工場夜景を自分好みに撮る・仕上げる
はじめに
工場夜景がブームになってそれなりに年月が経ちましたが、今だ人気は衰えることなく週末の夜にはあちらこちらで撮影している人を多く見かけます。夜の工場は、不思議な世界がとても魅力的な被写体です。ちなみに「工場夜景の日」というものもあって、一般社団法人日本記念日協会により2月23日が記念日として登録されています。工場夜景で人気のスポットは北海道から九州まで各地に多くありますが、今回は神奈川県川崎市、横浜市の工場と、三重県四日市の工場で撮影した写真です。
工場夜景の撮影機材
工場夜景撮影に欠かせない道具は、やはり三脚と電子レリーズ。長秒露光をするためにしっかりとした大きめの三脚を用意します。もちろんそれに見合った雲台も用意しましょう。特に望遠系のレンズで撮影する場合は、ボディとレンズの合計重量を確認して三脚の耐荷重も確認しておきます。
Leofotoカーボン三脚LS-324Cと自由雲台LH40のセット
撮影する際に三脚を使用した場合のカメラやレンズの手ブレ補正機能をどうするのか?という事をよく聞かれます。三脚を使用して撮影する場合は、基本手ブレ補正は切って使用します。しかし特に望遠レンズなどで風の強い場合などは、三脚に固定していてもブレやすくなります。そういった場合には手ブレ補正をONにして撮影します。一度撮影した画像を確認しながら判断する事をおすすめします。
それから欠かせないアイテムはリモートレリーズです。リモートレリーズを使用しないで、そのまま指でシャッターを切ると手ブレ発生の原因となります。夜景を撮影する際には必ずリモートレリーズを用意しましょう。もし撮影の際にリモートレリーズを忘れてしまった場合には、セルフタイマーモードで撮影することによって、手ブレを回避できます。また撮影の際には、ご使用のカメラに電子シャッターがあれば積極的に電子シャッターを使用した方がブレ防止に繋がります。
撮影できる場所にもよりますが、筆者の場合は工場夜景撮影は望遠レンズを多用します。もちろん工場近く寄れない事もありますが、一部を望遠レンズで切り取って撮影すると精密な不思議な世界を表現できるからです。
工場夜景の撮影設定
カメラの設定は、絞り優先モードで撮影します。
工場夜景の撮影では、しっかりと絞って被写界深度を深くして撮影します。絞りを絞ることによる効果はピントの合う範囲が広くなる事と、工場夜景撮影においての光芒の効果をハッキリとすることができます。
光芒は光源から伸びる光の線の事で、特に工場夜景の場合には強い点光源のライトなどがあり、絞りを絞ることによって光芒を大きく表現する事ができます。
またこの光芒の光の線は、レンズの絞り羽根の枚数によって出方が変わります。絞り羽根の枚数が偶数枚であれば絞りと同じ本数、奇数枚であれば絞りの倍の数の光芒が出ます。一度お手持ちのレンズのカタログなどを確認してみてください。より多くの光の線を演出したい場合は、奇数の絞り羽根のレンズを使用します。
■撮影環境:シャッター速度10秒 絞りF16 ISO800焦点距離 93mm
上の写真のレンズは、ソニーFE 70-200mm F2.8 GM OSSで絞り羽根の枚数は11枚になります。絞り羽根の枚数が奇数なので、光芒の数は倍の22本になり、強い点光源から多くの光芒の光の線が伸びているのが分かると思います。
シャッター速度は、工場から出ているスチームなどの煙の具合によって調整します。スチームが無ければ、それほど長秒露光をしてもイメージは変わらないので、ブレないように少々早めのシャッター速度で撮影します。
スチームが出ている場合は、露光時間によってイメージは大きく変わりますので、2~3秒単位程度でシャッター速度を変えながら撮影し、自分のイメージに近づけていきます。
■撮影環境:シャッター速度15秒 絞りF8 ISO100焦点距離 102mm
特にスチームがあるような工場夜景シーンでは、撮影毎にその表情が変わります。同じシーンでも数カット撮ることをおすすめします。少し風がある日の夜の工場夜景は、絶好の撮影日和です。
工場夜景を撮影する場合に悩むのは、ホワイトバランスの設定ではないかと思います。
ホワイトバランスの設定で、工場夜景のイメージはガラッと変化します。
AWB(オートホワイトバランス)で撮影してもまったく問題はありませんが、せっかくなので自分の好みに合わせてホワイトバランスを調整して撮影してみるのもいいでしょう。
HDR加工で工場夜景を幻想的にアレンジしてみよう
HDR(ハイダイナミックレンジ)という言葉を聞いたこともある方は多いと思います。HDR加工は、通常のデジカメ撮影では再現できないダイナミックレンジ(最も明るい部分と最も暗い部分の明暗の比)を再現するための画像合成手法のことです。iPhoneなどのスマホのカメラにも、HDR機能が搭載されたりしていますし、カメラ側でHDR撮影ができる機種も多くなってきています。興味のある方は、一度お手持ちのカメラの取扱説明書などを確認してみてください。
カメラ側で機能があれば、露出を変えて何枚も撮影したものをHDR合成して仕上げたりするのですが、最近ではアプリ等で1枚の撮影画像から簡単にHDR加工が出来るものも増えてきました。
有名の画像加工ソフトPhotoShopでも、色調補正の項目の中に「HDRトーン」の調整項目があり、パラメータを操作することでHDR的な加工が可能です。今回はPhotoShopを使って簡易的にHDR加工をしてみました。
■撮影環境:シャッター速度15秒 絞りF11 ISO800焦点距離 131mm
■撮影環境:シャッター速度4秒 絞りF11 ISO800焦点距離 200mm(APS-Cクロップ300mm)
■撮影環境:シャッター速度8秒 絞りF16 ISO800 焦点距離 168mm
■撮影環境:シャッター速度10秒 絞りF8 ISO100 焦点距離 200mm
まとめ
工場夜景は長秒露光で撮影しているので、あっという間に時間が経っていて気が付けば深夜になってしまっている事がしばしば。公共の交通機関を使って撮影する場合は、帰りの交通機関の時刻にご注意を。ですので早い時間から撮影できる日没が早い冬のシーズンが撮影のおすすめです。また暗い場所、寒い環境での撮影には十分に注意して撮影をしましょう。手元を照らしたり、機材をチェックしたりする小さなライトを携帯する事をおすすめします。
■撮影環境:シャッター速度2秒 絞りF16 ISO800 焦点距離200mm HDRトーン調整
最近では工場を照らす照明機材もLED照明に変わってきている場所もあり、その雰囲気は今後も変化していくかも知れません。
上の写真は右側が従来から照明で、左側が新しくLED照明に変わった工場です。以前であれば右側の緑色のトーンだけでしたが、一部照明が変わった事によって撮れる写真のイメージも大きく変わりました。
今後の工場夜景を定期的に撮影するのもいいかもしれませんね。