ニコン Z fc レビュー|持って、撮って、見せて楽しめるミラーレスカメラ
はじめに
「ニコン FM2」にインスパイアされたクラシカルなデザインで、発表と同時に話題となった「Nikon Z fc」。「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」のズームレンズがセットになった「Z fc 16-50 VR SL レンズキット」は7月23日に発売され、「NIKKOR Z 28mm f/2.8」の単焦点レンズがセットになった「Z fc 28mm f/2.8 Special Edition キット」は、ようやく10月1日より発売となりました。
筆者が予約したセットはこの単焦点レンズキットでしたので、記事執筆時はまだ自分の機材は手元にないのですが、広報機をお借りできましたので、ポートレートのスチールとムービーでレビューをお送りいたします。
ファッションの一部になるクラシカルデザイン
本機を語るのでしたら、まずそのデザインについて言及したくなります。一見すると銀塩カメラのようなフラットな形状のボディ、黒とシルバーの色味も安っぽくないのが好印象。ペンタプリズム部のデザインとNikonの刻印文字は、ノスタルジックな気分を盛り上げてくれますし、アルミ削り出しのダイヤルは操作する楽しみを増してくれます。個人的には、円形の接眼目当ての採用がかなり嬉しいです。
また、「NIKKOR Z 28mm f/2.8」との組み合わせで約605gと、気軽に持ち歩ける重さなのもポイントが高いです。軽くて嬉しいのは、首から下げて歩くことが多くなりそうだから、という理由もあります。この可愛らしい外観でしたら、バッグにしまわずにファッションの一部として使いたくなります。
ポートレート・ショート・ムービー
動画は、4K UHD/30pをクロップ無しで撮影できますし、ジンバルを使った低い位置での撮影に便利なバリアングル式画像モニターや、瞳AF/動物AFの搭載、フルHDであれば120pのハイフレームレートの撮影が可能なことや、ソフトがなくてもカメラ内でスローモーション動画を撮影できたりと、動画撮影に必要なひと通りの機能が搭載されています。
そのなかでも、本機で動画を楽しむのでしたらぜひ使っていただきたいのが「アクティブD-ライティング」と、「クリエイティブピクチャーコントロール(Creative Picture Control)」です。
「クリエイティブピクチャーコントロール」は、静止画と動画の色味や鮮やかさなどの雰囲気を、ワンタッチで変えられる画作り設定機能です。撮影後にカラーグレーディングを行って、イメージに合うように色味を編集するのもいいのですが、カメラが生み出す色味をそのまま動画にするのは、そのカメラを使う楽しさのひとつだと思います。
また、「アクティブD-ライティング」は白とび、黒つぶれを軽減してくれる機能で、静止画撮影では多用しています。動画撮影時も、天気のいい日にポートレートムービーを撮るときは、明暗の差が出すぎないように「標準」か「強め」に、街中の光と影を強調したいときは「弱め」か「なし」に設定して、輝度差をコントロールすると、より自分のイメージに近い動画を簡単に撮ることができます。
今回は、「クリエイティブピクチャーコントロール」を多用して、ノスタルジックながらも、ちょっとコミカルなイメージに仕上げてみました。足のカットだけ、ソフトを使用してハイスピードにしています。
シャッターチャンスを逃さない瞳AF機能
ポートレート撮影でやっぱり便利だなと思えるのは、瞳AF機能です。正面はもちろん横顔も、後ろを向くと頭を人体として認識するので、振り向いた顔にすぐピントが合い、シャッターチャンスを逃しません。
また、街中でのポートレート撮影はカメラボディやレンズによって注目を浴びることもあるのですが、「Nikon Z fc」と「NIKKOR Z 28mm f/2.8」のセットで撮影をしていると、商業的ではなくライトな撮影に見えるので、道行く人の足を止めることもなく、自然な街の情景の撮影が行えました。
安心の高画質性能
画質の綺麗さは言うに及ばず。可愛らしい外観には似つかわしくないほど、しっかりとした性能がボディに詰まっています。画像処理エンジンはEXPEED 6を採用。常用最高ISO感度は51200で、薄暗いシーンでもノイズを抑制したクリアーな描写を得られます。Z 6II、Z 50を所持している筆者が安心して使用できる高画質性能でした。
