サムヤン AF 135mm F1.8 FE|個性的なボケ描写も楽しい大口径単焦点レンズ
はじめに
今回紹介するレンズは、サムヤン「AF 135mm F1.8 FE」。この「サムヤン」は、1972年に韓国で創業されたメーカーで、2010年頃から日本に正規輸入が開始され、現在は販売代理店として株式会社ケンコー・トキナーが扱っているレンズメーカーです。
サムヤンのレンズは、比較的リーズナブルな価格で高性能な単焦点レンズが魅力のポイントになっています。今回は、その中から2022年5月に発売された「AF 135mm F1.8 FE」をピックアップしてみました。「AF 135mm F1.8 FE」レンズの気になるスペックとその写りをご紹介します。
サムヤン「AF 135mm F1.8 FE」の基本スペックと魅力
サムヤン「AF 135mm F1.8 FE」のセールスポイントは、なんといってもコストパフォーマンスの良さです。焦点距離135mmF1.8の純正レンズと非常に似通ったスペックであるのに、レンズの市場販売価格はソニー「FE 135mm F1.8 GM」のおよそ半分程度で購入できるお財布にも優しい高スペックレンズです。
レンズ外観はシンプルな作りですがチープな感じは無く、αのボディに装着した際にもバランスよくマッチしています。
実際にソニー純正レンズと主な仕様を比較してみました。フィルター径も同じ82mmなのでレンズ筺体の大きさも非常によく似ていて、若干ですがサムヤンが少しだけ大きいです。しかし重量で見てみると、サムヤン「AF 135mm F1.8 FE」の方が約178gほど軽くなっています。この軽さは魅力の一つです。
サムヤン AF 135mm F1.8 FE |
ソニー FE 135mm F1.8 GM |
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焦点距離 | 135mm | 135mm |
レンズ構成 | 11群13枚 | 10群13枚 |
開放絞り | 1.8 | 1.8 |
最小絞り | 22 | 22 |
フィルター径 | 82mm | 82mm |
絞り羽根枚数 | 11枚 | 11枚 |
最近接距離 | 0.69m | 0.7m |
最大撮影倍率 | 0.243倍 | 0.25倍 |
手ブレ補正 | 無 | 無 |
全長×最大径 | 93.4×129.6mm | 89.5×127mm |
重量 | 約772g | 約950g |
発売日 | 2022年5月 | 2019年4月 |
キタムラ価格 | 120,600円 | 237,600円 |
スイッチ類は一般的なレンズ同様に、レンズ装着した状態で左側に集約されています。
カスタムスイッチは「M1」と「M2」に切り替えができ、「M1」の状態でフォーカスリングは通常のピント合わせ操作(マニュアルフォーカス)として使用できますが、「M2」に設定を変更すると、オートフォーカス時にはピントリングを絞りリングとして使用する事が可能になります。
動画撮影時には、非常に使い勝手の良い仕様です。静止画撮影においては、クリック感が無いのと、素早く動かした時にやや遅れて絞り設定が変更される感じがするので、静止画撮影時と動画撮影時とで上手く切り替えて使うのがよいでしょう。フォーカスホールドボタンはカメラ側でのカスタム設定が割り当てできるので、瞳AFの設定割り当てなどご自身の必要な機能を割り当てて使うことができます。
また、フォーカスリミッタースイッチを搭載しているため、フォーカス範囲リミッターを活用してAFが作動する焦点範囲の設定ができます。
オートフォーカスに関しては、サムヤン独自のステッピングモーターを使用して写真撮影ではフォーカスが速やかに正確に働き、動画では静かで滑らかにAF駆動します。オートフォーカスの速度に関しては、個人的な感覚にはなりますが通常のポートレート撮影やスナップ撮影ではまったく問題ないレベルです。しかし室内スポーツなどの動きの速い被写体では、オートフォーカスの初動にやや不満を感じることがありました。
下の写真は、α7R Vの被写体認識の「昆虫」や「動物」を設定して撮影したものになります。こういった最新のオートフォーカスの機能もしっかりと使えるレンズですので、安心して撮影を楽しむことができます。
いろいろ撮影していてもほぼ気にならなかったのですが、下の様な症状が1カット発生していました。虹色のフレアーが少し出ていますね。かなり撮影した枚数のうちの1カットのみだったので、あまり気にすることはないと思います。
