おもしろフォトグラファー 田津原理音の芸人撮影記 #01

はじめに
皆さん初めまして。
田津原理音と申します。
本名です。
時間割みたいな名前の人というので覚えてもらえたらと思います。
苗字はそうですね、覚えにくいと思うので一旦大丈夫です。
この度ShaShaで連載させていただくことになりましたので先ずは自己紹介からさせていただこうかと思います。
僕は普段お笑い芸人をしています。
どのようなネタをしているのかと言うと画用紙を机に叩きつけたり、舞台上で家具の組み立て説明書を見たり、トレーディングカードを舞台上で開封したり、えっと、あの、見に来てもらったほうが早いと思うので是非劇場へお越しください。
一応R-1グランプリという日本一のひとりぼっちを決める大会で優勝しちゃったりもしてます(結構すごい)。
そして今回メインの話しは写真についてです。
僕と写真の出会いは2019年
彼女に誕生日プレゼントで一眼レフをもらったことから始まります。
魅力的な被写体が職場に
初めは風景をメインに撮っていました。

■撮影環境:f/22 1/50秒 ISO640 焦点距離18mm
こういうのだったり

■撮影環境:f/16 1/200秒 ISO200 焦点距離17mm
こういうのだったり

■撮影環境:f/4 1/10秒 ISO400 焦点距離22mm
こういうのです。
ですが芸人の職場である劇場へ通っているうちに、とあることに気づいたのです。
職場が魅力溢れる被写体で溢れかえっている・・・
カメラを手にした人間が芸人まみれの場所に毎日足を運ぶとなると撮らない方が変だというものです。
そして僕は舞台上、舞台袖、楽屋、打ち上げ会場などとにかく芸人を撮りまくるようになりました。
ライブのポスター
それら撮りまくった写真をSNSにあげるなどしていると芸人から「今度単独ライブするんやけどポスターの写真撮ってくれへん?」と頼まれるようになりました。
当時若手だった僕たちはデザイナーの知り合いなどという小洒落た交友関係は持ち合わせていなかったので自分たちで主催ライブのポスターを作るということが多々あったのです。
そうして作ったポスター達がこちら。

紅しょうがというコンビの単独ライブポスター
大阪の難波で撮ったもの。
大阪の夜って暖色が似合いますよね

イチオクというコンビの単独ライブポスター
個人的に大好きな写真です。
こんなにもバイト着が似合うコンビ珍しいです。

自分の単独ライブのポスターも撮るようになりました。
売れてない芸人の単独ライブとは思えないシルエットのみのポスター。
ちなみに撮った場所は地元奈良県にある公園の丘。
奈良県には良さげな丘がたくさんあります。
丘好きな方はぜひ。
こんな感じで趣味の延長でポスター作りをしていたらあれよあれよと芸人、社内での口コミでどうやら田津原がいい写真撮ってくれるらしい、という噂が広まりました。
そこからポスターデザインはもちろん、会社から依頼されてのライブ写真、テレビ番組のスチールカメラマンなど仕事として撮らせていただくことが増えました。
今ではカメラを持ってライブに出るということもしたりしています。
まさに撮りつ撮られつの関係。
そんなこんながあって写真というものが僕の芸人人生と切っても離せない要素のひとつになったのです。
以上がざっくりですが僕が写真を撮り始め、今に至るまでの経緯です。
ちなみにポスターデザインをしてきて1番嬉しかった依頼が最近ありました。

我らがヒーロー、陣内智則さんの単独ライブポスターです。
Greenというタイトル以外なにも決まってなく、完全におまかせというご褒美のような依頼。
可能だったら小道具としてブラウン管とか使えたらいい写真撮れるかもです…くらいで伝えると7台用意してくれました。
ご褒美ブラウン管。
芸人たちのオフショット
ここからはポスター撮影の合間、楽屋風景、休日の芸人のオフショットなどを当時の思い出エピソードとともに見ていただければと思います。

■撮影環境:f/13 1/60秒 ISO8000 焦点距離35mm
彗星チークダンスの単独ライブポスターを撮ったときのオフショット。
シャボン玉を使って撮りたいという注文があったので夜の公園で撮ったのですが、写真右の木佐という男が写真そっちのけでシャボン液が手にこぼれて冷たいってずっと騒いでました。
木佐ってそういう男の子なんです。
相方のちろるは騒ぐ木佐の目を一度も見ていませんでした。
ちろるってそういう女の子なんです。

