人物撮影では貴重なお話を聞くことができ、面白くとても勉強になりました。
――やがて先生は人物の撮影をされるようになりますが、そのきっかけはどのようなことですか?


 フリーになってから自分の力を試してみたくて、大竹先生が関わっていなかった出版社などに作品を持っていきました。まだ駆け出しではありましたが、運良く青春出版社の雑誌『BIG tomorrow』のグラビアページを担当させてもらうことができたのです。そこではタレントさんなどを撮影しました。インタビューで取材中の方を私が撮影する形式だったのですが、皆さんのお話はとても面白く、自分自身の勉強にもなりました。
 その後、今度は様々な分野で成功した経営者の方を撮影するシリーズがありました。ちょうどバブル景気の直前で、信じられないような豪華なオフィスで撮影したのも懐かしい思い出です。人を撮ることは難しいですが非常に勉強にもなります。


オレンジ色のパラソルとTシャツ。まずは視覚が敏感に色に反応した。そして長い犬の影。朝の斜光のおかげである。
■カメラ:ニコンD2X レンズ:18-200mm シャッタースピード:1/320 絞り:f7.1 撮影地:スイス



 

こんなにアマチュア写真家が恵まれている国は日本だけ。
海外に行くとそのことを痛感します。
――海外での撮影を多くされてきていますが、その理由はどのようなことですか? またお気に入りのエリアはございますか?

橋の上からボートを俯瞰で撮った。アバウトに、正体させて撮らない方が、かえって動きを感じさせる。
■カメラ:ニコンD2X レンズ:18-200mm シャッタースピード:1/125 絞り:f5.3 撮影地:スイス


 私は旅が好きなんです。趣味と実益を兼ねています(笑)。近年訪れているスイス取材は自分にとってのリラクゼーションタイムになっています。肩の力を抜いて楽しみながら撮影することができます。他に気に入っているのがトルコです。人の顔が魅力的なのはもちろんですが、東洋と西洋の文化が混ざり合っているので、“写真になる”国です。

――写真において海外と日本とではどのような違いがありますか?

 日本のようにアマチュア写真家が恵まれている国は世界中探してみてもどこにもありません。プロの写真家から直接教えを受けられ、撮影機材に関してもプロと同様のものを手に入れることができる環境が身近にあります。日本にいるとそのことに皆さん気がついていないと思います。日本ではアマチュアの方でも写真展を開催されていますが、フランスでは売上げに結びつかない写真展を開くことはありません。日本のようにアマチュアのためのギャラリーはほとんど無いんです。
 また、海外では写真を買う文化が根付いて、作品それぞれに値段が表示されています。そのような文化を日本でも根付かせて、写真の地位を向上させていけたらいいなと思っています。

――日本のアマチュア写真家を指導する中で、お感じになっていることをお聞かせください。

 私が教えているカルチャー教室でも皆さんとても熱心に学ばれています。そして撮影実習に出かける時は遠足に出かけるみたいにとても楽しそうです。
 写真を核に様々なことが楽しめる場が求められているのだと思います。ですから『フォトカルチャー倶楽部』の存在もとてもいいことだと思います。


――フォトコンテストの審査員もされている先生から応募者へのアドバイスがあればお願いします。


 有名な撮影ポイントに出かけて、他人と同じように三脚を立てて撮影することはあまり意味がありません。それよりも皆が見過ごしているところに宝石は転がっているものです。私がいつも言っていることは“石ころを宝石に変えなさい”“雑草を美しい花に変えなさい”。そのような心を持つことで写真が変わってくるはずです。
 また、コンテストの入賞作品が載っている本を見た人の中には、レベルの高さに尻込みしてしまう方も多くいます。でも自分でいい写真が撮れたと思ったらコンテストに応募してみるべきだと思います。それによって今の自分のレベルを計ることができます。

――本日はお忙しいところありがとうございました。


ホテルのテラスでティータイム。ブロンドのヘアが逆光に煌めき、辺りを優しく包み込んでいた。自然体の人の姿は何より素敵で好きだ。
■カメラ:ニコンD2X レンズ:18-200mm シャッタースピード:1/80 絞り:f5.6 撮影地:スイス

 
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