流氷シーズン到来!北の大地で野鳥を撮ろう|冬の鳥撮影テクニック
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はじめに
冬の北海道と言えばやはり雪と氷。しかし氷は氷でも海に漂う流氷は、一度は見てみたい、撮ってみたいと皆さん思うのでは?そんな厳冬期の北海道で、海を中心にした野鳥撮影の手引きをしたいと思います。
メインは海ワシと流氷ですが、港のカモメ類や海ガモ類、海上のラッコ、アザラシ、鯨類の撮影も紹介します。おまけになっちゃいますが、魅力的な野付半島の小鳥やシカやキツネも紹介をしたいと思います。
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以前はエゾシカを見ることがなかった野付半島だが、最近オスのシカをよく見かける。氷結した野付湾を群れで歩く姿は壮観だ。この時は沈む夕日に絡みそうだったので群れを追いかけながら撮影をした。
■撮影機材:EOS 5D Mark IV + EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM + EF1.4×III
■撮影環境:F11 1/125秒 ISO800 WB曇り
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朝陽が昇ったあとの淡い赤い光の中を飛ぶオオワシ。順光と逆光では光の色が違うのでどちら側で撮りたいかで立ち位置を変えたい。
■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F7.1 1/1250秒 ISO800 WB太陽光
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流氷にとまろうとしたオジロワシ。低い位置を飛翔する際は着氷することが多いので少し遠目で見つけたらファインダーから外さないように狙いたい。
■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F10 1/2000秒 ISO400 WB太陽光
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港の中で採餌をしながら泳ぐシノリガモの群れ。潜水して採餌をするので潜った後に移動をすると近くで撮影できるチャンスがある。警戒心は強いので泳いで逃げるまでがチャンス!
■撮影機材:EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/1000秒 ISO1000 AWB
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■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/2000秒 ISO125 WB太陽光
流氷と海ワシ
海ワシとは主に魚を捕え食べる猛禽類の事。ちなみにワシもタカも同じタカ科の鳥たちで、大きなものを「ワシ」、中型・小型のものを「タカ」と呼びます。ここで撮影のメインに選んだのは特に大型のオオワシとオジロワシ。オジロワシの一部は北海道で繁殖しますが、オオワシは繁殖せずロシアから渡ってきます。
冬季の北海道でこの大型のワシたちが集まり、近くで撮影ができるのが知床羅臼の海です。ワシたちは12月ごろから港周辺や海岸沿いの樹の上などで見られますが、流氷が沿岸に流れ着く2月中旬から3月上旬になると羅臼の沿岸は海ワシたちを特に近くで見ることができます。
なぜ海ワシたちがこの海に来るかというと、以前の羅臼はスケソウダラ漁で賑わっており、網からこぼれるスケソウダラのおこぼれを狙って海ワシたちが集まるようになりました。海ワシたちは流氷の上で魚を食べたり、休息ができるのも彼らには流氷が重要な意味を持つのでしょう。
現在はかつてのように漁獲が無いのですが海ワシたちが集まってきます。理由は流氷の海に集まるワシたちを観光船から見れるように、決まった量の魚を与えているからです。
観光船から海ワシたちを撮る
観光船に乗り「イーグル・ウォッチング」をするツアーがあるのでこれを利用すれば、海ワシたちを驚くほど近くで撮影ができます!
