【燃焼】今年の夏は狂ったように暑く台風が次々と上陸し、16号台風が去った後の空は燃焼。
■カメラ:ペンタックス6×7II レンズ:ペンタックス67ズーム55‐100mm 絞り:f11 シャッタースピード:オート 
PLフィルター使用 フィルム:RVP 三脚使用 撮影地:
山梨県山中湖 8月

【白露の原】冷え込んだ早朝、チカラシバの穂に露が一面に付着し、富士が霧の間から顔を出した一瞬です。
■カメラ:ペンタックス6×7II レンズ:ペンタックス67ズーム55‐100mm 絞り:f16 シャッタースピード:オート フィルム:RVP 三脚使用 撮影地:静岡県富士宮市猪之頭 10月

【夕照の装い】春の雪が積もったばかりの夕方、雲が切れて赤く染まりかけた富士が見え、寒さに耐えながらの1カットです。
■カメラ:ペンタックス6×7II レンズ:ペンタックス67 300mm 絞り:f22 シャッタースピード:オート PLフィルター使用 フィルム:RVP 三脚使用 撮影地:静岡県富士宮市西臼塚 3月
一人になった時、写真という生きがいを見つけた。

 しかし、写真を撮りつづけていくうちに新たに生まれたのは『自分の写真は本当にこれでいいのだろうか?』という悩みでした。また、家庭との両立も思いのほか大変で、しばらくはカメラから遠ざかっていたそうです。
「その後、離婚もして親も他界してしまい、気が付くと一人ぼっちになっていました。これからどうしようと悩んでいた時に、自分には写真があることに気付き、写真をこれからの生きがいにしていくことを決意したんです」。
 そこで、各地で開催されている写真展などに積極的に出かけ、いろいろな作品を見てまわったそうです。そして、ご自身が目指す方向と合っていると思われた日本写真家連盟に入会されたのです。そこでは川口邦夫先生や、本誌でもおなじみの竹内敏信先生が講師をされていました。
「ブランクがありましたので、とにかく必死でした。竹内敏信先生は当時から大変人気がありましたが、講義の時はいつも最前列で、一言一句聞き漏らすことのないように受講していました。竹内敏信先生からは、厳しくも温かいさまざまな指導を受けることができました」。

撮影旅行の帰りに車窓から見た
富士山に衝撃を受けました。


 竹内トキ子さんは旅行をしていても、自然と目が向くのは、空に浮かんでいる雲の存在なのだそうです。だから、カメラのレンズも自ずと雲へ向かっていました。
 そんなある日、東海道本線の夜行列車に乗り東京へ帰ってくる時の明け方に、静岡県の富士市辺りを走行している車窓から見た富士山の姿に大きな衝撃を受けたそうです。
「ちょうど笠雲のかかる富士山が、朝焼けに照らされていたのです。その美しく幻想的な光景を目にした途端、全身が雷に打たれたような衝撃を受けました。自分がいままで撮ってきた写真は一体何だったんだろうと思いました。あまりにも身近にありすぎて、富士山の存在を軽視していた自分を恥じました。そして、その魅力を再認識したのです」。
 ところが、いざ富士山を本格的に撮りはじめてみると、その魅力の奥深さや撮影の難しさを痛感させられ、途方もない被写体であることに気付いたそうです。
「日本全国のどんなに素晴らしい所と比べてみても、気象条件に恵まれた時に富士山が見せる表情に勝るものは無いと確信しています。だから、私以外にも富士山の魅力の虜になっている人が数多くいるのだと思うのです」。

現在では生活のすべてが、
富士山の撮影を中心に回っています。


  「現在は、東京の調布市に住んでいます。運転免許も取得していますので、富士山の麓までは中央高速道路を使えば約1時間で到着できます」。
 常に富士山の気象情報には注意を向け、いい条件が揃いそうだと思ったら、すぐに車に乗って富士山へ向かわれるそうです。
「でも、皆さん思うことは一緒のようで、現地に着いてみると、もうたくさんの三脚が立っていることも多いんですよ」。
 あまりにも人が多い時は、撮影をあきらめて帰ってくることもあるとか。
 また、地球温暖化といわれている近年、何故か以前に比べて冬場に雪が多く降るようになり、車が撮影ポイントまで行けないため、重い撮影機材を持って歩くこともあるそうです。女性であるハンディキャップを感じるのはそんな時だとか。
 最後に富士山を撮るコツについてうかがったところ、「やはり撮影する場所をよく理解していないと、なかなかいい写真は撮ることができない」と、おっしゃっていました。富士山を撮りはじめた頃は、年間で200日も通われた方ならではのアドバイスではないでしょうか。
「富士山から『もう来なくていいよ』と言われるまでは、富士山と向き合っていきたいんです」と語る竹内トキ子さん。これからも富士山一筋に、素晴らしい写真を撮り続けていかれることでしょう。
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