特集
雪に露出補正は必要ない。

■雪は本来、無色透明なもの。
 光の具合によって色は変わる。
●アマチュアの方々に冬場の撮影のアドバイスをいただければと思います。

 アマチュアの方が冬に撮影を行う場合、失敗しやすいのは露光なんです。美しい雪原を撮影し、仕上がった写真を見てみると、自分の見た印象とは違っている。自分が見た雪原には、もっとボリュームがあったはずなのに、写真は平面的に写っている。そうした失敗が多いのです。これは露出補正が原因で、雪面に露出補正は必要ないのです。そもそも雪は何色だと思いますか?

●白ではないのですか?

 いいえ、雪は無色透明なんです。白く見えるのは日光を反射しているからなんです。そして、私にとっては、雪は青なんです。

●青いんですか?

そうです。雪面には凹凸があって、これを雪原のボリュームとして感じるのですが、この凹凸を作っているのは雪面に映った影なんです。晴天時の雪上の日陰は青空を反映して青くなるんです。曇天ではグレーになりますし、夕日に照らされれば雪は赤くもなります。この、雪面上の影をとらえなければ、ボリュームのある雪面は撮れないのです。

 雪が白いという一般的な概念にとらわれると、プラスに補正したくなりますね。しかし、日陰に露出を合わせると補正する必要はないんですよ。それをプラスに補正してしまうので、結果的に露出オーバーになってしまう。補正したとしてもプラス1で十分です。

 もちろん使用するカメラによっては中央重点測光の露出モードの場合もありますから、この場合はプラス値を変えて、たとえばプラス2にしなければならない場合もあるのですが、現在のカメラの場合、露出は多分割測光で計っていますから、おおむねプラス1の補正で問題はないと思います。私の場合、マイナスに補正して撮影することも少なくありません。
氷点下の続く滝壺では、飛沫や落水が氷結する姿を見ることができる。 凍結と雪積が繰り返され、ぶ厚く成長した氷結は神秘的な青い色彩を放つ。部分的なねらいで色彩を強調した。
■カメラ:EOS-1N レンズ:EF300mm F2.8L 絞り:f11 AE +1/2補正 フィルム:RVP 三脚使用 撮影地:岐阜県平湯大滝
アラスカの冬は降雪こそ少ないが、平均気温がマイナス40度にもなる極寒の地である。そんな地にあってこの沢の流水は温泉が流れ込むために凍ることがない。
■カメラ:EOS-1N レンズ:EF28〜70mm F2.8L 絞り:f14 AE フィルム:RVP 三脚使用 撮影地:アラスカ・チェナ
モノトーンに近い冬景色の中で寒椿の鮮やかな彩りは人目を引く。積雪と組み合わせることで一段と風情が増すが、雪解けの早い都心部では素早い対応がチャンスにつながる。
■カメラ:EOS-1 レンズ:EF100mm F2.8 マクロ 絞り:f4 AE +2/3補正 フィルム:RVP 手持ち 撮影地:愛知県尾張旭市
●冬の晴れ間に美しい青空が広がると、雪も青くなるわけですね。青空と雪面とは美しいコントラストを見せてくれますが、こうした青空を撮るのにもコツというのはあるのですか?

 青い空を撮るときは順光で撮ります。青空というのは太陽から最も離れたところが一番濃いんです。太陽のそばでは空は白くなってしまいますが、これはそれだけレンズに多くの光が入ってきてしまうためなんです。順光は太陽から離れていますので、空も青くなります。もちろん空気の澄み具合もあります。日本海側ですと鉛色の空になってしまいますので、太平洋側のほうが冬の青空を撮りやすいといえるでしょう。
■失敗し、その失敗を一つ一つ考えていく。
 それが写真にオリジナリティを与えていく。
●先ほどのお話に戻りますが、マイナスに補正するのはどのような場合なのですか?

 これは表現テクニックとして露出をコントロールする場合です。たとえば氷を撮っているときに、クリスタル感を強調するために、プラスに補正することがありますが、そうすると、たしかに明るくはなります。しかし氷の持っている硬質な冷たさは、かえって薄れてしまうのです。ですから、こうした場合には、逆にマイナスに補正して全体を暗くし、ハイライトを強調することで、氷の硬い冷たさを表現することができるんです。これは雪面の撮影の場合も同じです。

 こうした露出コントロールは、特にビギナーの方には難しいことだと思うのですが、失敗を恐れずにチャレンジしていくと、冬場の撮影がずっと面白いものになってくるはずです。

●失敗することで成長してゆくわけですね?

 そうです。なぜ失敗したのか、どうすれば失敗しない写真が撮れるのか、それを一つ一つ考えていってほしい。それが結局、オリジナリティあふれる写真を撮る近道だと思います。
雪原の凹凸をフォルムとして捉えた。ポイントは日陰から日向にかけての明暗を利用してボリューム感をだすこと。そのためには決して露出オーバーになってはいけない。
■カメラ:EOS-1N レンズ:EF70〜200mm F2.8L 絞り:f16 AEマイナス1/3補正 フィルム:RVP 三脚使用 撮影地:長野県立科町
 
 
もどる すすむ

当サイトに掲載されている写真・テキスト等を無断で複製・転載することを禁じます。