幻想的な絵作りが楽しめる!!全国絵になる水族館めぐり撮影旅~九州編~
はじめに
皆さんこんにちは。写真家の虫上です。今回は前回の沖縄編に続いて水族館撮影旅の九州編です!九州には沢山の水族館があり、その中でも絵になりそうな水族館を巡ってきました。前回の移動手段は飛行機とレンタカーでしたが、今回はマイカーで車中泊をしながらゆっくり周ってきました。
水族館内は人工のLEDライトを使用している場所も多いのですが、撮影の際は自然光を使用したり、わざと赤色などの照明を活用したりと様々です。なので、水族館撮影でのカメラのWB(ホワイトバランス)はオートや太陽光、蛍光灯など、その都度変更して被写体に合った撮影をすることをお勧めします。
また、RAWデータで撮影すればWBは後で変更可能ですので、できればRAWでの撮影をお勧めします。私の場合、撮影モードはいつも使っている「絞り優先(A)」モードで撮影しています。これは慣れたモードだとどんな感じに撮影できるかが容易に予想できるからです。例えば水槽が暗ければF値を小さくしたりISO感度を上げたりすれば良いですし、シャッタースピードが遅くなれば被写体ブレも出ますがそれを利用して絵作りを予想することもできます。
ISO感度に関してはオートで撮影すると楽なのですが、出来ればこちらもその都度変更して撮影しています。ISOオートだと意図せず高感度になりノイズが出たり、ざらついた作品になりやすいのが嫌なためです。
【鹿児島】ジンベエザメの撮影が狙い目!
いおワールドかごしま水族館
いおワールドかごしま水族館は背景に桜島が見える、とても素晴らしいロケーションの中にある巨大な水族館です。ここから沖縄などに向かうフェリーが出ていますので旅の拠点にも良いところでした。
幻想的なトンネルエスカレーターを上がっていくと見えてくるものは……
ジンベエザメの巨大水槽でした。水槽上部からの光とジンベエザメの映り込みを意識して撮影すると美しく表現できます。
また、人物のシルエットを入れることで魚の大きさを表現できます。この水族館はそこまで混雑していないことが多かったのでゆっくり撮影できました。
ヘコアユという縦に泳ぐ魚が目に入りました。下部にアクセントとなるクロホシイシモチを入れることで絵にしたかったのですが、その後タツノオトシゴが登場したのでじっくり粘って撮影したのがこちら。
背景と魚の向きなどが奇麗に揃う瞬間を撮影するには、まずはじっくりと魚の動きを観察して、その後背景と魚のチャームポイントなどを確認することがポイントです。この時はタツノオトシゴが黒い個体でしたので、体のラインが奇麗に表現できる真横になる瞬間を待ち撮影しました。
さて、かごしま水族館でとても興味深い展示だったのがこちら。その名も「ウミウシ研究所」。スキューバダイビングではその形や色などからウミウシがとても人気が高い被写体です。しかしながら、とても小さい個体も多いので撮影には苦労します。
水槽を入れないで自然な感じで撮影したのですが、このように擬態している小さなウミウシなどは、一瞬主役が何なのか判らない表現になりやすいので注意が必要です。大型モニターなどで大きく表現するには向いているのですが…。
水槽への映り込みの部分を強調してシンメトリーになるように表現しました。ですが、ウミウシの背後のぽつぽつが気になるところ。
黒バックでウミウシをシンメトリーな表現にして主役を引き立てましたが、やはりどうしてもぽつぽつや水槽の循環パイプが写りこんできました。結果、違う水槽に移動して、出来る限り人工物が写らない構図を探して写したのが下の写真となります。
なんとか水槽が写らない角度で撮影できました。ウミウシがまるで宝石のように表現できて、今回のウミウシコーナーでは一番のお気に入りです。お陰でウミウシ研究所でかなりの時間を費やしました(笑)。
次にどこの水族館でもかなりの人気者、クラゲのコーナーに来ました。動画を見てもらうとわかりますが、背景がうるさく感じたので手前に来るキャノンボールジェリーフィッシュにピントを合わせることで背景をぼかして、可愛らしく奇麗に表現しました。レンズの種類にもよりますが、このように手前の被写体にピントをあわせると背景がボケて主役が引き立ちます。スマホのカメラだと動画のように背景をぼかすことが難しいです。
こちらはカメラの多重露光機能を使用して撮影しました。この写真の撮影方法ですが、まずはピントを合わせた可愛らしいキャノンボールジェリーフィッシュを1枚撮影して、2枚目はピントをぼかして丸い大きなボケを中央に配置して、幻想的になるようなイメージで撮影しています。
こちらは大型のクラゲの展示でしたので、動画を見ると判りやすいですが全体的に撮影すると少しうるさく感じました。じっくり観察していると、クラゲの触手のラインがレースのカーテンのようにとても魅力的に感じたのでそれを主役として撮影しました。
