同じ被写体をずっと追いつづけていくと、
被写体に対する見かたや感じ方に変化が出てくる。
───「気に入ったホテルには何度も足を運んだ」と先ほど伺いましたが、ホテルに限らず、同じ被写体でもその度に受ける感じは違うのでしょうか?また、新たな発見があるのでしょうか?

 違うものが見えてきます。例えば同じ場所に桜の花を撮りに行くのでも、毎年行く度に違う発見があります。
 また屋久島に通っていたときは、行く度に自分自身の感じ方が変わってきているのがわかって面白かったです。アマチュアの方でも同じ被写体をずっと追いつづけていくと、テクニック上のことではなく、撮った写真に変化が現れます。被写体に対する見かたや感じ方に変化が出てくるはずです。何がいいのか、何が好きなのかがはっきりしてきます。
 それは自分自身が感動し、刺激を受けることから得られるものです。映画を観る・小説を読む・音楽を聴くことからでもインスピレーションが涌き、自分の気持ちが高まっていく。ですから皆さんも撮影には車で行かれることがあると思いますが、車の中で聴く音楽なども大事な要素かも知れません。

パレルモでいちばん格調の高いホテルのレストラン。
■カメラ:ペンタックス645N レンズ:45-85mm 絞り:f11 シャッタースピード:オート フィルム:プロビア100 撮影地:イタリア シチリア グランド・ホテル・ヴィラ・イジエア


写真にはシャッターを切るときの気持ちが表れます。

───現地の雰囲気を味わい、様々なことを感じ取ることも大切なのですね?

 やはり旅は非日常的なことなので、そこでしか得られないものがあります。先日も面白い体験をしました。普通はホテルの撮影には一回出かければ、自分でも納得のいく作品ができるのですが、都内のあるホテルを撮影したときは一回ではいい写真が撮れなくて、もう一度日を改めて撮影をしました。
 これは自分の日常生活との距離が近すぎて、気持ちの切り替えがうまくできなかったんだと思います。やはり、都内のホテルであっても事務所から直接向うのではなく、ホテルの最寄駅などから出かけてチェックインをするなど、自分の気持ちを高める作業が必要だったのではと思います。
 それに、海外や地方に比べると、あまりにも近くにあるので、もしダメでも撮り直せばいいという気持ちが、どこかにあったのでしょう。
自然の姿をそのまま残した公園。草の合間から顔をのぞかせた睡蓮のたたずまいに、モネの夢を垣間見た気がした。
■カメラ:ペンタックス645NII レンズ:150-300mm 絞り:f5.6 シャッタースピード:オート フィルム:フォルティア 撮影地:ハワイ島 トロピカルボタニカルガーデン
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