タムロン 90mm F/2.8 Di III MACRO VXDで撮るアートな世界
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はじめに
暑かった夏も終わり、秋も深まり始めた10月の頃。タムロンから発売された90mm F/2.8 Di III MACRO VXDを愛用のカメラに装着し、秋探しへと出掛けてみた。普段、レンズは広角側を使用しての撮影が多い為、初のマクロレンズへの期待と実際に使いこなせるのかどうか、不安な気持ちが入り混じるスタートとなった。
マクロレンズの世界との出会い
いざ撮影を開始し、ファインダーを覗くとマクロレンズならではの世界に感動する。実際に目にしている世界とは違う、自然の中にある別の世界へと出会わせてくれた。足元やちょっとした木々の奥にある小さな秋はとても色鮮やかで繊細なもので、このレンズを付けて撮影するまではこんなマクロの世界に気づいていなかったと思うと、少しもったいなかったとも思える程の素敵な光景の数々だった。
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■撮影環境:1/2500秒 f/3.5 ISO280
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■撮影環境:1/800秒 f/3 ISO800
今までの撮影では見逃していたマクロの世界に引き込まれていくうちに、当初抱いていたマクロレンズへの不安はなくなり夢中で撮影していた。小さな秋とのひとつひとつの出会いはとても楽しい時間となった。
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■撮影環境:1/160秒 f/4 ISO100
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■撮影環境:1/1600秒 f/3.3 ISO720
マクロレンズならではの水滴と玉ボケ
この日は朝から小雨混じりの曇天となり、普段の撮影であればベストコンディションとはとても言えないような天候。
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■撮影環境:1/2500秒 f/4.2 ISO2200
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■撮影環境:1/2500秒 f/3.8 ISO1400
でも、そんな天候はマクロレンズにとっては更に独自の世界を見せてくれる好条件でもあった。彼岸花や雑草についた水滴の美しさや玉ボケの可愛らしさに魅了され、時間を忘れて撮影し続けてしまう。
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■撮影環境:1/2500秒 f/4 ISO220
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■撮影環境:1/500秒 f/3.8 ISO900
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■撮影環境:1/2500秒 f/3.3 ISO450
一見、難しそうに感じるが撮影の際はどこにピントを合わせ、どこをボケさせるのかの両方を意識し、それらのバランスを構図の中に自分好みに配置していき、アートな秋の一枚を撮る事が出来る。今回はマクロレンズの作例としての撮影ではあったが、自分の作品にもしてくれるレンズである。
90mm単焦点としてポートレート撮影
マクロレンズとして魅力を堪能しながら、次はもうひとつの顔とも言える90mm単焦点という中望遠レンズとしての撮影。もちろんモデルさんに協力してもらい自然の中での撮影スタイルである。
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■撮影環境:1/200秒 f/2.8 ISO110
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■撮影環境:1/200秒 f/2.8 ISO100
90mmレンズならではのボケ感を利用しながら、モデルさんとのアプローチを長めにとれる利点を活かしての撮影。それぞれの一枚から柔らかな表現としっかりした描写力を感じることが出来る。
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■撮影環境:1/40秒 f/2.8 ISO640
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■撮影環境:1/60秒 f/2.8 ISO720
屋外での撮影などでは特にスペースに制限される事もないため、自ら動いて自分の好きな構図で撮影することでバリエーションも増える。
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■撮影環境:1/8000秒 f/2.8 ISO450
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■撮影環境:1/640秒 f/2.8 ISO100
マクロの世界を柔らかく滑らかな描写で見せてくれた同じレンズで、全く違う表現となる中望遠のポートレートとして被写体を際立たせる描写に、このレンズの振り幅の大きさに感動する撮影となった。
特長や個性を活かして自由に撮影
撮影しながら、このレンズならではの特長や個性を感じとることによって、頭で考える撮影から感性で自由に撮影するスタイルへと変化する事が出来る。
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■撮影環境:1/200秒 f/3 ISO140
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■撮影環境:1/1600秒 f/3.5 ISO640
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■撮影環境:1/6400秒 f/2.8 ISO720
柔らかなボケ感とシャープな描写力を利用して撮影する事で、フワフワした印象だけではなく、しっかりとした一枚に仕上げてくれるのもこのレンズならではの特長であり魅力でもある。
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■撮影環境:1/400秒 f/3.2 ISO100
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■撮影環境:1/6400秒 f/3 ISO100
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■撮影環境:1/500秒 f/3 ISO200
オーソドックスな構図だけではなく、自分の創造力を活かし、新たな自分の表現も見出してくれる。特にこの時期は紅葉し始めた色鮮やかな秋と可愛いらしく咲いた秋の花などもあり、とても楽しい撮影となった。
おわりに
今回の撮影で使用させて頂いたタムロン「90mm F/2.8 Di III MACRO VXD」は記事内でも触れている通り、たくさんの魅力があるレンズだと感じた。性能的な部分の他にも、使用感としてはマニュアル撮影で大切なトルク感がとても良い使い心地だったり、オートフォーカス時に合焦範囲を制限出来るフォーカスリミッタースイッチは、無理な姿勢での撮影が多くなるマクロ撮影時にはストレスを軽減してくれるありがたい機能だった。
そしてこれまで90mmレンズの単焦点というと、どちらかというと特定の使い方に特化したレンズの印象があったのだが、作例からもわかる通り、多くのシチュエーションにも対応でき、それぞれの魅力を引き出してくれる事に大変驚いた。やはり歴史あるレンズなだけに、その辺りはかなりの完成度であり、写真家として使い込みたいレンズのひとつである。
■写真家:yuki
新潟県の美しい四季の景色を求め、絶景から日常の見慣れた風景など、魅力を感じるロケーションでの撮影を中心に活動。構図や撮影方法など独自の視点で行い定番に拘らない事が基本スタイル。