▼おすすめのツアー
・知床ネイチャークルーズ https://www.e-shiretoko.com/
・ゴジラ岩観光 https://kamuiwakka.jp/
・知床・羅臼観光船はまなす http://rausu-cruise.com/wp/
・知床アルラン https://shiretoko.life/
・北の知床観光 https://c-ohwashi.com/
撮影に使うレンズは100-500mmや200-800mmクラスの望遠ズームが便利です。そんなに長いレンズを持っていないという方でも70-200mmに1.4倍や2倍のエクステンダーを併用すれば十分楽しめるはずです。三脚は動画を撮影する場合に必要ですが、基本は手持ちで大丈夫。晴れていると流氷の照り返しもあるし、流氷が波を消してくれるので船上とはいえとても穏やか。海ワシの急な動きに対応したり、アングルを頻繁に変えたりする場合は手持ちの方が有利でしょう。
*三脚を使用する場合、波は穏やかでも船のエンジンの振動を拾う危険性もあります。
もし可能なら16-35mmクラスの広角ズーム、24-70mmや24-105mmクラスの標準ズームも持っていくと、知床の山並みや国後島を背景に入れた風景的な撮影もできます。
超望遠ズームで撮影していると、被写体が近すぎてフレームからはみ出すことがあるので、そんな時はぜひ2倍のエクステンダーを装着して「顔のドアップ」を狙ってみましょう。ファインダーの中にドアップのワシの顔が広がり、鋭い視線を感じる時・・・痺れます!
観光船で人気が高い時間は早朝便。朝陽と流氷を絡めた撮影ができるとあって、愛好家が集まるので予約を取るのが結構大変です。人気が高いのはそれだけ夜明けのシーンが素晴らしいという証拠です。朝陽が昇り出す時に流氷にとまるワシたちを絡めたり、太陽とともに飛翔する姿を狙ったり。午前7時を過ぎると晴れていれば太陽光が降り注ぎ青空バックに飛翔する姿や流氷の上にとまる姿も魅力的です。もしも早朝便に乗れなくとも、そのあとの便に乗れるチャンスがあればぜひ乗船しましょう。朝陽絡めは無理でも美しい流氷との撮影は可能です。
飛翔するシーンは高速シャッター1/2000秒でチャレンジするのがおすすめ。もしこのシャッター速度でもブレていたなら、1/4000秒にしてカチッと止まった写真を狙いましょう!
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飛翔する海ワシたちは撮影が簡単!理由は被写体が大きくて見つけやすいから。最近のミラーレスカメラならピントを追い続けるのでファインダーから外さないようにすればいい。
■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/2000秒 ISO1000 WB太陽光
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水面に浮かんだ魚を獲るために翼でブレーキをかける瞬間は高速流し撮りで狙おう。ファインダーにオオワシを捉えて追い続ければいい。その際のSSは1/1000以上だと成功率が上がる。
■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/2000秒 ISO200 WB太陽光
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こちらに向かってきて流氷の上に降りようとする瞬間を高速連写で狙った。運よく顔の半分を朝日が照らしてくれた。
■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/2000秒 ISO1000 WB太陽光
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国後島から昇った太陽が雲から姿を現した。周囲を注意して観察しながら飛翔する個体を探す。太陽に絡みそうな個体を見つけたらヤマを張ってフレームに入れる。この時ワシに露出は合わせずシルエットにすることで空と雲の色を出すことができる。
■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F7.1 1/2000秒 ISO2000 WB曇り
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海ワシたちの寿命は長く、40年以上生きる個体もいる。そのため毎年羅臼の海で餌を獲っていると観光船に対して警戒をしない個体もいる。この時はかなり近くまで寄ってしまった。そこで1.6倍クロップにして顔のアップを狙ってみた。
■撮影機材:EOS R + EF600mm F4L IS III USM
■撮影環境:F5.6 1/2000秒 ISO250 WB曇り 1.6倍クロップ使用
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■撮影機材:EOS R5 + EF24-105mm F4 L IS USM
■撮影環境:F11 1/2000秒 ISO320 WB太陽光
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■撮影機材:EOS R6 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/2000秒 ISO200 WB太陽光
小舟で狙う
最近は船外機着きの小舟で撮影をさせてくれる船長もいるので、それらの船を使うのも楽しいです。ただし船が小さいので、流氷の中に入ることができないデメリットもあります。また、風が強い場合出航しないこともあります。
海ワシたちも経験から大きな船が近くにいても怖がりませんが、見慣れない小舟の場合は警戒されるためなかなか近づけないマイナスも。しかし、小舟は目線が低い分「他とは違う写真」が撮れる利点もあります。
▼小舟ツアー例
・知床らうすリンクル https://shiretoko-rausu-lincle.com/
・知床クルーズ英人丸 http://hidetomaru.com/
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■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F10 1/2000秒 ISO400 WB太陽光
曇った日は流し撮り!
