シグマ 35mm F1.4 DG DN | ArtとLUMIX S5で撮る旅の記録
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自然な距離感が魅力の35mm
2021年5月にシグマから発売されたArtシリーズの単焦点、35mm F1.4 DG DN | Art。2012年に登場したArtラインの最初のレンズ、35mm F1.4 SG HSM | Artをミラーレス専用設計として現在のニーズに応えるために、全く新たに構築したのがこのレンズである。いわば、Artシリーズの原点とも言うべきレンズのリニューアルなのである。現在Art F1.4シリーズのラインナップは、最近発表された20mm F1.4 DG DNと24mm F1.4 DG DNを加えて計4本となった。
カメラは、パナソニック LUMIX S5を使用した。LUMIX SシリーズはLマウントなので、もちろん全ての機能がしっかり動作する。今日も存分に写真と動画を楽しんで撮影した。まずは動画で、このレンズの描写や表現力をご覧いただければと思う。
緑あふれる情景をシャープに写し撮る
今回は、大分県由布市にある男池(おいけ)に向かう。残暑の厳しいこの日、高速道路を走る車の外温度計は35℃を示していた。九重ICを降りて、20号線をひたすら登り目的地に到着した。
エンジンを止めて、車のドアを開けると、ひんやりとした心地よい風を感じた。気温は24℃、とても涼しい。男池は多くの原生林が残る黒岳の森にある有名な湧水で、湧水量がとても多く1日に約2万トンと豊富な水量を誇る。
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■撮影環境:1/2000 f1.4 ISO100
詰所で清掃協力金100円を支払って中へ。受付の方はとても親切で、撮影スポットなどを丁寧に教えてくれた。撮影者にはとてもありがたい。
まずは絞り開放で1枚撮ってみる。屋根半分に苔を敷いた小さなログハウスの雰囲気が、とてもよく描写されている。広角と標準の間、35mmの画角がちょうど良かった。
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■撮影環境:1/100 f1.4 ISO100
詰所から少し歩くと、川のせせらぎが聞こえてきた。この日の天気は雲り、光はフラットで柔らかい。普段なら絞ってシャープに撮りたくなる景色だが、今回は曇りの優しい光に合わせて、できるだけ絞りを開けて撮影してみることにした。
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■撮影環境:1/100 f1.4 ISO100
ゆっくりと流れる小川を覗き込むと、驚くほど水が透き通っていた。川面に映る木々を、少し絞ってf5.6で撮ってみる。眠くなりがちな光でも、抜けの良いシャープな描写をする。
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■撮影環境:1/200 f1.6 ISO200
川のせせらぎを聞きながら歩き続けると、木造の橋が現れた。足場が悪かったので木に肩を預けて撮影をした。前ボケも滑らかで柔らかい。
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■撮影環境:1/400 f1.4 ISO400
橋の中ほどから振り返ると、歩いてきた道の横を流れていた川がよく見える。
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■撮影環境:1/640 f1.4 ISO400
日陰からひっそりと茎を伸ばすミズヒキ。花は咲終わり鉤のついた小さな実は、登山者の服にひっついて新しい場所を探す準備ができている。
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■撮影環境:1/200 f2.0 ISO200
苔で覆われた大きな岩に、片足を乗せた大樹。
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■撮影環境:1/200 f1.4 ISO200
ひときわ大きなケヤキに近づいてみると、幹の裏には丸い窓が開いている。前後のボケの表現は唐突感もなくスムーズに表現されていて、合焦部分は上品でキレのある描写。曇天でコントラストが低い日も撮影が楽しい。
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■撮影環境:1/60 f1.4 ISO200
登った先に何があるのかわからないが、倒木が作ったトンネルを抜けて、森の中をさらに奥へと進む。
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■撮影環境:1/250 f1.4 ISO200
道標のロープを見失ってしまったが、さらに森の奥の方へ進んでみると、辺りを見渡せそうな大きな岩を見つけたので、登ってみることにした。
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■撮影環境:1/250 f1.4 ISO200
岩の頂上から辺りを見渡すと、森のさらに奥のほうに明るく開けた場所があることに気づいた。岩を降りて近くへと行ってみることにした。標準より少し広い画角は、撮影をあまり意識せず、ありのままを写真に収める感じがなんとも楽しい。
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■撮影環境:1/2000 f1.4 ISO200
明るい広場の方へ足早に進んでみると、枯れた低木のオブジェが迎えてくれた。足元の土は、水を含んで少しぬかるんでいる。
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■撮影環境:1/4000 f1.4 ISO200
広場の中心あたりまで歩くと、辺り一面に枯れた木々が立ち並んでいる。葉が枯れ落ちた枝、乾いて白化した細い枝は、まるで大きな蜘蛛の巣のように見えた。ここは池だったのだろうか?
