種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー
2012.08.17【Vol.077】
収差の話その1でレンズの性能について少し触れました。それに関連してレンズの絞りによる写りについて少しお話ししたいと思います。
よく、風景写真は絞り込んだ方がいいとか、ポートレートは開放絞りで、というふうにいわれたりしますが、もちろんそれは被写体に対するピントに関した上での絞りの解説ですが、それとは全く別にレンズの性能が最もよくなる理想的な絞りの数値というものがあるのは事実です。絞り開放から2?3絞り絞ったF値がそのレンズの性能を一番発揮するといわれているのがそれで、逆に開放で撮影するとそのレンズの収差が目立ちやすい状態で撮影されることになります。
簡単な例を挙げると、絞り開放(F2,8)で撮影した場合、画面周辺が暗くなったりするレンズでも、少し絞ると(F5,6等)周辺部も暗くならずに写るということがあります。レンズの絞りはご存知のとおり、光の通過量を調節する機構なのですが、それと同時に絞りの穴の大きさに応じて、よりレンズの中心部を光が通ることになります。円形であるレンズはその中心部の方が性能が高く、周辺になればなるほど性能が低下します。そのため開放より絞っていくことで中心部だけの光を使い周辺部を通る光をカットするために画質が向上します。
ただ、絞れば絞るほど性能がアップする訳ではなく、絞り穴が小さくなればなるほど今度は回折と呼ばれる絞り羽根の後ろに光が回り込む(反射)現象がおこります。これは画像全体がぼやけてきて、ピントが少し悪くなったかのような画質の劣化を招きかねませんので注意が必要です。
ただし、たとえレンズの性能が左右されたとはいえ、撮影者自身のイメージを犠牲にしてまで絶対的に絞り数値にこだわる必要はありません。どうしても開放で撮影しないといけないシチュエーションであったり、絞り込む必要に迫られることがあると思います。
もし撮影に余裕があるようでしたら少し絞の数値に注意して写真の出来上がりを比較してみてはいかがでしょう。