毎日、朝陽が出るとは限りません。朝陽どころか太陽が出ない日もあります。雪ならそれなりに情景のあるシーンも狙えますが、曇ってしまうと同じようなシーンをどう撮っていいか悩んでしまいますよね。
そんな時は、とりあえず抑えのカットを撮った後で「スローシャッターの流し撮り」を試してみましょう。まず1/60秒を基準にして連写で飛翔する姿を狙ってみます。流し撮りに関してはたとえプロでも「成功」を勝ち取ることは難しく、とにかく何度も繰り返すしかありません。
もし流し撮りに慣れてきたら1/15秒、1/8秒とスローにしていくとさらに面白い写真が撮れるでしょう。ただし、何度も何度もカメラを振ると腕がかなり疲れるのでそこは覚悟が必要です。
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晴れていると光量が多いため流し撮りするのにNDフィルターを使用することになるが、曇っていればフィルターなしでOK。手持ちで行うので失敗の少ない1/60秒から始めて1/8秒ぐらいまでを試みる。
■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F11 1/60秒 ISO800 AWB
「ワシのなる樹」を狙う
ワシたちは午前中は海上に出て観光船から餌をもらっていますが、10時を過ぎると山側の大きな樹にとまって休息をする個体が多くなります。ペアでいる場合はオスがメスより小さいので雌雄の違いが分かります。また、オジロワシとオオワシが混ざって同じ樹にとまっている姿を「ワシがなる樹」と呼びます。大きく枝ぶりのいい大木にとまる姿は壮観です。
しかし、これを「絵」になるように撮影するのは簡単そうで実は難しいのです。なかなか思ったように撮れない!ワシに枝が被っていたり、きれいに抜ける場所を見つけても・・・なんか並びが悪かったり、角度が悪かったりします。周囲を移動してみて良い構図を探してみてください。
道路脇から狙う場合は車に気をつけて歩道など安全な場所で撮影しましょう。車を停める時も雪で道幅が狭くなっている場所や民家の駐車場には勝手に停めてはいけません。地元の方にあいさつをすることはもちろん、迷惑にならないことが一番です。
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港の見える山の斜面から生える大きな樹の枝にとまるオオワシとオジロワシたち。彼らはここで休憩をしながらも海が眺められる場所で餌が取れそうならいつでも飛び立てるようにしている。
■撮影機材:EOS-1D Mark II N + EF500mm F4L IS II USM + EF1.4×III
■撮影環境:F10 1/500秒 ISO100 WB太陽光
海ワシ以外に狙えるものは?
観光船に乗ると海ワシ以外はカモメ類も多く見られます。「なんだカモメか」と言ってしまうのはもったいない。本州であまり見られないオオセグロカモメ・ワシカモメ・シロカモメが当たり前にいるのでぜひ撮影してみてください。
撮影を終えて観光船が港に戻る時にも後をついて飛翔して来ることが多いのでこれも狙いどころです。高速で動く船から狙うのはちょっと難易度が高いですが、青空バックで飛翔した時は雪や流氷の照り返しによって白い下面をより美しく映える被写体にしてくれます。もちろん港でも撮影ができるので下船後にもチャレンジしてみましょう。
滅多にありませんが、ごく稀にシャチが出ることもありますし、トドやアザラシが泳いでいることもあるのでそんな日に乗れたなら超ラッキー!
