富士フイルム XF500mmF5.6 R LM OIS WR レビュー|ついに登場!Xシリーズ史上初の超望遠単焦点レンズ

高橋忠照
富士フイルム XF500mmF5.6 R LM OIS WR レビュー|ついに登場!Xシリーズ史上初の超望遠単焦点レンズ

はじめに

2024年10月14日に富士フイルムのライブ配信イベント「X Summit CLAY Studio 2024」内で、最新の超望遠単焦点レンズ「XF500mmF5.6 R LM OIS WR」の製品発表がありました。「XF500mmF5.6 R LM OIS WR」は35mm判換算762mmというXシリーズ史上初の超望遠単焦点レンズです。

そんな最新レンズを先行使用し、6月下旬から7月中旬にかけて北海道の野生動物を撮影する機会を頂きました。今回は、その時に撮影した野生動物写真を用いて「XF500mmF5.6 R LM OIS WR」のファーストインプレッションをご紹介したいと思います。

軽量コンパクトな超望遠単焦点レンズ

「XF500mmF5.6 R LM OIS WR」の第一印象は、何と言っても「すごく軽い」という点でした。質量は1,335gと800mmクラスの超望遠としては非常に軽量です。フルサイズで800mm F5.6というスペックのレンズと比べたら質量は半分以下と言えますし、大口径の超望遠単焦点レンズでありながら、撮影の終始を通じて抜群の機動力を発揮できるようになりました。

左:XF500mmF5.6 R LM OIS WR
右:XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR

現行の超望遠ズームレンズ「XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR」(右)と比較すると、「XF500mmF5.6 R LM OIS WR」(左)はフード約1つ分コンパクトになっています。全長は255.5mm、直径はφ104.5mmで、前玉にはφ95mmのフィルターが装着可能。外装はXF150-600mmと同じシルバーがかった白塗装が特徴的です。

低照度に強い開放F値5.6

「XF500mmF5.6 R LM OIS WR」は開放F値5.6の明るさを有利に使うことにより、薄明・薄暮等の低照度で野生動物を撮影するのに最適な超望遠単焦点レンズです。

また、手ブレ補正効果も5.5段分を実現しており、低照度の中での手持ち撮影でも、その効果を実感することができました。

エゾリス
■撮影機材:FUJIFILM X-H2 + XF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO1250 F5.6 1/50s 被写体検出「動物」手持ち撮影

幹にかけ上がったエゾリスが静止した一瞬のタイミングで、AF照準・フォーカス・撮影を行いました。薄暗い環境でしたが、感度を抑えてシャッター速度が上がらない条件でも、素早いAF性能や5.5段の手ブレ補正効果の甲斐もあって、手持ちでもブレずにしっかり止めて撮影ができました。

レンズが軽いので取り回しも楽で、一日中撮影しても持ち重りを感じず、疲れることなく快適に撮影することができました。

超望遠単焦点レンズなのに寄れる強み

遠くの被写体を手元に引き寄せ撮影することができるのが超望遠レンズの使命ですが、「XF500mmF5.6 R LM OIS WR」の最短撮影距離は2.75mなので、近距離の撮影も可能です。

このため、撮影者の近傍に不意に現れた被写体も撮影が可能となっています。

ノビタキ
■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO640 F5.6 1/800s 被写体検出「鳥」手持ち撮影

野鳥を撮影するために草原に潜んでいると、最短撮影距離付近の植物にノビタキの幼鳥が乗りました。最短撮影距離が長いレンズでは諦めるようなシーンでも、このレンズなら問題なく撮影することができます。

2.75mの最短撮影距離のおかげで、不意に近傍に現れる被写体にも近すぎてピントが合わず撮影できない、ということが無いのは超望遠単焦点レンズにとって大きなメリットです。

エゾシマリス
■撮影機材:FUJIFILM X-H2 + XF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO1250 F5.6 1/420s 被写体検出「動物」手持ち撮影

「XF500mmF5.6 R LM OIS WR」の最大撮影倍率は0.2倍。最短撮影距離で撮影したエゾシマリスは、原寸大より一回り大きく撮影できます。

超望遠なのに被写体に寄れる「XF500mmF5.6 R LM OIS WR」をフィールドで使用することは、撮影者にとって大きなアドバンテージです。

進化した高速AF

最新のレンズ設計によりAF性能も進化しており、飛翔する野鳥の追従能力が格段に向上したことを撮影で実感することができました。これにより、更にアグレッシブな表現も可能となりました。

