冬場の撮影では、
撮影以外の知識や装備も重要。
■冬場の撮影では、防寒に対する一般的な知識が必要。
●寒いこの時期の撮影で、そのほかに知っておく必要のあることは何ですか?
冬の撮影の場合は、撮影の工夫も必要ですが、撮影以外の防寒に対する一般的な知識が重要です。撮ろうと思ったその時に、寒くてふるえていたのでは、いい作品はできませんからね。
●具体的には、どういったことがありますか?
たとえばウエアの場合ですが、冬に撮影をしようとする場合、何枚ぐらい重ね着しますか?
●下着も加えると4枚です。
私は3枚です。
●下着も加えてですか? 意外に薄着なのですね。
ええ。冬は寒いので、ついつい厚着をしたくなりますが、保温性というのは衣類と衣類との間に空気の溜まりを作った方が効果的なんです。ですから、ゆったりとしていて防寒対策がしっかりとされているものを選び、少なめに着るのがコツです。
下着は、素材で言うと綿はだめです。汗をかいた場合に凍ってしまいますのでお薦めできません。また、冷気は襟や袖から入り込み、体を冷やしますから、襟や袖がしっかりと閉じられるものがいいんです。足下からも冷えてきますから、私の場合、靴はマイナス40度の極寒でも保温性を保てるものを持っています。
こうした冬場の撮影時の装備は登山用品売場などで整えるとよいと思います。
●機材にはどのような工夫をされていますか?
今のカメラは丈夫ですから、それほど心配することはないと思います。ただ、レンズの防滴対策は必要です。私は雨の時でもレンズにレインウエアを付けず、代わりに特別仕様のものを使っています。
フラットな雪原でもわずかな凹凸があれば太陽の角度によって影ができる。帯のように横切る影のラインをメインに、極力シンプルに画面構成する。
■カメラ:EOS-1N レンズ:EF35〜350mm F3.5 -5.6L 絞り:f16 AE +1/3補正 フィルム:RVP 三脚使用 撮影地:長野県立科町女神湖
落葉松林を前景にして20ミリの超広角で狙った夕焼け。
雲のない日の夕焼けは、日没後約30分で色彩のピークを迎える。
■カメラ:EOS-1N レンズ:EF20〜35mm F2.8L 絞り:f5.6 AE +2/3補正 フィルム:RVP 三脚使用 撮影地:長野県望月町
凍結した湖面に降りた霜が徐々に解け始めた。このわずかな時間の間に湖面はさまざまな表情を見せてくれる。湖水から伸びる木立ちをアクセントにしてまだら模様を捉える。
■カメラ:EOS-1N レンズ:EF70〜200mm F2.8L 絞り:f14 AE+2/3補正 フィルム:RVP 三脚使用 撮影地:長野県王滝村
●特別仕様といいますと?
実は、業務用のシャワーキャップなんです(笑)。ただし、ホテルに備え付けてあるようなものは、破けやすいのでいけません。美容院で使っているものがいいんです。ただ、普通サイズのシャワーキャップでは、小さすぎて、望遠レンズなどには使えません。それで美容院の知り合いに分けてもらった、大きいサイズのものを使っています。これを使用すると300ミリのレンズでもカバーすることができるんです。
こうしたカバーの類は不要品を利用して自分で工夫するといいですね。また、バッテリーは吹きさらしでは使用できなくなることもあるので、すぐに入れ替えられるように、ユニットごとポケットに入れています。
■スキー用品も工夫しだいで撮影に応用できる。
●雪の上では三脚が立てづらいという意見をよく聞きますが…?
コツがあるんですよ。三脚を全開にして立てようとすると、雪の抵抗で閉じてきてしまい、うまく立たないんです。そこで、こうした軟らかい場所で三脚を立てる場合は、少し閉じ気味にして立てるんです。そうすると立てたときに余裕ができますから、その後で広げます。立てた後で開くんです。そうすると、しっかりと立てることができます。
もう一つの方法として、スキー洋品店で売っている、ストックの先の部分を、三脚の先に取り付けるという方法も効果的ですよ。三脚を使用する場合のストッパーには他にもあると思うのですが、大きすぎると雪面に抵抗がかかりすぎて、撮影するときにブレを誘発してしまうことがあるので、選ぶときには注意した方がいいですね。しっかりと雪を固めてくれて、しかも先がきちんと雪面にささるものがいいんです。
スキー用品のカタログを見ると、ストックの先にもアルペン用、モーグル用など、いくつかあるのですが、モーグル用は種類も豊富で、中には雪面に接する内側がえぐれているものがあるんです。これですと雪をしっかりとつかんでくれますから、特に具合がいいですね。
●最後になりましたが、先生が冬場の撮影で、特に苦労されていることはありますか?
ありますよ。ラッセルです(笑)。新雪は軟らかいですから、機材を置いて軟らかい雪をかきわけ、かきわけ進みます(笑)。足下がズボッと落ちてしまい、首まで雪に埋まったこともありますよ。出られなくなって困りました。皆さんも雪の上では、足下に十分に注意された方がいいですよ。
●わかりました(笑)。本日はお忙しいところ、貴重な助言をいただき、ありがとうございました。
丘を通過する雲が朝焼けでサーモンピンクに染まる。その色はさらに地上にも反射し雪面を淡いピンクに色づける。そして雲が通過すれば色の演出は一段落する。
■カメラ:EOS-1N レンズ:EF28〜80mm F2.8-4L 絞り:f16 AE +1/3補正 フィルム:RVP 三脚使用 撮影地:長野県立科町〈撮影〉田中達也氏
荒れ模様の天候から気まぐれな太陽が顔を覗かせた。逆光で見る雪面は暗い灰色。時折吹き抜ける強風を追うように地吹雪が駆け抜ける。山上の牧草地で出会った厳しい自然美である。
■カメラ:EOS-1 レンズ:EF28〜70mm F2.8L 絞り:f11 AE -1/3補正 フィルム:RVP 三脚使用 撮影地:愛知県津具村
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