カールツァイス Zeiss Batis 2.8/18 レビュー|オールマイティーに使える超広角レンズ
はじめに
前回はBatis 2/25のレビューを書きましたが、今回はそれよりもワイドなツァイスの超広角AFレンズ「Batis」の18mm F2.8レンズです。高画素のカメラの性能を余すことなく発揮できる魅力あるツァイスレンズをご紹介します。
今回の18mmという焦点距離のレンズの画角は99°。普段使いしている標準のレンズよりもかなりワイドな画角になります。超広角レンズのジャンルに入りますが、12mmや16mmほどワイドではないので、使い勝手はそれほど難しいものではありません。
「Batis 2.8/18」が発売されたのは2016年5月で発売開始後5年ほど経過していますが、今回あらためて「Batis 2.8/18」の魅力を探ってみました。
ツァイス Zeiss Batis 2.8/18の魅力
Batis 2.8/18の光学系は、ディスタゴンタイプの18mmレンズ。このディスタゴンは歪曲(直線が歪む)が非常によく補正されているのが大きな特徴です。ZEISS Batisレンズシリーズの中では一番ワイドなレンズ。レンズ構成は10群11枚で絞り羽根は9枚です。
Batisシリーズは防塵防滴シーリングになっており、埃や水しぶきからレンズを守る特別設計のおかげで、厳しい野外の撮影でも安心して使用することができます。
現状で「Batis 2.8/18」と競合しそうなFEマウントのレンズ(結構性格が違うレンズですが……)になると、ソニーの「Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS」や「FE 20mm F1.8 G」になるでしょうか。すこし比較してみました。
Vario-Tessar T*
FE 16-35mm F4 ZA OSS
|
Batis 2.8/18 | FE 20mm F1.8 G | |
焦点距離 |
16-35mm |
18mm |
20mm |
画角(35mm判) |
107-63° |
99° |
94° |
開放絞り(F値) |
F4 |
F2.8 |
F1.8 |
最小絞り(F値) |
F22 |
F22 |
F22 |
絞り羽根 |
7枚 |
9枚 |
9枚 |
最短撮影距離 | 0.28m | 0.25m | 0.19m |
フィルター径 |
72mm |
77mm |
67mm |
外形寸法 最大径x長さ |
78 x 98.5mm |
100 x 80mm |
73.5 x 84.7mm |
質量 | 約518g | 約330g | 約373g |
こうやって並べてみると「Batis 2.8/18」の独特な筐体デザインでシンプルかつ美しく印象的です。このレンズを単体で見た時は、随分と大柄な太目のレンズだなと思いましたが、使ってみると長さは短く重量も軽いので意外に扱いやすいものでした。
「Batis 2.8/18」と他の2本のスペックを比較してみたのは、普段から愛用しているレンズとどんな違いがあるのか気になったからです。「Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS」は、風景撮影の際によく使用しているレンズ。ツァイスレンズらしく発色も良く、レンズ自体もそれほど大きくなく非常に扱いやすく使用頻度も高いレンズです。もう一つの「FE 20mm F1.8 G」は、街中スナップする時によく持ち出すレンズ。ツァイスレンズに匹敵するGレンズですが、重量も軽く最短撮影距離も短く万能的な使いやすさと表現力を兼ね備えているレンズです。
「Batis 2.8/18」で撮影していて感じたのは、「FE 20mm F1.8 G」の使いやすさと「Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS」のツァイスレンズの魅力を合わせ持ったレンズということ。実際に使い始めてすぐに馴染めたのも、筆者が気に入っている要素がしっかりとこのレンズに詰まっているからだと思います。