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港内の氷の上でくつろぐゴマフアザラシ。以前は3月下旬になると流氷の上で出産するのでアザラシの親子を撮ることもできた。一方でゼニガタアザラシは流氷が嫌いなので開放水面から顔を出している姿を見ることができる。
■撮影機材:EOS 7D + EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM
■撮影環境:F8 1/2000秒 ISO400 WB太陽光
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滅多にないが、流氷が沖合に移動した海面にシャチの群れが出現した。周囲をオジロワシやオオワシが飛翔する。時折アザラシやトドを見ることもある。
■撮影機材:EOS R5 + RF24-105mm F4 L IS USM
■撮影環境:F8 11/1600秒 ISO640 AWB
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港のボラードにワシカモメがとまっていたので車で近づいて撮影をした。「カモメはよくわからない」という方も多いだろうがオオセグロカモメをしっかりと覚えると、大きさ・体色の違いで区別ができるので、いろいろ撮っておいてあとから名前を調べるのもいい。撮らずに後悔するか?撮ってから後悔するか?はあなた次第。
■撮影機材:EOS 7D Mark II + EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM
■撮影環境:F5.6 1/1250秒 ISO100 WB太陽光
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大型で美しいシロカモメの成鳥。夏羽はそれほど多くないので「デカくてきれいなカモメ」がいたらぜひとも撮っておこう!
■撮影機材:EOS 7D Mark II + EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM
■撮影環境:F5.6 1/800秒 ISO400 WB太陽光
港で海ガモ三昧
羅臼港をはじめ、根室周辺の港では海ガモ類が見られるのでぜひ覗いてみてください。顔ぶれはシノリガモ・クロガモ・コオリガモ・ウミアイサ・カワアイサを撮影することができます。運が良ければビロードキンクロ・ケイマフリも撮影できるかもしれません。
彼らは海に潜って採餌をするため、潜った進行方向に車を移動して待機し海面に上がってきたところを車窓から撮影するのがおすすめ。ただし、カモが近すぎると角度が合わず格好悪い写真になってしまうので、狙う際はある程度距離があるほうがいいでしょう。
また、港は漁師さんたちの大事な職場なので、作業の邪魔にならないように十分注意をしてくださいね。
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真っ黒な身体にオレンジの嘴が目立つクロガモ。貝を取って食べているようだが種類がわからないのがちょっと悔しい。比較的警戒心は強くないので向こうから近づいて来ることもある。
■撮影機材:EOS 7D + EF500mm F4L IS II USM
■撮影環境:F4 1/2000秒 ISO400 WB太陽光
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アオーナというヘンテコな鳴き声と長く細い尾羽が特徴で、潜水する時には特に目立つ。メスの尾は短く顔はかわいい。
■撮影機材:EOS 7D Mark II + EF500mm F4L IS II USM
■撮影環境:F5.6 1/12000秒 ISO200 WB太陽光
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あまり沿岸に寄って来ないこともあり「レア」ではないがお目にかかれない海ガモの一種。この時は1羽だけで港でのんびりとしていた。あまりにも近くて興奮した覚えが蘇る。
■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F7.1 1/400秒 ISO400 WB太陽光
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ぼさぼさ頭とオスのグリーンメタリックな顔は特徴的だが、この色を出そうとすると超難しい。太陽の角度が悪いと黒っぽくなってしまうのが悩みの種。チャンスとしては太陽が低めの順光がBEST。
■撮影機材:EOS 7D + EF500mm F4L IS II USM
■撮影環境:F5.6 1/2000秒 ISO400 WB太陽光
氷の上で海ワシを狙う
羅臼では流氷と海ワシがメインでしたが、場所を変えて根室市の「風連湖」に行くとまた違った雰囲気の写真を撮ることができます。ここでは凍った風連湖の氷に穴を開けて漁をする氷下漁を行っています。その際に売れない魚を捨てる事があり、それを狙って海ワシたちが集まってきます。