撮影後、黒い背景で奇麗でしたが浮遊物の映り込みが気になったので、下のようにレタッチソフトのAdobe Lightroomでゴミ取りをしました。
ただ、全ての浮遊物を除去すればいいというものでなく、浮遊物も位置や大きさによって距離感やリアル感などを表現するのに大切な添景となることが多いので注意が必要です。
この被写体は触手のカタチのみに魅力を感じましたので多くの浮遊物を消去した次第です。また、主役の決め方などの撮影のポイントとしては、動画を見ていただけるとより判りやすく感じられると思います。
Adobe Lightroomのゴミ取り機能は優秀で、凄く簡単に浮遊物を除去できますので重宝します。ゴミ取りした後の作品がこちら。
いおワールドかごしま水族館
入館料金は大人(高校生以上)1500円、小人(小・中学生)750円、幼児(4歳以上)350円。営業時間は9時30分~18時(入館は17時まで)。有料駐車場あり。
HP:https://ioworld.jp/
展示規模 ★★★★☆
コストパフォーマンス ★★★☆☆
撮影向き ★★★☆☆
お勧め度 ★★★★☆
【大分】色と光の演出がフォトジェニック!
マリーンパレス水族館うみたまご
次に向かったのは大分県。奇麗な海沿いにある大規模な水族館です。その名もマリーンパレス水族館「うみたまご」。入口手前には大きな青い卵が印象的ですね。
今年は寅年ということでこのような特別な水槽の展示が!福が来るということでフグと七福神のコラボレーション。一瞬、なんのことか判らない展示でしたが…笑
小さな魚や目のクローズアップには、背景も簡素化できるマクロレンズが非常に有効です。しかし、水槽に対して斜めからの撮影だと殆どピントが合わないので、必ずガラス面に対してカメラ位置が平行になるよう、被写体が来るのを待って撮影した結果がこちら。
この水槽ではマクロレンズでは共生ハゼとテッポウエビの両方にピントを来させるのがとても難しかったので、レンズを17mmの広角に替えて水槽の縁をわざと取り入れて共生している瞬間を撮影しました。広角レンズでは被写界深度(ピントの合う範囲)が深くなるので、このような被写体は撮りやすくなります。
案外多くの水族館で見られる、アイドル的な存在のチンアナゴ。特にゼブライエローの個体は絵になります。じっくり粘って背景が3色になるようにカメラ位置を調節し、被写体が来るのを待って撮影した作品がこちら。
次に向かったのは暗くライトアップした水槽……何かが集団で泳いでいます。近くでみるとアオリイカの水槽でした!このようなライトアップした水槽は、背景も暗く表現できてとても幻想的な作品ができやすいので狙い目です。
水槽に寄って、アップめで撮影してみます。背景に数匹入れていい感じになりました。
次に多重露光撮影にも挑戦しました。1枚目はAFでピントが合った撮影、2枚目は瞬時にMFにしてピントをぼかして撮影してみました。この手法ならソフトフォーカスフィルターを使用せずに簡単にソフト効果が得られますので、多重露光機能が付いたカメラをお使いなら是非試してみてください。
太刀魚の水槽は初めて見ました!とても幻想的です。水槽がとても暗いのですが、魚に光があたる瞬間はシャッタースピードを速くすることができるのでその時に撮影するのがポイントです。背景の案内板の映り込みは奇麗に思えたのであえて入れてみました。動画も撮影したので幻想的な世界をご覧ください。
他にも幻想的な水槽コーナーが目白押しでした。時間がいくらあっても足りないくらいに珍しい演出や魚が多いです。
アートな水槽は人物のシルエットなどを入れることで絵になります。
アシカのプールもありました。背景にプールを取り入れることで奇麗な表現に。アシカがのけぞるように左上を向いていたので、作品にすると分かりにくい感じがしました。あとで上下左右を反転すると顔が判りやすく表現出来ました。
外での展示にはイルカのプールが定番なのですが、その端で面白い光景が目に留まりました。来館者の皆さんがイルカのイベントに気を取られているスキに、カモメが魚を横取りしようかと待ち構えているようです。動画ではその状況がかなり判りやすいので是非ご覧ください。
マリーンパレス水族館うみたまご
入館料金は大人(高校生以上)2300円、小人(小・中学生)1150円、幼児(4歳以上)750円でした。営業時間は9時~17時。大型有料駐車場あり。
HP:https://www.umitamago.jp/
展示規模 ★★★★☆
コストパフォーマンス ★★★☆☆
撮影向き ★★★★★
お勧め度 ★★★★☆
【熊本】海のど真ん中に水族館が!