実際に撮影しても発色、解像度、ボケのどれをとってもレベルは高く、歪みの不満も感じませんでした。欲を言えば、もう少し寄れるレンズ(最短撮影距離が0.2cmぐらい)であると良いと感じたぐらいです。
ツァイス Zeiss Batis 2.8/18で街中散策スナップ
「Batis 2.8/18」を持って街中スナップをしてきました。18mmという画角は都会風景の高層ビルを撮影するには、とても重宝するワイドな画角です。また、歪みが少なく非常にシャープな描写をするレンズなので、直線的な都会のビル群などを撮影するのにとてもマッチしたレンズです。
ビル群などを撮影していたのですが、あまりの天気が良く暑かったので、少し涼みがてら品川駅近くのアクアパーク品川水族館に移動して撮影をしてみました。
水槽内のクラゲや魚をガラス越しで撮影してみましたが、かなり暗い場所とガラス越しという悪条件でも、オートフォーカスはしっかりと仕事をしてくれる優れものです。
人気のドルフィンパフォーマンスを水がかからない程度の前の席で撮影してみました。「Batis 2.8/18」は防塵防滴のレンズですが、ドルフィンパフォーマンスのプールの水は海水なので、一応水のかからない位置で撮影しましたが、防塵防滴仕様のレンズはいざという時の安心感があります。
「Batis 2.8/18」は18mmのワイドなレンズなので、イルカのパフォーマンスをアップで撮影する事はできませんが、パフォーマンス全体の雰囲気を撮影するのには丁度良い画角です。
ドルフィンパフォーマンスの後は、JRガード下(新橋~有楽町)を散策しながら撮影してみました。昭和レトロ感が漂う場所やオシャレなお店もあり、スナップ撮影には面白いスポットです。雰囲気を表現する為に、少し彩度を落としてレトロ感を表現する撮影と白黒モードで撮影をしてみました。
ツァイス Zeiss Batis 2.8/18で風景撮影
次に「Batis 2.8/18」を持って自然風景を撮影してみました。単焦点レンズですのでズームレンズのような便利さはありません。自分の脚で動いて構図を考える調整する必要があります。普段ズームレンズを使用していると忘れがちな部分をあらためて思い出させてくれます。
もちろん、どうしても動けない場所もありますが、「Batis 2.8/18」の画角をどう活かし、ツァイスレンズの魅力を最大限に引き出すことができ、イメージ通りの撮影ができるか、試行錯誤しながらいろいろと考えて撮影するのは、自分にとって凄く有意義な撮影時間でした。
稲刈りが始まった棚田ですが、18mmという超広角レンズのおかげでしっかりと棚田全体を押さえる事ができ、奥行き感も写し込む事ができています。薄曇りの空でしたので空の表情が乏しいですが、緑のグラデーションの表現力は流石がツァイスレンズだと感じます。
棚田を後にして房総半島の最南端に向かい、海辺で少し撮影をしてみました。砂浜に寝転がって「Batis 2.8/18」の最短撮影距離まで寄って、絞り開放で撮影。18mmという超広角レンズと思えない様な、前後の大きなボケを表現することができます。
先の街角スナップ撮影でも実証されていますが、風景撮影においても直線的な被写体を入れて撮影すると、シャープで歪みの少ないレンズだと実感させられます。
超広角レンズの使用趣旨から少し外れますが、下の写真は「Batis 2.8/18」でフルサイズではなくAPS-Cモードで27mm相当(35mm換算)で撮影したコスモスの写真です。高画素機のフルサイズカメラを使えば、APS-Cモードで撮影しても十分な画素数も残り、場合によっては標準レンズの様な画角でも撮影できます。
まとめ
「Zeiss Batis 2.8/18 」を自然風景と街角スナップに持ち出していろいろと撮影してみましたが、風景撮影にも不満はまったく無くオールマイティーに使えるレンズです。
ですが個人的にはこのレンズの一番得意とするのは街角スナップ撮影だと感じます。超広角を感じさせない使いやすさと歪みの少ないシャープな解像感は、建築物や人工的な構造物などを含んだ被写体撮影にベストなレンズではないでしょうか。
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。