ミサゴ
■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO1600 F5.6 1/125s AF-C ゾーン 三脚撮影

AFの追従能力が格段に向上したことにより、シャッター速度が低速でもしっかり追従してくれるので、写真のように低速シャッターで羽をブラして躍動感を与えつつ、瞳にはしっかりピントが来ているような撮影も可能になりました。

性能の進化で表現の幅が広がり、今まで諦めていたシーンの撮影が可能になったことで新たな創作意欲が涌いてきます。

アオサギ
■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO2000 F5.6 1/1250s AF-C ゾーン 手持ち撮影

アオサギのような比較的遅い飛翔をする鳥は、簡単に撮影が可能です。

AF追従能力の向上により、連写をしてもアオサギの小さな瞳を確実に捉え、AFが一度喰いついたら離さない粘り強さの進化も感じることができました。

ハヤブサ
■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO800 F5.6 1/4000s AF-C ゾーン 手持ち撮影

高速で獲物に急降下するハヤブサに対しても、進化したAF性能により手持ち撮影にもかかわらず、しっかりと捕捉・追従してくれました。

動きの速い野生鳥獣にも柔軟に対応できるようになったことで、撮影ミスが減り確実に撮れる「信頼性」が更に向上しました。

FUJINONの冠を継承した高い描画性能

最高峰のレンズのみに与えられる称号「FUJINON」の冠がレンズフードに入った「XF500mmF5.6 R LM OIS WR」は、スーパーEDレンズを含む14群21枚ものレンズを贅沢に使用しており、クリアで高い描画性能を誇ります。

オオセグロカモメ
■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO800 F5.6 1/2000s AF-S シングル 手持ち撮影

雛の世話に忙しいオオセグロカモメ。背景のグリーンも鮮やかに美しく描画されており、初夏らしさを感じる一枚となりました。

エゾユキウサギ
■撮影機材:FUJIFILM X-H2S + XF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO640 F5.6 1/200s AF-S シングル 手持ち撮影

林道で佇む夏毛のエゾユキウサギの撮影では、さすが超望遠単焦点レンズという描画力で、前ボケから背景ボケまで滑らかでとろけるようなボケ味を実感することができました。

トラフズク
■撮影機材:FUJIFILM X-H2 + XF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO1600 F5.6 1/70s AF-S シングル 手持ち撮影

低照度の暗い森の中に佇む鋭い眼光のトラフズクを「XF500mmF5.6 R LM OIS WR」を使用して撮影しました。

ISO感度を極力抑えて撮影したため、シャッター速度が上がらない状況でしたが、手持ち撮影にも関わらず圧巻の描画力をみせてくれ、フィールドでは頼もしい一本になることは間違いないと感じました。

エゾシカ
■撮影機材:FUJIFILM X-H2 + XF500mmF5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:ISO640 F5.6 1/150s AF-S シングル 手持ち撮影

柔らかい光の中、一本飛び出した野草に興味を持つエゾシカの赤ちゃん。奥ではお母さんたちの群れが夢中で草を食べています。

「XF500mmF5.6 R LM OIS WR」の登場で、様々な野生動物のシーンが圧巻の描画力でドラマチックに表現が可能となりました。

まとめ

発表されたばかりの「XF500mmF5.6 R LM OIS WR」で撮影した野生動物写真をご覧いただきましたが、いかがだったでしょうか?

開放F値5.6の超望遠単焦点レンズでありながら「軽量コンパクト」「被写体に寄れる」「進化した高速AFと描画性能」と、野生動物の撮影では重要な要素のどれもがこれ一本に凝縮された、渾身のレンズに仕上がっております。

超望遠の「XF500mmF5.6 R LM OIS WR」が新たなラインアップに加わり、機材価格も含めて野生動物の撮影を有利に進められるのがXマウントの強みです。ぜひともFUJINONの最高峰レンズ「XF500mmF5.6 R LM OIS WR」をフィールドで試して、その違いを実感していただければ幸いです。

 

 

■自然写真家:高橋忠照
1982年北海道札幌市生まれ・山形県育ち。上富良野町在住。陸上自衛隊勤務を経て、2019年自然写真家に転向。自衛隊時代に培ったスナイパー(狙撃手)の技能を生かし、自然の中に同化して野生動物を探し出す独自のスタイルでの撮影を得意とする。作品は小学館、チャイルド本社、フレーベル館等の児童書や雑誌、カレンダーなど掲載多数。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員

 

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