カメラのキタムラ
Vol.46 2003 AUTUMN
 
人に感動を与える写真を撮るには、謙虚になって
自分なりの表現手法を産みだしていくことが大事。
【柿の実】山腹を彩るカエデの紅葉と、橙色へと色合いが変わってきた渋柿の姿が印象的であった。それを望遠レンズを使って接近させ、重ねて表現したもの。
■カメラ:キヤノンEOS-1 レンズ:EF70-200mm F2.8L シャッタースピード:1/10 AE フィルム:RVP PLフィルター・ 三脚使用 撮影地:岩手県住田町
【ススキの輝き】ススキの穂が逆光に輝いて美しい。背景は暗い谷間を選んで、この黒のなかに白い穂の姿を浮かべて際立たせている。望遠を使って、穂の重なりを強調。
■カメラ:ミノルタα-9 レンズ:ハイスピードアポテレ300mm F2.8G
シャッタースピード:1/60 AE+2/3 補正 フィルム:RVP PLフィルター・ 三脚使用 撮影地:新潟県湯沢
―――撮影ツアーなどの現場では、具体的にどのようなことをアドバイスされているのですか?
 まず初めに、自分が撮りたい主題を探すこと。そして、その主題を生かすために、前景や背景の使い方を考えていくことをアドバイスしています。撮りたい被写体そのものだけでなく、周りの空間をどのように配するかで作品の仕上りが違ってきます。

―――竹内先生は、以前から『歳時記』を参考にすることをアドバイスされていましたが、コンテストなどで『歳時記』を意識したと思われる作品はありましたか?
 ありました。また『歳時記』を具体的に知らなくても、日本人には自然観察に対する感性は備わっていますので、意識することなく作品に表れているものもあります。
 それと、『歳時記』を撮るときの参考にするだけでなく、作品タイトルに『歳時記』からイメージを導き出したと思われるものもありました。

【山霧覆う】山の霧が山腹に漂って、幽玄な雰囲気を醸しだしている。望遠ズームを生かし、前景の木立とのバランスを計算しながら撮影した。
■カメラ:ミノルタα-9 レンズ:ハイスピードアポテレズーム80-200mm F2.8G シャッタースピード:1/10 AE フィルム:RVP PLフィルター・ 三脚使用 撮影地:長野県奈川村
―――写真展や写真集など、今後の活動のご予定はございますか?
 10月に、約300ページの豪華仕様の写真集『天地』を出版します。最近の写真集は、手軽なつくりのものが多く出版されていますが、これは敢えて重厚な豪華仕様にこだわってみました。
 また、写真集の出版を記念して、日本各地で写真展を開催します。内容は日本の風景の集大成とする予定です。

【雪化粧】日本人が干し柿をあまり食べなくなって、こんな風景が日本の山村のあちこちで見受けられるようになった。いわば、日本の新しい初冬の風景。
■カメラ:ペンタックス645N レンズ:SMCペンタックス645 300mm F4 絞り:f22 AE
+2/3 補正 フィルム:RVP 三脚使用 撮影地:山形県米沢市
―――撮影では国内はもとより、海外にも出かけ、その間にセミナーをはじめ、さまざまな活動をされている先生にとって、現在の"楽しみ“とは何でしょうか
 アンティークカメラの蒐集ですね。国内外で撮影に出かけた先々では、時間が許す限り地元のショップを覗くようにしています。
 現在では1000台以上は集めました。その中には撮影可能な実動機もかなりあります。昔つくられたこれらのカメラは、今見てもしっかり造られていたことがわかります。その仕上りは現代のカメラとは違った深い味わいがあります。
 また、私のところには期限切れのフィルムがたくさんあるので、これをアンティークカメラに入れて撮ると、さらにいい調子の仕上りになりますよ(笑)。
 よく昔のカメラは、写りが悪いみたいなことを言う人がいますが、それはカメラの性能が悪いのではなく、フィルムなどの感材の性能が悪かったのです。
これからの目標は、2000台をめざしますが、一番の問題は増えつづけるカメラの収納スペースなんです(笑)。

【草紅葉】ススキの穂に灌木、そして草むらの秋の色合い。逆光ライティングでそれぞれの輝きを抽出したもの。
■カメラ:ペンタックス645N レンズ:SMCペンタックス645 300mm F4 絞り:f22 AE +2/3 補正 フィルム:RVP PLフィルター・ 三脚使用 撮影地:長野県小川村
―――最後になりますが、カメラのキタムラに対して、希望されることがありましたらお聞かせください。
 銀塩写真、デジタル写真とも地域における写真愛好家たちのフォトライフの柱になって欲しいと思います。それは、写真を楽しむ人たちが、キタムラで写真談義をしたり、最新のカメラを手にしてみたりと、生活の中に潤いを与えられるような存在。
 デジタルカメラの普及もあり、写真を楽しむ人はこれからも増えていくことでしょう。そのような時にこそ、キタムラには地域を明るく照らす灯台の役割りをして欲しいと思います。
―――お忙しいところを、ありがとうございました。

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