修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2011.10.28
ライカマウントのニッコールレンズ。なかなか見かけない民具でもある。
ところが、簡単に分解できると思ったのが大間違い。後レンズは外れた。しかし、鏡筒とヘリコイド部の奥まった隙間に締め付け環が鎮座しているから専用治具がないと外せない。
貴重な民具を引き継ぎたい思いだけでは無理なようで、諦めようとも思いました。
そう言えば、近所で旋盤の音がしている。
引き物を頼むにあたっては図面が必要だ!ノギスしか持ち合わせていないので採寸が出来ない。現物合わせで頼めないか?懇意にしている元町会長の自宅を訪ねたのです。
一軒目は断られました。あそこに息子さんがコンピューターの工作機械を扱っているからと二件目で仮引き受けして頂けました。引き受けて頂きました折りの話は「父親の領分だ!」と言っていました。手動旋盤で寸分の狂いもなく削り出す職人のようです。
誂えた治具を納めますと先端の突起が締め付け環の凹みを捉えます。
締め付け環が外れ、鏡筒部とヘリコイド部に分離しました。
図面が無くても職人の感はさえています。
誂えた治具と締め付け環がドンピシャリと咬合しています。(赤○部)
治具に残されたバイトの痕跡が美しい。
押さえ環を外し、絞り値環のセットネジ(赤○)を緩めると外れる。
絞り値作動軸を抜き、絞り値作動環を反時計方向に回すと外れる。
前者が外れたことで前レンズがネジ等で固定されていないことが確認できた。
すんなりと前レンズが外れる。結果、最初に前レンズを捻れば外れたかも知れない。
けれども、非常に危険な行為でもある。もしも、セットネジで固定されていれば、ネジ山を痛めてしまう。
押さえバネを外す。
今回、町の職人の手助けもあって油分の湿潤で張り付いた絞り羽根を洗浄することが出来た。 この先、誂えた治具の働く機会は訪れないかも知れない。隠居人の引き継がせたいとの思いだけである。誂え代は修理代には届かない。 需要の有無は分からないが、キタムラリースに加えられないか?チョイトばかり心に思う隠居人です。
あなたの大切なお写真の現像・保存・プリントは写真専門店カメラのキタムラにおまかせください。