スナップで街めぐり。一瞬の情景を愉しもう。Vol.16|六本木
はじめに
夜の街と言えば一番最初に思い浮かぶ六本木だが、ミッドタウンやヒルズが出来てからは昼間のスナップもよく撮りに出かけるようになった。個性的な建物もどんどんと増えて撮っていて飽きない場所だ。そんな六本木をどう撮ったか紹介したいと思う。
案内板の隙間から
二人で同じ場所を指さしている瞬間。反射があったとしても一人だとちょっと弱い場面。二人で一緒にというのが面白くてシャッターを切った。出来事とあと一つのなにかを待つ習慣をつけると、少し違う写真になってくれる事が多い。
エスカレーター横
傾いたガラスを通して撮影。屋根が映り込んで複雑な造形になった。その中にぽっかりと白く抜けている場所があったので、そこに行きかう人を入れてみた。全体はごちゃごちゃしているけれど、その中に一つの空間を見つけて人を入れる。カメラの高さの調整でこういった構図を作れることが多いのでやってみよう。
国立新美術館
普段、展示会場は有料で基本撮影禁止な事が多いが、書道展は無料で撮影も大丈夫な事が多いのでお勧め。大きな沢山の文字の中にぽつりと一人。好きな情景だ。ガラスのケースもあったのでその反射を使ってみた。
ミッドタウンの大きなガラスの柱
外れの歩道にあるこのガラスの柱、何年も見逃していたが超広角で近づいてみると反射するものすべてが面白い。このガラスを利用してその中に写っているものを撮るときは基本レンズを上に向けることになるが、そこで注意してほしいのは、レンズの先端を少しガラスから離してみることだ。レンズの影も消せることが多いのと、後ろの景色の撮れる面積が増える。
国立新美術館4階
ここも昔から撮っていた場所だが、この構図は前回に行ってやっと見つけた。夕焼けで窓の光がMAXだと特に反射が綺麗になる。床は大部分が木なのでここまで綺麗な反射は難しいが、脇の通路に大理石の床があってそこに超広角レンズを直置きで撮っている。真ん中の円が二つ写っているところがお気に入り。
六本木ヒルズ
イルミネーションの時期は定番の場所だが、ヘアライン処理されたステンレスの手すりにレンズの下半分を重ねて光を伸ばすテクニックを使っている。皆が一斉に同じ場所へレンズを向けて写真を撮っている場所でも、手前にちょっとした何かを探すと、少し違った写真になってくれる。特に手すりは見落としがちだが、個性を出す一番の被写体だったりするので、探す癖をつけてみよう。
ネクタイ屋さん
ガラスの格子が気に入って少し様子を見ていたら、母子が父親のネクタイを選んでいると思われる光景に。顔は見えなくてもちょっとした向きで表情を感じることができる。いい場面でもさらに追い込むのは、人の位置はもちろんだが、顔の向きにも注意してシャッターを切ることが大事だと思う。
夜のガラスの柱
4枚目の写真の反対側。イルミネーションの時期、特に気に入ってここ数年は毎年撮っている。イルミネーションは直接レンズを向けて撮るよりも一つガラスの反射を入れた方が、雰囲気がある写真になることが多い。ここはガラスの線模様も沢山で、背面の風景も大きく入れたいので超広角レンズ一択だ。
国立新美術館入り口
企画展の時の特別な展示の日。狙って行くのは難しいが、ごくまれにこんな感じで外や窓がデコレーションされていることがある。鏡に映った女性をさりげなく、ちょっとしたしぐさも逃さずに撮ることができた。この「ちょっと」が写真には大事。
あとがき
ここ10年ぐらいでかなり印象が変わってきた六本木。まだ夜のイメージもあるが、晴れている日に美術館、ビルをメインに周ってみると楽しい被写体だらけで撮っていて飽きない街だ。特に国立新美術館の設計が素晴らしく時間を忘れて撮ってしまう場所。ここも超広角レンズがあるとインパクトのある写真が撮りやすいので、標準レンズとプラス一本持参することをお勧めする。
■写真家:富久浩二
日々の通勤風景を主に、いつも見ている変わりばえのない、しかし二度とやって来ない一瞬の情景を大切にし、ちょこっと人が入った物語りのある写真をテーマのもとに、人びとの優しく楽しい感情が伝わる事を目標に日々撮影している。子供の頃の目線、何と無く懐かしさを感じて貰える様に、ライブビューを使った低い目線、思い切って背伸びをした様な高さからの撮影が特徴的。