海外発!オールドコンデジのブーム到来:IXY編
はじめに
こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回は海外からの人気を受け、SNSをはじめ国内でも人気急上昇のオールドコンデジから、CANONのIXY(イクシー)シリーズを紹介していきます。写真の仕事を始める前からコンデジは使っていましたが、IXYはデザインも良く高嶺の花だったと記憶しています。その性能と描写力をさっそく見ていきましょう。
オールドコンデジブームの到来
と、その前に、オールドコンデジブームについて少し解説していきましょう。最近、数百万画素のCCDモデルを中心としたオールドコンデジが若者を中心として流行していると言います。2000年代から2010年近辺のカメラが特に人気で、海外セレブやK-POPアイドルなどがSNSにアップしていることから認知され、海外、そして日本と言う流れでブームが来ているようです。
以前はフィルムカメラブームもあり、写ルンですは店頭在庫切れをよく目にするほどの売れ行きとなっていますが、そこに新たな風としてオールドコンデジが台頭してきたという形になっています。フィルムより簡単で低コスト、独特のデザインやスマホほど写りすぎないその描写、そしてカメラとして撮るという行為がウケているのではないでしょうか。
更に、10代~20代前半の若者の親世代が当時コンデジを使っていたということもあり、フィルムカメラ同様押し入れから出てきたということもしばしば。意外なところからカメラを始めてみよう!となったりもする様です。
CANON IXYと言う一時代を築いたコンパクトカメラ
IXYはCANONのコンパクトデジタルカメラシリーズの1つで、その中でもスタンダードモデルとして位置づけられています。
IXYはデジタルカメラと言うイメージが強い人が多いかと思いますが、IXYのスタートはAPSフィルムを使ったフィルムカメラでした。当時世界最小のオートフォーカス全自動ズームコンパクトカメラで、デジタルに市場を移してからもデジタルカメラ界で世界最小、世界最薄と言った記録を更新しています。
筆者はIXYの四角いデザインが好みで、今回紹介するIXY1及びIXY3は、古くから芸術品や建造物に採り入れられ最も安定して美しいとされる黄金比を持つデザインとなっています。IXYはデジタルになってからも約80種とかなりの機種がリリースされていますが、デザインも様々で、お気に入りのIXYを見つけるのも楽しいはずです。ファインダー付きモデルなどもありますので、こだわりの1台を見つけてみましょう。
筆者が使っているIXY1のスペックは次の通りです。兄弟機であるIXY3もスペックはほぼ変わらずですが、IXY1はフルタッチパネル、IXY3はボタン式と若干操作性が異なります。
CANON IXY1 仕様
カメラ部有効画素数 | 約1010万画素(裏面照射型CMOSセンサー) |
サイズ | 85.8×53.5×19.8mm |
質量 | 約163g(電池・メモリーカード含む) |
データタイプ | 静止画: Exif 2.3(JPEG) |
動画 | MOV(画像: H.264、音声: リニアPCM(2CH ステレオ)) |
記録メディア | microSDカード |
焦点距離 | 12倍ズーム: 4.0(W)– 48.0(T)mm (35mmフィルム換算: 28(W)– 336(T)mm) |
絞り | F3.4 - F6.3(W)、F5.6 - F9.0(T) |
液晶モニター | 3.2型TFTカラー液晶(有効画素数: 46.1万ドット) |
撮影距離(撮影モード:AUTO) | もっとも広角側にしたとき 1 cm – ∞ もっとも望遠側にしたとき 1 m – ∞ |
シャッタースピード | AUTOモードで自動設定される範囲 1 – 1/4000秒 すべての撮影モードをあわせた範囲 15 – 1/4000 |
まさに無駄のないデザインで、35mmフィルム換算で望遠側336mmもあるにもかかわらず、レンズの飛び出しは非常に小さく本当にコンパクトなデジタルカメラです。保存方式は残念ながらRAWには対応しておらず、JPEGのみとなりますが、そのJPEGを活かした画像加工方法がありますので、こちらについては記事の後半でご紹介します。
IXY伝統のデザイン、CANONが誇る操作性
今回紹介するIXY1及びIXY3は2012年の発売。オールドコンデジと呼ぶにはまだ少々若いかなと言う印象ですが、近年のカメラを見ると10年と言う歳月はデジタルカメラを飛躍的に進化させるだけの時間がありました。IXY1は背面の全面がタッチパネル液晶方式で、当時スマホが流行した背景もあり、今でも直感的に使えるUIになっています。
タッチパネルは感圧式と言う方式で、指でパネルを押して圧力をかける必要があり、現代のスマホの静電式とはやや異なる使用感で若干の使いにくさがあります。ここは好みに寄りますので、使いにくいと感じたらボタン式のIXY3の使用も検討してみましょう。デザインを選ぶなら背面フラットなIXY1、操作性を選ぶならIXY3のボタン式がベストです。
