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協力:カメラのキタムラ

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冬 vol.80 SPRING|春の思い出 撮って残す 希望の春、写真の力で記憶する

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   思い出をつくる道具たち Vol.4 松本剛

思い出を作る道具たち

写真家の道具論お役立ちプロの金言撮影機材&持ち物リスト取材こぼれ話おうち編

写真家の道具論 刻々とかわる状況を撮り逃さないために Vol.4 松本剛

読売新聞東京本社写真部の松本剛さんの仕事場にお邪魔して、「新聞カメラマン」の仕事の様子や心構え、愛用の撮影機材についてお話をうかがいました。

新聞社のカメラマンは何でも撮影できなければつとまらない

 さっそく機材を拝見。ところが松本さんは、なぜか戸惑いの表情を浮かべています。その理由をうかがってみると、

「僕たち新聞社のカメラマンの場合、撮影機材の選択は、取材対象や目的によってまったくかわってくるんです。僕は「写旬」の他に、事件や事故を取材することもあるし、国会や首相官邸を訪ねたり、芸能人のインタビューを撮影したりすることもあります。その他にも、たとえばスポーツの撮影をする場合には、超望遠レンズと連写性能が高いEOS-1D Mark IVが欠かせませんし、事件や事故の場合は機動性のあるEOS 5D Mark Ⅱと高倍率ズームのコンパクトな組み合わせが必要になることもあるんです」

 なるほど。オールマイティに撮影をこなし、専門を持たないのが「新聞カメラマン」の特徴なんですね。いいかえればなんでも撮影することができなければ取材記者はつとまらないということなのでしょう。

機材はなるべく軽くして、機動性を高めたい

 取材記者のなかでも、あまり機材を多く持ち運ばないほうだという松本さん。なかにはたくさんのレンズを持って現場に出かけ、あらゆる状況に対応する記者もいるそうですが、松本さんは「そのときに持っているレンズで、撮るべきものを撮り逃さない」と考えるタイプで、「機材はなるべく軽くして機動性を高める」ことをモットーにしているとか。

「僕たちは、決められたものを撮ることよりも、刻々とかわる状況のなかで、予測のできないものを撮ることのほうが多いんです。その大切な一瞬を撮り逃さないために、

レンズ交換はできるだけしないようにしています。レンズ交換をしたり、ファインダーから目を離したりしている間に何かが起きてしまえば、シャッターチャンスを逃がすことになりますからね」

 松本さんが通常の撮影で好んで使っているのが、28-300ミリの高倍率ズームレンズなのにも理由が?

「焦点域の広いズームレンズは、どんなケースにも即対応できるので、便利なんです。一般的なズームレンズと比較すれば、レンズは暗くなり、画質も多少低下するのかもしれませんが、高倍率ズームは取材活動において最大公約数的なレンズだと思って使っています」

移動中もカメラはつねに体の近くに置いおく

 最後に松本さんは、写真を撮りつづける者としての大切な心構えを教えてくれました。それは「いつどんなときもカメラを撮影できる状態でスタンバイさせておくこと」だといいます。

「車や飛行機での移動中も、つねに1台は体の近くに置いておきます。いつどこで何が起きるかわかりませんからね。この教えは取材記者の基本的な心構えとして代々引き継がれています」

 まだまだ聞きたい話はありましたが、気がつくと時間は午後4時。朝刊の制作開始を前に、編集局がにわかにあわただしくなってきました。うかがえば、この日の松本さんは泊まり勤務。世相の今を伝える編集局は、つねに動きつづけているのです。

「新聞カメラマン」は、ネイチャーやポートレートを専門とする"写真家"とは目的が違います。しかし、現場を感じ取り、見る人に伝えるという活動は、同じく写真を撮る私たちにとって参考になるところがたくさんありました。ふだん何気なく目にし、身近に感じられる新聞ですが、そこから学んだ「大切な一瞬を撮り逃さない」技術を胸に刻み、明日からの撮影に活かしてみてはいかがでしょうか。