わくわく海中水族館シードーナツ
さて、熊本県の水族館はちょっと変わっていて、海のど真ん中にあるということで早速向かいました。熊本では超有名なピンクのくまもんバスが駐車場から送迎しています。入り口を入るとかわいらしいウミガメがお出迎えしてくれました。
周りの空間を多く取り入れてアート的に切り取るにはとてもお洒落な水槽でした!
海中に展示がある水族館は初めてでした。
数十分粘ってこの水族館で一番興味を引いたテングカワハギの幼魚を撮影しましたのがこちら。
バンガイカーディナルフィッシュ。背景のライトを丸ボケにしてファンタジックに。
ここの水族館は天草という場所柄、イルカと触れ合える施設で有名です。目の前まで寄れる、イルカのドアップ写真が簡単に撮れます。
わくわく海中水族館シードーナツ
入館料金は大人1300円、小中学生800円、幼児(4歳以上)400円でした。冬季の営業時間は9時~17時、夏季は9時~18時。大型無料駐車場あり。
HP:https://amakusapearl.com/sea/
展示規模 ★★☆☆☆
コストパフォーマンス ★★★☆☆
撮影向き ★★☆☆☆
お勧め度 ★★☆☆☆
【福岡】有明海にしかいないレアな魚が見れる!
やながわ有明海水族館
最後にお伺いしたのは福岡県柳川にある、やながわ有明海水族館です。柳川というと川下りやうな重を連想するかと思いますが、なんとその観光地の中心部に水族館があるということで行ってみました。ここの水族館は有明海の生き物のみを展示していて、とても珍しいヤマノカミという魚がいるそうです。
こちらがヤマノカミ。例のごとく、通常の水槽展示なのでじっくり背景を考えての撮影。
こちらは有明海のエイリアンこと、ワラスボです。生きたワラスボの展示を見られるのはここだけかと。しかしながら個人で運営なさっているようで管理がなかなか大変そうなのと、水槽のガラスがやや汚れており撮影よりも有明海の魚を研究・観察するのには良いかと思いました。
やながわ有明海水族館
入館料金は大人 300円、小~高校生 100円、幼児 無料でした。営業時間は平日12時~16時30分、土日祝11時~17時、火曜休館(祝日の場合水曜)。駐車場なし。
公式Twitter:https://twitter.com/ariake_aquarium
展示規模 ★☆☆☆☆
コストパフォーマンス ★★★★☆
撮影向き ★☆☆☆☆
お勧め度 ★★☆☆☆
まとめ
いかがでしたでしょうか、今回は九州の中でも鹿児島や大分、熊本方面の水族館を巡ってきました。感想としてはどの水族館もウリがあり、大規模な水族館になるほど魅せる展示方法に凝っているな、と感じました。しかしながら小さな水族館だからこそ、やながわ水族館のワラスボのようなユニークな魚種展示で度肝を抜かれる水族館もあり、実際に行ってみないと写真だけではその水族館の良さが伝えられない部分も多々あります。コロナが落ち着いてきましたら是非行ってみてくださいね。
合わせて読みたい単行本「水族館めぐり」をご紹介します。この本は全国40施設の水族館を対象に沢山の素晴らしい写真と詳しい解説で構成されていて、絵になりそうな魚や各水族館のアイドル的な魚の紹介など、これからどの水族館に行ってみようかな?と思う方にとても参考になる本です。因みに私も作品を提供しておりますのでよろしければ探してみてください。
■写真家:虫上智
1968年岡山県生まれ。高校を卒業後、写真家 緑川洋一氏に師事。地元のカメラ店で撮影業務などを学び2000年に独立。現在はスタジオ撮影、フォト講座、執筆、フォトコン審査、講演等を受け持つ。ライフワークでは心象風景、自然写真、水中写真を撮影。
日本写真家協会(JPS)会員、日本写真講師協会 認定フォトインストラクター、OM SYSTEMゼミ講師、フォトカルチャークラブ講師、フォトマスターEX(総合)一級
水族館めぐりの連載記事はこちら
■全国絵になる水族館めぐり撮影旅~沖縄編~
https://www.kitamura.jp/shasha/article/484792720/