全体的にその写りは、前回レビューしたサムヤンの「AF 85mm F1.4 FE II」と同じと感じました。深みのある落ち着いた発色と描写は、どんな被写体を選んでもそつなく自然な描写をしてくれます。ポートレートから花、スナップ撮影とあらゆるジャンルで使いやすいレンズです。
ボケに関して言えば、絞りを開けて撮影した際には周辺の解像度はやや低く、特に前ボケにぐるぐるボケが大きく発生する場合があるので、被写体や構図によっては注意が必要になってくる感じです。
下の写真は、絞り開放でピントは奥の提灯に合わせて撮影してみたものですが、周辺に大きく流れるボケが顕著に発生した写真になります。こういったボケを嫌う方も多いですが、特徴あるボケが発生するのはそのレンズの個性でもあり、魅力の一つとして有効的に作品づくりに活かすのも面白いかもしれません。
サムヤン「AF 135mm F1.8 FE」で花撮影
ちょうど見頃になってきた紫陽花や百合などの花を撮影してみました。最短撮影距離も0.69mなので、135mmの焦点距離も相まってお花の撮影も大きな前後のボケを活かした撮影ができ、柔らかい表現が可能なレンズです。
背景に発生する玉ボケは口径食も少なく、とても自然で大きな玉ボケを表現することができるレンズで好感がもてます。
焦点距離135mmで絞り開放F1.8で撮影した場合、ピントの合う範囲は非常にシビアです。ピント合わせには細心の注意が必要ですが、ピンポイントでピントが合っている部分は非常にシャープに描写されており、その前後の大きなボケによってピントを合わせた部分をより引き立ててくれるのは、このレンズならでは魅力ですね。
サムヤン「AF 135mm F1.8 FE」で水郷佐原あやめパークを撮影
次に筆者の最近のお気に入りの街、千葉県香取市へ行く事があったので、「あやめ」で有名な水郷佐原あやめパークを散策しながら撮影してみました。ちょうど「あやめ祭り」期間中だった事もあり、筆者が訪れた日は佐原囃子を演奏する「下座舟」が運航していて、撮影を楽しむことができました。
望遠レンズならでは奥行き感、絞り開放による大きなボケと柔らかさが被写体を上手く引き立ててくれています。距離的に少し望遠が足りないシーンもあったので、α7R Vの高画素のメリットを活かしAPS-Cクロップ撮影をすると焦点距離200mm相当のF1.8になり、思いきった切り撮りもできました。フルサイズ機のユーザーだけでなく、APS-C機のユーザーにも魅力あるレンズである事は間違いありません。
サムヤン「AF 135mm F1.8 FE」でお散歩スナップ撮影
最後は、ぶらぶらお散歩撮影に持ち出して気になったものを撮影。この「AF 135mm F1.8 FE」の魅力はやはり、大口径のレンズで明るいF値からもたらされる大きなボケです。基本的には絞り開放のみで撮影するスタンスでお散歩フォトを楽しんでみました。お散歩に持ち出した「AF 135mm F1.8 FE」ですが、フィルター径が82mmと大きなレンズの割にはそれほど重くないので、レンズを装着したボディを肩からかけていても疲れることはありませんでした。やはり重量が軽いというのは大きなメリットです。
焦点距離135mmなのでスナップ撮影的にはやや望遠よりで少し難しい感じでしたが、気楽なお散歩撮影なのでファインダーを覗きながら楽しんで撮影をする事ができました。
それほど明るくない室内での撮影においても、開放F値が明るいレンズなのでISO感度を上げなくても十分なシャッター速度を得られるのは、やはりありがたいですね。
このレンズの魅力を十分に味わうのであれば、やはりメインになる被写体の前や後ろに大きなボケを配置する撮り方がおすすめです。
まとめ
筆者は最近、サムヤン製のレンズをいろいろと使用していますが、「AF 135mm F1.8 FE」はその写り・描写力は、以前にレビューした「AF 85mm F1.4 FE II」と非常に似ているレンズです。どちらも純正レンズとは少し異なった趣を描写するレンズなので、そういった意味で描写に個性もあり撮影するユーザーを楽しませてくれるレンズです。
単焦点レンズならでは大口径で明るいレンズ、そして重量も軽くコストパフォーマンスの高いサムヤン「AF 135mm F1.8 FE」はとても魅力あるレンズではないでしょうか。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師