クモリがあるジャンク品を実写レポート|ライカ Elmarit-M 135mm F2.8 後期
新宿 北村写真機店のジャンク品コーナーは、オールドレンズが好きな方には宝庫のような場所です。すべて中古品なので個体差が大きく、状態と価格のバランスを考えながら購入検討するのも、楽しさのひとつだったりします。
今回は、この宝の山から発掘した、クモリありのレンズ「ライカ Elmarit-M 135mm F2.8 後期」がどんな写りをするのかを、スナップの作例とともにレビューいたします。
ジャンク品「ライカ Elmarit-M 135mm F2.8 後期」スペック・外観編
メガネ付きのデザインが特徴の本レンズは、レンズ構成3群5枚の単焦点レンズです。焦点距離は135mm、開放F値はF2.8。もともとはレンジファインダー機のライカで使用するために作られたレンズなので、焦点を合わせやすくするためには、距離計の倍率を拡大するメガネを使用してね!という、撮影アシストの意味でメガネが付いています。が、今回は「気軽にジャンクレンズで撮影する」をテーマに掲げているので、筆者が常用しているSIGMA fp Lに付けて、その不思議なデザインを楽しみながら撮影しました。
この組み合わせだと、機能的にはメガネは飾りとなってしまうのですが、金属の質感といい、特別感が増して個人的には撮っていて楽しいデザインでした。小型ボディのSIGMA fp Lを使用することのメリットは、少々重量のある本レンズを、なるべく軽く使いたいという希望を叶えてくれることがあります。
マウントアダプターは、焦点工房オリジナルブランドSHOTEN(ショウテン)の、「LM-LSL M (ライカMマウントレンズ→ライカSL.Lマウント変換) ヘリコイド付きマウントアダプター」を使用しました。薄型でカメラとレンズのデザインを阻害しないのがお気に入りです。
本レンズの新宿 北村写真機店での販売価格は29,800円(撮影時・税込)でした。ジャンク品のレンズなので、何かしらの不調があるレンズが前提となり、返品・交換は不可となります。今回はレンズ内にクモリが見られましたが、ピントリングの粘りなどもなく、外観も綺麗だったのが印象的でした。
クモリの影響は?ジャンク品「ライカ Elmarit-M 135mm F2.8 後期」実写編
まず、晴れている屋外での撮影では、驚くほどクリアーな画を生み出してくれました。ピントが合っている面の被写体の描写はとても繊細で美しく、質感をも感じさせてくれます。135mmの圧縮効果が素晴らしく、このサイズでこの奥行き感を得られる、しかもジャンクレンズなのでとっても安価……となると、かなり心躍らされます!
レンズ内部にクモリがある場合、逆光での描写に不安が出ると思います。若干シャープさが損なわれたような気もしますが、135mmの画角の特性上、ふんわり感を演出するほうが多いので、もっと天気の良い日に思いっきりフレアーを出現させたいと、逆に思ってしまいました。
竹ぼうきの細かい枝の描写は、近頃のくっきり感を重視したレンズに比べればモワッとした緩やかな写りになりますが、くっきり・かっきり描写のレンズに飽きが来ている方には、最高のテンションでお勧めできるレンズだと思いました。輪郭は柔らかながら、竹の質感は丁寧に描かれているので、まさにオールドレンズ好きを唸らせる描写です。
背景の旗のボケへ至るグラデーションは急な曲線を描き、立体感を好む方には魅力的な描写です。筆者はこの写真が、一番本レンズの特徴が出ている写真だと思いました。
かなり薄暗い室内での撮影になります。明るい開放F値に助けられて、望遠画角ながらISO800で適切な明るさを得られました。
前ボケは意外とはっきりと輪郭を描く印象。ジャンクレンズにしては写り過ぎじゃないかと思うほど。大きなキズやクモリがレンズ中心部にないのか、主役の被写体を中心部付近に持ってくると、全体がシャープな印象の写真にすることができます。
そうやって、使いながらレンズの個性を知っていくのも、個体差のあるジャンクレンズを持つ楽しみだったりしますね。
こちらもかなり薄暗い室内で撮影しました。縦横のラインが多い被写体を撮影すると、レンズの中心部だけではなく、四隅の描写性能がわかりやすいです。
周辺光量落ちはそれなりにあり、気になる方はRAW現像時に調整してもいいかもですが、筆者は、これは活かしたほうが格好良いなと感じました。ボケの滲みはレンズ内のクモリのせいかもしれませんが、この価格帯にしては影響がない方でしょう。
ライカMマウントと言うとスナップ向きの35mmと50mmが人気のラインなので、135mm画角の本レンズは、中古市場でお安く出ていることが多いレンズでもあります。それだけに、中望遠から望遠画角がお好みの方は、コスパ良く状態のいいレンズを手に入れられるかもしれません。
約3万円で、この前後の大きくて柔らかいボケを作り出してくれるレンズが手に入るのかと思うと、ジャンクコーナーに通い詰めたくなってしまいますね。
まとめ
本レンズのようなオールドレンズを手に入れたら、ぜひモノクロの写真を撮ってみてください。柔らかい描写が得意なこのようなオールドレンズは、黒から明るいグレーへのワントーンのグラデーションがとても柔和で、その滑らかさが艶かしく、ドキッとするような雰囲気を醸し出してくれます。ハイライト部は白トビしないギリギリの露出にして、明暗の差が大きくなるようにすると、オールドレンズらしい、よりドラマティックな写真に仕上げることができます。
ジャンクレンズとの出会いは一期一会。相性のいいレンズと出会えたら、ぜひ、お家に連れて帰って慈しんであげてください。
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。
ジャンクカメラ・レンズの取り扱い
新宿 北村写真機店をはじめ、ジャンクを取り扱っているカメラのキタムラ店舗ではご購入前に実際に手に取ってご確認いただけます。ぜひ自分にあった一品を見つけてみてください。
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