路上観察紀行
路上観察は、自分のイマジネーションを
刺激するモノとの出会いです。

「奥の細道」の初日は芭蕉の原典の記載に合わせて、深川から千住へ向かいました。この日はあいにくの雨模様で、私はいつもは雨の日は出歩かないのですが、歩いてみると、なかなか風情があるんです。深川で一番印象に残っているのは、路上に女の子の小さな運動靴が片方だけ、なぜか置き去られていたんです。そんなに古い靴ではない。まだ十分履けるんですよ。それが片方だけ、そこに置き去られていて、もう片方がない。不思議なんですね。持ち主の女の子はどうしたんだろう、片方の靴をなくしたまま家に帰ったんだろうか、親にしかられたんではなかろうかと、いろいろストーリーを考えてしまうわけです。
片方だけ置き去られていた靴。もう片方はどうしたのだろう? いろいろとストーリーが思い浮かぶ。(深川)
フルイに「タネ」という看板のある種屋さん。今ではこうした看板を出している店は珍しい。(幸手)
今市は大谷石の産地なので、消防団の倉庫まで大谷石で作られていた。大きな顔にも見える。(今市)
 
 
 
 
 
 
 
 
石灯籠の上に変なものが乗っているな、と思ったら、石で彫られたカボチャだった。(千住)
 路上観察の面白味の一つは、このように路上の「おやっ?」と思うモノの中に、自分のイマジネーションを刺激するものがある、そうしたモノとの出会いなんです。この赤い靴にしても、近所の人に聞けばすぐに理由がわかってしまって、なあんだ、ということになるかもしれない。それを聞かずに、自分のイマジネーション、ストーリーを広げてゆく。それが面白いんです。
 千住ではカボチャの石灯籠がありました。千住大橋のすぐ側の小さな神社にあった石灯籠なんですが、宝珠のところがカボチャになっているんです。この辺はどうやら昔、野菜市場があったところらしい。それでカボチャなんでしょうけど、カボチャの石灯籠というのは、日本でもここだけにしかないんじゃないでしょうか。石灯籠の宝珠をカボチャにしてしまうという発想が面白いんです。宝珠は宝物と同じような意味ですから、これを奉納した人物は、もしかするとカボチャで一代を築かれた方だったのかもしれませんね(笑)。これはこの石灯籠を見た私の勝手な解釈なんですが、そうした解釈をさせてくれるところが面白いんです。
頭でっかちの狛犬に出会ったのでパチリ。本当は怖いはずの狛犬でも、好ましいヤツもいる。(小山市)
 
 
 
 
 
雨樋の水が跳ねないように、自作で工夫している。日本人の水に対する配慮がよく出ている。(小山市)
 
 
日光の東照宮には、よく見ると不思議な図像がたくさんある。子どもが犬と遊んでいるところ。(日光東照宮)
 
 
 
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