銀座には天使がいます。そして大きな黒い猫もいます。
 と読んで「ハハーン」と思いついた人はその趣味がある人か、相当に注意力の旺盛な人に違いありません。
 そうです。それは銀座の街角にあるさりげない彫刻のことです。矢をもった天使は建物の角で、誰に幸運の矢を当てようかと道行く人を観察していますし、大きな黒猫は「まっ、ゆっくりしていきなさいよ」とでも言わんばかりの悠々さで高層ビルの脇の空間に鎮座しています。どちらも銀座の人気者なので、よく、足を止め、カメラに収めている人を見かけます。
 カメラを持って外出するとこんな楽しみに出会えます。それが外国、特にヨーロッパやアメリカなどであればその楽しみはもっともっと大きなものになります。なぜならばその古い建物にはさまざまな彫刻が施してあることが多いからです。単純に石柱では面白くないので亀の背に柱を立てたと見立てたものや、単なるデコレーションなど、その形や表情はさまざまですが、じっくり足をとめ、見つめてみる価値は十分にあると思います。
 写真はドイツのローテンブルクで見かけた建物の入り口通路の円い天井につけられた叫ぶ人の像です。その上には大きなライオンの顔がありました。建物を守るならばライオンの方が適任でしょうから、この人物像はいったい何のためのものなのでしょう?もの悲しそうな眼。口に手を当てる仕草からは、誰かに強く語りかけていることがうかがえます。しかし、足のつま先は馬のようになっており、これが余計に想像力をかき立てます。
 また、ヨーロッパでの楽しみのひとつは看板です。規制により表示は小さく、少なく、規律あるものに統一されていることが多いヨーロッパでは、その小さな看板に全力で思いを込めているように思えてなりません。
 カメラを持って、このような彫刻や看板などに注意を払い、徹底的に観察しシャッターを押してみる。こんなテーマを持った旅はいかがですか。
〈た〉


 当サイトに掲載されている写真・テキスト等を無断で複製・転載することを禁じます。