種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー
2011.04.29【Vol.009】
ドイツのフォクトレンダー株式会社が発売したプロミネントというカメラがあります。 現在、日本でフォクトレンダーという名前を冠したカメラやレンズのブランドがありますが、元はドイツにあった光学製品会社の名前で、その商標を取得して使用しているそうです。
さて、今回のプロミネントは、本家フォクトレンダー社が1950年代に出した35mmリジッドマウントカメラです。リジッドマウントとは、蛇腹などを介さず直接ボディーにレンズやレンズ交換部、シャッターユニットが付いているカメラのことを言います。
このプロミネントという名前ですが、ドイツ語で「傑出した」、「著名な」という形容詞prominentからきていて、フォクトレンダー社が出すカメラの最高機種に与えられる名前です。同じ名前で1930年代に6×9のフォールディングカメラがあり、その名の通り当時としては最高クラスの性能を誇っているカメラでした。
では今回ご紹介するプロミネントがいったいどういうカメラなのか。レンズ交換式のカメラですので、ボディーに独自のマウントを備えています。専用のレンズしか使用することが出来ませんが、種類も35mmから150mmまで7本ほどバリエーションがあります。クラシックカメラが好きな方はご存知かと思いますが、「ノクトン」、「ウルトロン」といった大変優秀なレンズがその7本の中にラインナップされており、シャッターは当時各カメラメーカーの上位機種に装備されていた「シンクロコンパー」となっています。
ただ、ボディー自体が重く、レンズももちろん金属製、開放F値がF1.5やF2と大口径のものを装着した場合は1kgを超えてしまう重量になります。大型のボディーは持ちやすいとは言いがたく、手が疲れてしまいます。このプロミネントの操作性は、数多くあるリジッドマウントカメラの中でももっとも使いにくいカメラの一つといえるでしょう。まず、初めて手にした方はピントをどこで合わすのかに戸惑います。レンズのピントリングを操作することで焦点を合わすのが一般的ですが、このプロミネントはボディー側で操作します。ボディーにあるピントノブを回してレンズマウント部分全体を前後することでピントを調節するわけですが、この操作部がシンメトリーなボディーデザインを優先しているため大変使いにくい。ファインダーも小型で見難く、巻き上げも重いと、最高クラスのカメラのはずが、欠点ばかりが目に付くちょっと変わったカメラです。
ただ、機能的には劣っているものの、ドイツのカメラ産業が大変景気の良い時期に完成したカメラですので、多くの台数が生産されました。細かなバリエーション違いで生産されたりと、細かく見ていくと少しづつ改良されていったようです。1950年代当時のヨーロッパ、アメリカの写真年間を見たところ、多くのカメラマンが使っていたカメラの多くはライカですが、数名のカメラマンがプロミネントを使っているところをみると、一応フラッグシップカメラとして扱われていたのでしょう。
そして、プロミネントも数年後にはⅡ型が発表、生産されています。しかし、このときすでにライカがM3を発表した後でしたのでⅡ型についてはそれほどカメラとしては成功しなかったものと考えられます。もちろん、ライカのM3が他のカメラメーカーにも与えた衝撃は大きく、日本のカメラメーカーも太刀打ちできないと判断して、一眼レフの研究、生産に特化していったのは有名な話です。
そんなプロミネントですが、決して使いやすいカメラではないのですが、現在でも「ウルトロン」「ノクトン」といった銘レンズを使えることから人気はあるようです。しかし、Ⅱ型は生産数がそれほど多くないので、中古カメラ店でもあまり目にすることはありません。使えるレンズはⅠ型と同じですので、Ⅱ型にこだわらなければ比較的手にいれ易い当時の最高級カメラを手にすることが出来ます。
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