タムロン 70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXDレビュー|小型軽量でコストパフォーマンス抜群な望遠ズームレンズ
小型軽量な望遠ズームレンズ
ここ数年、純正、レンズメーカーを問わず、ソニーEマウント対応レンズの新製品ラッシュが凄い!ソニーユーザーとしては嬉しい限りですが、その反面次から次へと新しいレンズが登場すると物欲を抑えるのが大変なのが困りどころです(笑)そんな中、望遠ズームの王道とも言える70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXDがタムロンから発売となりました。同社のソニーEマウント対応ラインナップはこれで10本となり単焦点レンズ3本を含み超広角17mmから望遠300mmまでをカバーできるようになりました。フィルター径がすべて67mmに統一されているのでレンズごとにフィルターを揃えなくてもよいのは嬉しいポイントです。
やはり本レンズの特徴は、世界最小、最軽量の望遠ズームであるということ(2020年8月現在。同社調べ)手にすると従来の望遠レンズとのサイズ感、重量のギャップに驚かされるでしょう。長さ148mm、最大径77mm、重量545gというサイズ感は500mlのペットボトルの直径をやや太くして、3㎝程短く、そして重量を50グラムほど増やした感じです。タムロンのフルサイズミラーレスレンズ用としてはマウントの部材に初めて特殊処理の高強度Al-Mg 系合金を採用。十分な強度と軽量化を実現するなど、昔から小型軽量にこだわってきたタムロンの意思を感じます。
小型化の秘密は望遠側の開放値を6.3に抑えたことにあります。一見暗いと思うかもしれませんが、近年のソニーαシリーズの高感度性能を考えれば問題ではないと感じるとともにそのおかげでレンズがこれほどまでに小型軽量化できていると考えれば納得です。なお、焦点距離によるF値の推移ですが70-151mmがF4.5、152mm-276mmが5.6、277㎜-300㎜が6.3となっており、実際6.3になる焦点域は望遠側の一部だけです。もし光量が少ないシビアな条件でどうしても5.6が使いたい場合は276㎜以下の焦点域を使い、トリミングをするという使い方も選択肢に入れておきましょう。
使用感と操作感
使ってみてまず感じるのは70-300mmという焦点域の使いやすさです。同社でいうと70-180mmF2.8DiⅢ VXD、純正レンズでいうところの70-200mmなどいわゆる大三元・小三元の望遠レンズや同社の高倍率ズーム28-200mmF2.8-5.6DiⅢ RXDなどでは、もう少し遠くのものを引き寄せたいと感じることがあるものですが300㎜までをカバーしているとそのような不満はほぼ払拭されます。また100-400mm等の望遠ズームだと重量級になってしまいちょっと・・・と敬遠する方にも300mmかつコンパクトな本レンズなら軽快に持ち出せるでしょう。
AFの駆動にはRXDモーターが搭載されており、スムーズかつほぼ無音で合焦、動体にカメラを向けた際にもしっかりと追従してくれます。同社70-180㎜F2.8DiⅢのVXDモーターや純正70-300mmのリニアモーター駆動には一歩譲ると感じる場面もあったことは付け加えておきますが、実写上で不満はなくαボディ側のファストハイブリッドAFにもしっかりと対応、リアルタイム瞳AFやリアルタイムトラッキングの動作も満足のいくものでした。ソニーEマウントに関しては、各レンズメーカーにも仕様書が公開されており、それに準じた開発が行われるため、カメラ側の機能を制限なくフル活用することができますし、今後、ボディを買い替えた際にも安心感がありますね。