遊び心のある「クリエイティブピクチャーコントロール」
こちらは「クリエイティブピクチャーコントロール」のレッドを使用しました。この「クリエイティブピクチャーコントロール」は動画でも使用しましたが、ワンタッチで写真のムードを変えられる便利な機能で、ニコンが開発した様々な色味を体験できます。
このレッドは、単に赤色が乗るだけではなく、退色したフィルムのようなノスタルジックな画にしてくれるので、スナップで多用しているモードです。写真は、そこにあるものを正確に写し取ることも大切ですが、遊び心のあるカメラなら、撮影も遊び心満載で行いたいなと思いました。
モードの切替などの設定は、背面液晶のiメニューからタッチ操作で変えられるので、液晶や電子ビューファインダーで確認しながら、簡単、気軽に行えます。
やっぱりピカイチ!ニコンの電子ビューファインダー
今回、Zシリーズ初のバリアングル式液晶モニターを搭載しています。Z 50のような下方向のチルト式ですと、三脚に干渉してしまって自撮りのときに不便を感じていたのですが、本機でそれが解消されました。バリアングル式液晶モニターは自撮りだけなく、静止画、動画共にローアングル撮影時にも使用するので、今ではなくてはならない機能となりました。
また、ニコンの特徴として、電子ビューファインダーの見え方が素晴らしく綺麗だということがあります。これは本当に、カタログスペックを見るよりも、とにかく実機を覗いて見ていただきたい綺麗さなんです。普段液晶モニターを見ながら撮影している方も、ニコンのカメラなら、電子ビューファインダーを覗いて撮影したくなること間違いなしです!
デザイン性だけではなく操作性も向上させたダイヤル類
デザイン性だけでなく、操作性の向上にも一役買っているのが、カメラ上部の3つのダイヤルです。ISO感度、シャッタースピード、露出補正を天面のダイヤルで変更できるので、基本的な操作系統がまとまって使いやすくなっています。
特に、カメラを初めて持って、これから写真を始めようという方には、この3つが目に見える位置に物理ダイヤルとして存在しているのは、わかりやすくて便利だろうなと思いました。筆者はポートレート撮影はマニュアル露出で行うことが多いので、ISO感度とシャッタースピードをダイレクトに変更できるこのデザインはとても便利でした。
Z fcにぴったりなクラシカルデザインの単焦点レンズ
今回使用した「NIKKOR Z 28mm f/2.8」も、「Nikon Z fc」が「ニコン FM2」にインスパイアされたデザインなのと同様に、「ニコン FM2」発売当時のマニュアルレンズにインスパイアされたヘリテージデザインとなっています。特徴的なローレットや、存在感の大きなコントロールリングなど、「Nikon Z fc」と併せて持ちたいレンズ外観に仕上がっています。
28mmという画角なので、使用するボディによって見え方がガラリと変わるのが、このレンズの特徴です。FXフォーマット機で使用すれば、空間の広がりを表現できる広角画角のレンズとなり、DXフォーマット機で使用すれば焦点距離42mm相当(35mm判換算)なので、今回のようなボケを活かしたいポートレートでの使用が楽しい、標準画角のレンズとなります。
ステッピングモーターを使用しているので、駆動音や操作音を気にしないで動画撮影時ができるのも、大きなメリット。個人的には、非沈胴式なのも好みです。
「Nikon Z fc」は「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」のズームレンズがセットになった「Z fc 16-50 VR SL レンズキット」も試用しましたが、単焦点好きな筆者としては、クラシカルなデザインも手伝って、本レンズとのセット「Z fc 28mm f/2.8 Special Edition キット」のほうが、やっぱり好みだなと感じました。
このデザインでしたら、きっとオールドレンズも似合うんでしょうね。まだ手元には届いていませんが、試用してさらに夢が広がりました。
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。 (社)日本写真家協会(JPS)会員。
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