画面周辺までキレがありシャープな描写が、細い枝の先まで繊細に表現してくれる。
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■撮影環境:1/800 f1.4 ISO200
イヌガヤの間を抜けて順路へと戻ることにした。
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■撮影環境:1/60 f1.4 ISO200
目印のロープがある方へ戻り、平坦な道をしばらく歩くと「男池」と書かれた、道標があった。 少しばかり歩き疲れ、持参した水も飲み干したので、男池のある方向へと素直に歩いて行くことにした。
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■撮影環境:1/100 f5.6 ISO200
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■撮影環境:1/160 f1.4 ISO200
教えて頂いた「岩をつかむ木」を見つけて、喉の渇きも忘れてしばらく見とれる。巨人が大きな岩を今にも持ち上げんとするように見える。自然が年月をかけて作り出したアートは力強い。
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■撮影環境:1/400 f1.4 ISO200
もう少し岩をつかむ木を見ていたかったが、川のせせらぎが聞こえて、喉が渇いていることに気づいた。枝の隙間にレンズを差し込むような格好で撮影した。枝葉が邪魔で満足にフォーカスリングを回すことができなかったので、オートフォーカスを使った。川面にピントを合わせた後、フォーカスが迷わないようにフォーカスロックボタンを押してシャッターを切った。こういった前ボケを活かした撮影をする際にフォーカスロックが役に立つ。
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■撮影環境:1/400 f1.4 ISO200
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■撮影環境:1/400 f1.4 ISO200
目的の男池にたどり着いた。水が湧き出る場所は意外にも水音は小さくとても静かだ。美しく青い水が、とめどなく湧き出ている。池の底で揺れる水草の葉の様子が、くっきりと見えるほど透明度が高く、池全体が光っているように見えた。備えてある杓を借りて、水をすくい手を洗うと、驚くほど冷たい。空になったペットボトルに湧水を注ぐと、その冷たさで表面が真っ白に結露した。冷えた水を一気に飲み干す。軟質で優しい味にとても癒された。しばらく涼んでから車に戻ろう。
さいごに
約半日、動画と写真でこのレンズを堪能した。最近はとても軽いIシリーズのレンズを使うことが多かったので、持った瞬間に少し重みを感じた。とはいえ640gしかないレンズ、単に「重さ」ということではなく「凝縮感」と表現する方がしっくりくる。それもそのはず、このレンズは大口径で開放F1.4のArtレンズなのである。その前提を忘れるほど気軽に使えるのが、このレンズの魅力だと感じた。足元の不安定な山道や枝を掻き分けて進むようなシチュエーションでも、レンズの存在は特に気にならない。気が向いた場所にサッと構えて気軽にシャッターを切ると、高揚するような描写力で応えてくれる頼もしいレンズだ。
今回のような場所では、超広角や望遠を使うことが多いのだが、35mmでの撮影はとても新鮮で楽しかった。「進化した基本のレンズ」このレンズ一本で、スナップ写真やポートレートや景色など、多くのシチュエーションで使えるだろう。気になる場所へ気軽にカメラを向けて自然な距離感でシャッターを切る。難しく考えず、撮影の原点に戻って楽しんだ。
■フォトグラファー/ ビデオグラファー:坂口正臣
雑誌の撮影を経て広告写真・建築写真・映像撮影など福岡を拠点に幅広く活動中。坂口写真事務所(SPO)を運営。