種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー
2012.08.24【Vol.078】
レンズの写りの話や、収差の話などレンズ関連の話題が続いて恐縮ですが、今回は撮影用レンズに使用される非球面レンズについてお話します。
非球面レンズは名前からわかるようにレンズ面が球面でないレンズのことを呼びます。
レンズの描写性能を悪化させる収差と呼ばれるものがありますが、中でも球面をなす光学レンズでは避けがたい球面収差と呼ばれるものがあります。例えばレンズ中心を通る光もあれば、周辺部を通る光があり、そのどちらの光も同じ位置にピントを結ぶためには、周辺部になればなるほどより大きく屈折して中心部に光を結ぶ必要があります。いってみれば、中心部の光と周辺部の光ではピント位置がずれてしまう結果になるわけです。
これを解消するために、レンズのどの部分を通る光でも理想的な位置にピントが来るようにレンズ面の曲率を次第に変化した加工が施されたレンズが非球面レンズです(ちなみに球面収差は絞りを絞ることでも改善していきます)。
1960年代に実用化されはじめた非球面レンズですが、当時の製法上ガラスを研磨して非球面を作り出すほかなく、かなりのハイコストになってしまい大量生産には向いていませんでした。ですが、最近のレンズではごく当然のように使用されるようになりました。現在の加工方法は主に、溶かしたガラスを金型に入れて型押しされて出来る「ガラスモールド非球面」と通常の球面レンズの表面に非球面加工されたプラスチック樹脂などを貼り付ける「複合非球面(ハイブリッド非球面)」の2種類になります。
それぞれメリットデメリットがあり、「ガラスモールド」は「ハイブリッド」に比べ、コストがかかる、収差補正効果は高い、レンズ大口径化が難しい、などの点が挙げられます。 「ハイブリッド」はその逆が言えるわけです。ただし、そのどちらをとっても通常の球面レンズで起こりうる「球面収差」の補正には大きく貢献してくれます。
メーカーのカタログなどでレンズの構成が書かれていると思いますが、よく見てみると使用されているレンズの種類なんかも見ることが出来ます。ちょっと、レンズの進歩を間近で見ているような気がして楽しいと思います。