とはいえ漁場までは一般人は近づけないので、湖畔にあるレストラン&コテージ「レイクサンセット」から狙う事になります。ここでは冬のシーズン中、毎朝撮影をすることが可能で、入場料(1000円)を支払って中に入ります。
バックには春国岱の奇妙な形の立派な樹が立ち並び、「ここは本当に日本か?」という気分になります。羅臼よりは海ワシとの距離が遠いものの時折頭上を飛ぶこともあり、運が良ければ近くでも飛翔姿を撮影ができます。何よりも船が出られなくて撮影ができないという事がないので、確実に撮りたいときは押さえておきたいスポットです。
被写体が遠いのでここでは明るい超望遠レンズが有利になります。必然的に大型の三脚も必要です。それでも200‐800mmクラスの望遠があれば十分で、シーンに合わせてクロップや1.4倍・2倍のエクステンダーを使うのがいいでしょう。
・レストラン&コテージ レイクサンセット https://lakesunset.jp/
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■撮影機材:EOS 7D Mark II + EF24-70mm F4L IS USM
■撮影環境:F9 1/3200秒 ISO400 WB太陽光
![](https://www.kitamura.jp/shasha/wp-content/uploads/2025/01/25-3-scaled.jpg)
■撮影機材:EOS 7D Mark II + Kowa PROMINAR 500mm F5.6 FL
■撮影環境:F5.6 1/1600秒 ISO200 WB太陽光
海ワシ以外の海鳥や海獣類は落石ネイチャークルーズへ
根室の落石港から出ている「落石ネイチャークルーズ」は地元の漁師さんが漁船で観光をしてくれます。ここは流氷が無いので波の影響で結構船が揺れますが、普段は見ることができない海鳥や生き物を撮影できます。野鳥ではウトウ・ケイマフリ・ハシブトウミガラス・エトロフウミスズメ・ウミバトなどの冬羽が魅力的で人々を惹きつけます。野鳥以外ではラッコやゼニガタアザラシがよく見られます。
ちなみに船酔いが心配という方には「アネロン」という酔い止めが抜群に効くらしいです。私が船酔いをしないのでわからないのですが、知人がそのように熱弁していました笑。
・落石ネイチャークルーズ https://www.ochiishi-cruising.com/
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アイヌの言葉で赤い足の意味のケイマフリ。しかし非繁殖期では赤い足はあまり目立たない。繁殖羽は黒い顔に白い目の周りの縁取りがインパクトがあるが、冬羽は周りの縁取りがぼんやりしてずんぐりとした体と相まってかわいい。
■撮影機材:EOS 7D + EF500mm F4L IS II USM
■撮影環境:F8 1/2000秒 ISO400 WB太陽光
![](https://www.kitamura.jp/shasha/wp-content/uploads/2025/01/27-3-scaled.jpg)
海面からひょっこりとこちらを観察。霧多布岬でも見られるが、船の上からだと目線に近い角度で狙えるし、運が良ければ向こうから近づいて来ることもある。
■撮影機材:EOS 5D Mark IV + EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM + EF1.4×III
■撮影環境:F9 1/3200秒 ISO800 WB太陽光
![](https://www.kitamura.jp/shasha/wp-content/uploads/2025/01/28-3-scaled.jpg)
日本では滅多にお目にかかれず、冬はチャンスが増える。千島列島から北アメリカまで分布するが北海道で見られる物はアメリカとは亜種が違うらしい。警戒心が強く撮影は難しい。
■撮影機材:EOS 7D + EF500mm F4L IS USM
■撮影環境:F8 1/2000秒 ISO400 WB太陽光
日中~夕方は野付半島を満喫
羅臼も根室も基本は朝!午前10時を過ぎるとワシたちが休憩に入るので撮影が難しくなります。前述のように港でカモを狙うのもいいですし、「小鳥を狙いたい」と思うならちょっと足を延ばして野付半島に行くと、運が良ければハギマシコ・ツメナガホオジロ・ユキホオジロを狙うことができます。ユキホオジロに関しては、竜神岬駐車場から先は許可証が必要なのでネイチャーセンターで問い合わせてみてください。
野鳥ではないですが夕陽を絡めてエゾシカのオスの群れが撮れることが有名になり、最近は多くの観光客でごった返しているので、車の通行にはくれぐれも注意しましょう。キタキツネも比較的よく見られるのでふかふかの姿を撮影したいですね。