レンズ本体にAF/MFの切り替えスイッチはなく、ボディ側で行います。AF/MFの変更は高い頻度で行いますのでスムーズに呼び出せるようカメラのカスタムキーやファンクションメニューのわかりやすいところへ割り当てておきましょう。レンズに手振れ補正は内蔵されていませんのでボディ側の手振れ補正を頼りにすることになります。三脚使用時にはボディ側の手振れ補正をOFFにする必要があるので、AF/MF切り替えと同様、素早く呼び出せるようにカメラ側の設定をしておきましょう。このレンズを使用する前は望遠域のレンズだけに欲を言えば、レンズ側にも手振れ補正機構を内蔵してほしいと感じていましたが、小型軽量化によるホールディングバランスの良さから実際に使用してみて不満を感じることはありませんでした。但しAPS-Cのαユーザーは、ボディ内手振れ補正が内蔵されていないカメラも一部ありますので、本レンズを検討する際には注意が必要です。
描写性能
カメラのキタムラ価格では5万円台後半(2020年12月11日現在)の本レンズはエントリーユーザーでも手を伸ばしやすい価格設定のため、一見、単なる廉価版レンズ?と思われがち。しかし実写に持ち出し、撮影した写真を確認すると、決してそうではないということに気づかされます。逆に言えば「この価格でこれだけ写るのか」と感心させられる結果に。
まずは解像性能。解像度のピークとなるF8~11に絞った時は言わずもがな。高解像モデルのα7R IVと組み合わせてもしっかりとした解像力で線の細い被写体が中心となる風景撮影でも満足のいく性能を発揮してくれました。また、開放時においてもその解像力は中心付近だけでなく周辺まで保たれていますので風景的引き画においても積極的に絞りを開けた撮影ができます。そしてズーム全域にわたっての解像もポイント。ズームレンズの場合、焦点距離によって得手不得手があり、どこかで解像の良くない部分が出てくるもの。もちろんテストチャートなどを使い、詳細に解像性能をチェックすれば、焦点距離による多少のバラつきは出てくるのでしょうが、純粋に写真を撮り、作品づくりをするという点においてはどの焦点距離でも満足のいく描写が得られると感じました。
BBARコーティングによって耐逆光性能は良好。画角に太陽が入るシーンでもコントラストの低下や目立ったフレアやゴーストを感じる事はなく、近年におけるレンズ設計のレベルの高さがうかがえます。これなら安心して太陽にレンズを向けることが出来るでしょう。
ボケ味について私が気に入ったのが玉ボケ表現において玉ねぎ状の模様が入らない点。これは非球面レンズが組み込まれていないゆえ。非球面レンズによる画質向上は認めるところではあるのですが、こと玉ボケ撮影時には、非搭載によるメリットは大きいと感じます。円形絞りの採用は口径食を抑えたいときに有効。開放から2段絞ってもボケのカクつきを抑えることができるとのことですが、実写上、本当に美しいボケを得るには1段絞りくらいにとめておく方が良いと感じました。
最短撮影距離と最大撮影倍率は70mm側で0.8m/0.1倍、300mm側で1.5m/0.19倍。もう少し寄りたいと感じることもありましたが、ここは小型軽量化を優先したということでしょう。フルサイズαの7R IVやⅢなどの高画素モデルを使っている方に関してはAPS-Cモードをうまく使うのがお勧めです。また、花のアップなど望遠マクロ的な使い方が主になるという方には、ズーム全域で最短撮影距離0.85m、最大撮影倍率0.21倍、さらにMF限定ですが近接領域撮影機能を搭載し0.5倍まで寄れる同社70-180㎜F2.8DiⅢ VXDも検討の対象に入れると良いでしょう。すでに寄れるレンズを持っている方は、本レンズとの使い分けがお勧めです。
まとめ
コンパクト設計でコストパフォーマンス抜群の本レンズは「望遠レンズ購入が初めてのエントリーユーザー」や「とにかく荷物を小型軽量化して軽快な望遠撮影をしたい人」が気負いなく購入できる点でお勧めです。また、それだけではなく簡易防滴構造採用の鏡胴や本格的な描写性能から、いわゆる大三元や小三元レンズを持っているようなヘビーユーザーにも300mmまでの望遠を補う1本としてお勧めできます。長距離を歩いて撮影地にアクセスしなければならない時などの使い分け用としても検討の価値ありです。