■撮影環境:1/60秒 ISO400
爛々のももちゃん。
これは大晦日にあったフェスのようなお笑いライブでの合間の喫煙スペースで撮った一枚。
僕はタバコ吸わないのですが、寂しがりなので友達が吸いに行くとなったら喫煙所に付いて行ったりする系男子です。

■撮影環境:f/2.8 1/160秒 ISO5000 焦点距離135mm
日本一タバコが似合う女性芸人なんじゃないかも思ってます。
少なくとも田津原-1グランプリのタバコ部門では優勝してます。

■撮影環境:f/4 1/1600秒 ISO500 焦点距離160mm
芸人同士の草野球で撮れた一枚。
楽々アウトすぎて一同大はしゃぎ。
めっちゃ草野球ですね。

■撮影環境:f/2.8 1/1600秒 ISO100 焦点距離135mm
別の日の試合
これもめっちゃ草野球。
デッドボールで必要以上に痛がるバッターを見て一同大はしゃぎ。

■撮影環境:f/2.8 1/1600秒 ISO100 焦点距離200mm
一塁にヘッドスライディングしたもののアウトの判定だったので抗議しているシアトルマリナーズのスカウトです。
どういう状況か分かりませんよね。
僕も分かりません。
機会があれば本人に聞いてみてください。
このように芸人は違う意味でのおもしろい試合をいつもしています。

20世紀というコンビの単独ライブの開演前。
幕が閉まっている中オープニングコントの準備をしていたのですが、すごくイチャイチャしていたので撮りました。
同級生コンビすぎる。

レインボーのジャンボ。
モノクロ写真な事も相まって昭和の賭博場みたいになってますが、オードブルの何を食べようか選んでいるだけです。
食べ物に向ける眼差しの鋭さは芸人一です。

ケビンスの山口コンボイ。
喉の薬を飲んでいるときにカメラを向けると世界一元気な病人になりました。

■撮影環境:f/2.8 1/250秒 ISO320 焦点距離200mm
ちなみにケビンスってどんなコンビ?って聞かれたらこんなコンビです。
コンボイがいらんことして仁木さんがちゃんと嫌がるっていうのを繰り返してます。

■撮影環境:f/2.8 1/1600秒 ISO100 焦点距離124mm
最後は見取り図さんの単独ライブポスターのオフショット。
海にソファーを浮かべて座ってる写真を撮りたかったのですが、ソファーが短足すぎたためしっかりおしりびしょ濡れに。
とまぁこんな感じの写真を日々撮っています。
こう見ると当たり前なんですが変な写真ばっかりですね。
写真を始めて少しすると、他の人には撮れない自分だけの写真を撮りたいって誰もが思うと思います。
お笑い芸人をしている僕は周りの芸人を撮るという答えに自然と行きつきました。
それが僕にしか撮れない写真だし、芸人が生き生きした表情を出す瞬間を人よりは知ってると思ってます。
ポートレートには被写体である人だけではなく、撮っているカメラマンとの関係性も写るよなって思ったり思わなかったりしてます。
そう考えると、その人にしか撮れない写真っていうのは人の数と同じだけあるとも思ったり思わなかったりします。
僕が皆さんのご家族や友人を撮ろうとしても100%の自然体では撮れないです。
悔しいです。いいなぁ。
なので自分らしい写真ってなんだろうって分からなくなったときは、ご家族や友人のような自分にとって魅力的な人を見つけて撮ってみるといいのかもしれませんね。
さいごに
とまぁ今回はこんな感じです!
田津原理音っていう画用紙叩きつけてる時間割みたいなやつが変な人たちの変な写真撮ってるんだなみたいな感じの、ふわっとで大丈夫ですので覚えておいてくれたら嬉しいです。
これからも色んな芸人写真載せていくのでまた見てあげてください。
なんせ芸人は撮られるために芸人始めたみたいなところあるので。
もちろん写真を好きになったきっかけの風景写真は今も撮り続けているので、そのあたりもまたどこかで見ていただければと思っています。
ではでは!
■芸人/フォトグラファー:田津原理音
1993年5月25日生まれ。奈良県出身。B型。NSC(吉本総合芸能学院)大阪35期を卒業後、コンビ活動を経て、2015年からピン芸人として活動。2023年「R-1グランプリ」チャンピオン。2025年「R-1グランプリ」3位。特技は、写真撮影、デザイン、イラスト、レタリングなど。フォトグラファーとして、2023年に大阪で、2024年に東京で個展を開催。芸人ライブのポスターの撮影やデザインなども手がけている。