撮影モードについてはオートモードとプログラムAEモードがメインとなり、残念ながらマニュアルモードはありません。おそらく今IXYを使う方のほとんどがサブカメラとしての利用と考えますので、プログラムAEモードで楽に撮影するというのが基本的な撮影方法になるでしょう。
カメラの仕組みや機能を理解していれば、ISOを固定する、露出補正を行う、夜景シーンモードを使ってスローシャッターを意図的に使うなどのテクニックを活用できるので、使用者の技量によっても応用した撮影ができるのも面白いところです。
広角28mm望遠336mmから成るズームレンズ
広角28mm、望遠336mmと言ういわば超便利ズームが内蔵されているIXYですが、描写について不満に思ったことはありません。12倍ズームを搭載し、むしろ、この小さいボディで良くここまで写るなと言う感想の方が先に来る印象です。AF精度も高くIXY1であればタッチパネルをタッチすることで、自由にAFポイントを移動させられるのは非常に便利。更にマクロ機能もあり、広角端で1cmまで寄ることができ、花を大きく撮影するなど非常に便利なコンデジだということに改めて気づかされます。
ISOの設定は100~3200まで十分な範囲でありますが、やはり1600~3200ともなるとセンサーサイズの小ささからディティールは大きく失われてしまいます。IXYを使って作品を作るという方でない限りは、ISOオートで問題ありませんが、ノイズなど気にされる方は400程度までにした方が良いと考えます。
ここから公開する作例は全てJPEG撮って出しとなります。IXYの素の写真を見て行きましょう。
アナログな加工に適したオールドコンデジ
ここからの作例は、再びフィルム風の加工を施した作例を紹介していきます。筆者がIXYを常用している理由のひとつに、アナログな加工に適しているという点も挙げられます。1000万画素、JPEGオンリーと言う割り切らざるを得ないスペックはSNSに適しており、microSDをスマホにつなぎ、スマホアプリで画像加工してアップロードするというフローが筆者の手法です。
フィルムが高価になりつつある現在、アナログな出力を求めて様々なカメラで実験をしてきましたが、その中でも最も手軽にフィルム風に仕上げることができるのがオールドコンデジを使ったアプローチでした。詳しくは筆者の著書にそのテクニックを記載しており、ご覧いただきたいと考えておりますが、ここではいくつかの作例を提示したいと思います。そういわれれば何となくフィルムっぽいかも?くらいに思っていただければ嬉しいです。
オールドコンデジを選ぶ際の注意事項
オールドコンデジを使ってみよう!と思った方、必ず確認してほしい2つのポイントがあります。
まずはバッテリー。中古オールドコンデジに付属しているバッテリーのほとんどがバッテリーの劣化を引き起こし、使えないものが多いと考えます。中古で購入する際は気をつけたいポイントですが、IXY1やIXY3の様に現在も互換製品が豊富にあれば、特に問題はありません。
もうひとつは、記録メディアです。今はSDカードなど主流なものが存在していますが、当時はスマートメディアやメモリースティック、さらには今のSDHC/SDXCカードの規格とは異なる初期の「SD」カードが使われたりもしています。古いメディアもまだ買える場合もありますが、対応したカードリーダーがないなど思った以上に手のかかる可能性もあります。デザインが気に入った!人気アイドルが使っているから欲しい!と言った勢いで購入することはせず、今も使えるかを一度調べてから購入するのが間違いないでしょう。
まとめ
オールドコンデジの魅力やアナログな加工を施しフィルム風にするアプローチなど、少し古めのカメラながらの使い方を提案できたかと思います。人気の高まりと共に、徐々に値段が上がってきているオールドコンデジですが、まだまだ数千円~1万円程度で買える機種ばかりですので、スマホの撮影ではなくカメラで撮りたい!という方におすすめです。
また、ハイスペックデジタルカメラとの差別化もはかれますので、サブ機として使うのも良いでしょう。筆者が執筆している「iPhoneで撮る写真がグンとよくなる法則」では今回のIXYの加工で使ったフィルム、アナログ風に編集する方法を記載していますので是非参考にしてみてください!この編集テクニックはコンデジだけではなくデジタルカメラで撮った写真にも転用できますので、手軽にフィルム風現像をするためにも大いに役立つと考えています!
デジタルカメラやフィルムカメラを使った実践的な撮影方法が知りたい場合は、僕が講師を務めるワークショップ「フィルムさんぽ/フランジバック」にもご参加いただければ嬉しいです!では、次の記事でお会いしましょう!
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■モデル
・月(ユエ):@_yue_rypi_
・南条葉月:@nanjo_hazuki
■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。