ。
(c)Koji Nakano/写真の無断転載禁止
■写真家:中野耕志
1972年生まれ。野鳥や飛行機の撮影を得意とし、専門誌や広告などに作品を発表。「Birdscape~絶景の野鳥」と「Jetscape~絶景の飛行機」を二大テーマに、国内外を飛び回る。著書は「侍ファントム~F-4最終章」、「パフィン!」、「飛行機写真の教科書」、「野鳥写真の教科書」、「飛行機写真の実践撮影マニュアル」など多数。