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車を走らせていると突然小鳥の群れが飛び上がり電線にとまった。私も車を停めるとハギマシコ達だった。運よく順光で青空バック!電線でもいいやと群れを撮影することができた。
■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F7.1 1/2000秒 ISO200 WB太陽光
![](https://www.kitamura.jp/shasha/wp-content/uploads/2025/01/30-2-scaled.jpg)
野付半島では大人気なユキホオジロ。日本では夏羽は見られないが、冬羽の方がかわいい。
■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F9 1/1000秒 ISO100 WB太陽光
![](https://www.kitamura.jp/shasha/wp-content/uploads/2025/01/31-2-scaled.jpg)
雪の上で丸まって休むペア。キタキツネはやはり冬に撮影したい。理由はもふもふでかわいいから。
■撮影機材:EOS 5D Mark IV + EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM + EF1.4×III
■撮影環境:F5.6 1/1250秒 ISO100 AWB
![](https://www.kitamura.jp/shasha/wp-content/uploads/2025/01/32-1-scaled.jpg)
餌を求めて海岸近くに現れたエゾシカのオス。ほとんど人を見ても逃げないとはいえ警戒されないようにゆっくりと近づき国後島をバックに狙った。ただ2頭ともが同時にこちらを見てくれないので以外にも時間がかかってしまった。
■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F11 1/1600秒 ISO200 WB太陽光
服装と注意事項
冬の北海道では基本マイナス気温が当たり前で、さらに船に乗った場合、風に当たることで体感温度はマイナス20℃以下になると思ったほうがいいです。服装は上から耳を覆う事ができる帽子、ネックウォーマーかマフラー、上半身は下から肌着+防寒用の肌着+インナーダウン+電熱線入りのベストかフリース+アウター用のジャケットかレインウェア。ポケットにはカイロを入れておくと手を温められます。
下半身は肌着+防寒用の肌着+インナーダウンパンツ+オーバーパンツかレインウェア。手袋は薄手と厚手の2重にして、手の甲側に小さなカイロを入れるのもおすすめ。靴は防寒靴がベストですが無ければ厚手の長靴でもOK。靴下は薄手と厚手の2重にして、ここにも間にカイロを入れるといいでしょう。この時、カイロは足裏ではなく足の甲の方にしましょう。下に入れると酸欠で発熱しなくなります。以前に比べて素材が良くなったことで、これだけ着込んでもモコモコにならずに済むのは本当にありがたいですね。滑り止めのスパイクは船上では禁止されている船が多いので外しますが、甲板は滑りやすいので注意してください。
この装備は朝夕の船上以外の撮影でも十分対応できるので、寒い場所へ撮影に行くことがあればぜひ参考にしてみてくださいね。
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まとめ
揺れる船からの撮影は難しいと思われるでしょうが、意外にも羅臼では流氷がある事でとても穏やかなことに驚くことと思います。落石ネイチャークルーズは流氷が無いので揺れますが、最近の機材はAFや手ブレ補正の強化、高感度でも低ノイズな写りなど過去では考えられないほど撮影がしやすくなりました。その分、撮影に夢中になりすぎてしまうと凍傷になる危険性もありますので、手足の指先、耳や鼻など寒さから防ぐように注意をしてください。北海道の東部沿岸は初めて訪れる方を感動させること間違いなしの場所です。
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太陽に向かってきそうな個体を見つけたらヤマを張って狙ってみる。太陽の真ん中を通るコースは非常に難しい。それでも撮れた時はガッツポーズをしたくなる。空の色を出す露出に合わせてオジロワシをシルエットにするといい。
■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:F8 1/2500秒 ISO640 WB曇り
■野鳥写真家:戸塚学
幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから野鳥の撮影にのめり込む。「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどに多数発表。
・日本野鳥の会 会員
・西三河野鳥の会 会員
・日本自然科学写真協会(SSP)会員