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プロが教えてくれたお役立ちあれこれ

  • 単焦点超望遠レンズ
  • スポーツ撮影では、超望遠レンズが欠かせません。たとえば東京ドームで行われるプロ野球の試合の場合、1塁側や3塁側からの撮影は400ミリ、センター方向からは800ミリに、焦点距離を1.4倍に伸ばすテレコンバータをつけて撮影しているとか。どちらのレンズも、EOS-1DMarkⅣのボディに装着すると、総重量は5kgを軽く超えます。それでも昔と比べると、機材の進歩でだいぶ軽くなったそうです。
  • 高倍率ズームレンズ
  • EOS-1DMarkⅣに28-300ミリの高倍率ズーム、EOS 5DMarkⅡに16-35ミリの広角ズームを装着するのが、松本さんの基本スタイル。この2本があれば、ほとんどのケースでレンズ交換の必要がなく、取材に集中できるといいます。ちなみに新聞記者は、一般のカメラマンよりも高感度で撮影することが多いため、レンズの明るさはさほど大きな問題にならないとか。車での移動中は、EOS 5D Mark Ⅱをつねに体の近くに置いています。
  • 小型パソコン・通信機器・携帯
  • 小型のノートパソコン、USB型データ通信カード、携帯電話は、取材活動に欠かせない三種の神器。速報性が求められる新聞カメラマンは、現場で原稿を書き、写真をパソコンに取り込んで新聞社に送らなければなりません。ときにはPhotoshopなどで簡単な写真の加工を行うことも。また、松本さんは取材中いつもおしりのポケットにミニサイズのメモ帳をしのばせています。
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プロの金言「相手の気持ちを最優先して撮影する」

 「人物を撮影するときに大切なのは、撮り急がないということ。僕はいつも相手の気持ちを最優先に考えて、コミュニケーションをとることを心がけています。こちらの都合を押しつけて、写真を撮ることだけを目的にしてしまうと、いい表情を引き出せないですからね。だから取材では、最初はカメラを持たずに相手の話にじっくり耳を傾け、その後で取材目的を説明して、写真を撮らせてほしいとお願いするようにしています」

ありがちなNG

現在「写旬」では東日本大震災後の今を伝えています。その写真は人々のぬくもりや力強さが伝わってきます。組写真でわかりやすくつたえることも腕のひとつです。

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撮影機材&持ち物リスト

【カメラボディ】
キヤノン EOS-1D Mark IV
キヤノン EOS 5D Mark Ⅱ

【交換レンズ】
キヤノン EF28-300mm F3.5-5.6L IS USM
キヤノン EF24-105mm F4L IS USM
キヤノン EF70-200mm F2.8L IS Ⅱ USM
キヤノン EF16-35mm F2.8L Ⅱ USM

【その他】
スピードライト580EX Ⅱ(×2台)、コンパクトバッテリーパックCP-E3、CFカード数枚。 小型のノートパソコン、USB型データ通信カード、携帯電話 折り畳み傘、読売新聞社の腕章、東京写真記者協会のバッジ、国会記者記章などの各種身分証明書、名刺(箱入り)など。

※写真部ではキヤノン製とニコン製のカメラを使用しています
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Web 限定!取材こぼれ話

 1月の中旬に行われた今回の取材。場所は読売新聞東京本社で行われました。年始の忙しい時期にもかかわらず、快く私たち編集部を招いてくれました。

 忙しく稼動する読売新聞社内とは反対に、にこやかに取材に答える松本さん。機材を見せてほしいというこちらのリクエストにも軽やかに対応してくれ、通常携帯のカメラから、カメラバック、パソコンなどの精密機器、大型の超望遠レンズなど、すぐに机の上はいっぱいになりました。

脚立の話に花が咲く松本さんと編集部

そのなかでも印象的だった機材のお話は、カメラマンにとっての必須アイテムという脚立。

「取材先で張り込みをするときになくてはならないのが脚立です。主な目的は高いところから撮影するためですが、脚立は腰を下ろせば簡易ベンチにもなるし、撮影場所を確保する目印にもなります。でも不思議なことに、脚立を使用するのは日本人だけだそうですよ」と松本さん。

 海外では軽量の脚立が珍しいらしく、外国から訪れた記者のなかには、日本の脚立をおみやげに買っていく人もいるそうです。

 松本さんのテキパキとした対応に、取材もスムーズに終わり、最後には社内を案内してくれるというサプライズも。編集部は、はじめてみる新聞制作現場に大興奮。人物の撮影では「相手の気持ちを最優先して撮影する」という松本さん。その撮影スタイルは人柄にもあらわれるものなのだなと感じずにはいられない編集部なのでした。

松本 剛(まつもと・つよし)

読売新聞東京本社に入社し15年目。編集局の写真部に所属する取材記者(新聞カメラマン)。小さな悪も見逃さない写真部きっての正義漢。写真部員が世相を切り取る読売新聞のフォトコラム「写旬」も手がけている。

芳賀 日向(はが・ひなた)

「写真」とは

読売新聞で2006年4月から東京本社発行の夕刊社会面ではじまった、写真部員が世相を切り取るフォトコラム。世のなかの新しい出来事をいち早く取材し、組写真で紹介している。震災後は被災地の人々の生活を取り上げ、人との絆を再確認できるコラムを掲載しつづけ、最近ではクラブツーリズム主催のフォトセミナーで写真部員が組写真講座を行うなど幅広く活動している。
写真家の道具論あれこれプロの金言撮影機材&持ち物リスト取材こぼれ話おうち編
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